ICU看護とは何かを基礎から解説。ICU・集中治療医学・クリティカルケアの定義を確認しながら、ICU看護師の役割、求められる知識・スキルを紹介します。ICU看護の全体像を学べる入門記事です。
※本記事は『新 これならわかるICU看護』の内容を再構成したものです。
- ●ICU看護の概念
・ICUと集中治療医学
・集中治療とクリティカルケア
・ICU看護(クリティカルケア看護)とは
・クリティカルケアは、ICU以外の場で必要とされることもある
●ICU看護師の役割
・基盤となるのは「安全に」基本的看護を提供すること
・安全な看護提供のため、患者さんの全体像を知ることが必須
・チーム医療の要となるために、基盤となる知識を身につける
・正しい知識をもち「患者さんのための最良」を追求する
●本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!
ICU看護の概念
ICUの患者さんは「生命の危機状態」にある
ICUと集中治療医学
ICU(集中治療室)は「内科系、外科系を問わず、呼吸、循環、代謝、その他の重篤な急性機能不全の患者さんを収容し、強力かつ集中的に治療看護を行うことによりその効果を期待する部門」1)と定義されています。
また、ICUで行われている集中治療医学は「生命の危機に瀕している急性期重症患者を救命、安定化して、原因となった疾患を解明して治療へと導く急性期全身管理医学である。重症患者の全身状態を病態に即して至適な状態に維持するtitrating therapy(侵襲にさいなまれた身体を癒す)を主として行い、原因疾患の治療と回復を図る。このための診断、モニタリング、治療、病態生理の解明がその学問体系である」2)とされています。集中治療を専門に行う医師がintensivist(インテンシヴィスト)です。
集中治療とクリティカルケア
集中治療(intensive care)は、多くの場合、主に専門ユニット(ICU)で行われる治療・看護そのものや環境をさします。一方、クリティカルケア(critical care)は、やや包括的・総合的な概念で、ICU以外の高度救命救急センターや各科の重症管理病棟などで行われる治療・看護も含みます。
クリティカルケアは、生命の危機状態にある患者さんに対するキュア(cure)とケア(care)を併せた概念です。キュアは「治療」、ケアは「疾病などの影響によって、さまざまな苦痛(症状)を取り除いたり、少しでも安楽な状態へ導いたりすることをさし、もともと米国などで広く用いられています。
現在では「クリティカル(生命の危機的な状態、重篤な状態)な患者さんをケアする」という意味で、日本で用いられるようになり、集中治療とほぼ同義に扱われています。
ICU看護(クリティカルケア看護)とは
AACN(米国クリティカルケア看護師協会)は、クリティカルケアを「看護のなかでも特に生命に危険を及ぼしている健康問題に対する人間の反応を診断し、専門的にケアする分野」と定義しました。
また、日本では「急激に生命を脅かす重度の侵襲にさいなまれた人々(患者さん)に対してさまざまな生体反応を緩和し、現在ある機能を最大限に高めてゆく援助である」3)と定義づけられています。
すなわち、ICU看護とは、種々の健康問題によってこれらの機能が破綻し、生命の危機的状態に陥った(または、そのリスクが著しく高い)急性かつ重篤な患者さんの健康問題をアセスメントし、重篤化を回避しながら早期回復に向けた看護実践であるといえます。
その看護実践の提供は、24時間継続して、患者さん2人に対して看護師1人配置が最低の単位体制で行われることが特徴です。
生命の危機状態=ホメオスタシスが破綻した状態
生命の危機的状態とは「生命を脅かす重篤な健康問題(潜在的、顕在的)があり、それに対して身体機能の安定や合併症の予防、最大限の人間らしさを保つために、集中的・濃厚な介入(治療・看護)を持続的に必要とする状態」のことです。
そのような状態にある患者さんが、過大な侵襲を受けると、身体のみならず心理・精神的にも、社会的にも、生命を営むうえでの重大な機能的変調が生じます(→本書p22)。その結果、ホメオスタシス(恒常性)の破綻をきたし、いわばカタストロフィ(安定の破綻)の状況に陥ってしまうのです(図1)。

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「重篤な健康問題」の原因はさまざま
①先天性の障害
(先天性心臓疾患、超・極・低出生体重児など)
②後天性疾患
(心筋梗塞、重症呼吸不全(急性呼吸窮迫症候群/ARDS)など)
③事故
(外傷:交通事故、重症熱傷を含む重度外傷)
④医学的治療
(大手術:心臓手術、臓器移植など)
クリティカルケアは、ICU以外の場で必要とされることもある
クリティカルケアは、一般的にICUで行われます。しかし、必ずしもICUで救命を目的としてだけ行われるものではありません。救命を目的とせずとも、集中ケアが必要な場(一般病棟など)も、クリティカルケアを実践する場に該当します。
また、ICUは、管理別・疾患群別など複数の種類に分類されます。高密度な医療を提供するICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患ICU)、三次救急医療の初療室、その他の生命の危機状況にある患者さんへの救命治療を行うHCU(ハイケアユニット)、SCU(脳卒中ケアユニット)などです。
ただし、日本においてはその形態が施設によって種々に異なるのが現状です。日本に多いのは、いわゆる総合ICU(general ICU)、 高度救命救急センターなどが有する三次救命救急ICU(Emergency ICU)です。
ちなみに、総合 ICUは、以下のような入院患者さんを収容対象としています。
●各種の基礎疾患を有し、過大侵襲を伴う大きな手術を受けた患者さん(高齢者、小児を含む)
●呼吸・循環機能低下など、術後合併症の種々のハイリスク因子を有する患者さんの術後管理
●各種慢性疾患(心、肺、腎、肝、脳神経、血液など)の急性増悪、あるいは、これらの基礎疾患に重篤な合併症を伴った患者さんの集中ケア
●病院内で発生した重篤な急変患者に対するすみやかな全身管理
ICU看護師の役割
患者さんの代弁者としてチーム医療の要となる
ICU看護の役割は、大きく2つに分けられます。
①生命の危機状態にある患者さんの病態変化を予測した重篤化の予防
②廃用などの二次的合併症の予防および回復のための早期リハビリテーション看護を管理・実践すること
基盤となるのは「安全に」基本的看護を提供すること
ICUで行われるケアは多岐にわたりますが、実践されるケア内容が、他分野の看護ケアと大きく異なるわけではありません(図2)。基盤となるのは、日常生活にかかわる基本的看護の実践です。

そのうえで、情報収集(全身観察、種々の身体計測、生体モニタリング情報・高密度なバイタルサイン測定の綿密な確認、全身のフィジカルイグザミネーション)を行い、得られた情報をもとに、総合的な臨床推論とアセスメント(全身状態の評価)を行います。そして、それらを根拠とした臨床判断および看護計画と評価、専門的な記録と報告、レコメンデーションを行うわけです。
安全な看護提供のため、患者さんの全体像を知ることが必須
ICUに入室している患者さんは、さまざまな原因からクリティカルな状況に陥っています。しかし、原因がどうであれ、多くの患者さんには共通の生体反応がみられます。その反応を緩和・正常化することが、ICU看護では最も重要です。
クリティカルな状況にある患者さんの全体像を理解するためには、疾患ベースだけの知識では足りません。このレベルで看護過程を展開しても、患者さんの有する問題を解決するための看護実践を提供することはできないのです。
ICU看護とは「急激に生命を脅かす重度の侵襲に急性的にさいなまれた患者さんに生じているさまざまな生体反応を緩和し、現在ある機能を最大限に高めてゆく援助」です。患者さんの心身両面から基本的なアセスメント・臨床推論に基づく臨床判断を行って、タイムリーに必要とされるベストなケアを選択・実践し、早期回復へと導く援助技術だといえます。
そのためには、侵襲のレベルと生体のストレス反応の様相、時期に相応した優先性とバリエーションを理解することが重要です。なぜなら、患者さんの多くは侵襲を受け、そこから離脱・回復するまで続く呼吸・循環・代謝を中心とした複雑かつダイナミックな病態にさらされているからです(→本書p22)。
したがって、ICUに入室している間(超急性期から安定をみるまでの時期)は、①循環調節とそのための呼吸調節、②免疫応答調節、③炎症反応の調節、④エネルギー代謝の調節、⑤ホメオスタシスの維持・調節を前提とした救命的治療と看護を優先すべきです。
その際のフィジカルな看護アプローチの視点は「その時点で、患者さんに不都合となる全身管理と看護ケアを回避すること」となります。
このような看護を実践するために、経験とともにさまざまな能力を育んでいくことが望まれているのです(表1)。
表1 ICU看護師に必要な能力
●短時間内での客観的洞察能力
●細胞レベルでの思考・分析能力
●不測・不慮の事態への迅速な処理能力
●危機的状況を短時間で判断する能力
●日常-非日常を区別する能力
●アサーティブに表現・主張する能力
●対人関係・コミュニケーションの能力
●患者アドボケイトを実践する能力
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経験と学習を重ね、リーダーとなったら…
●実践を通じて看護過程の分析・評価を行い、それに基づいて他者に指導する力
●患者さんと家族の意思決定にかかわる問題の調整と支援を行う力
●倫理的問題の調整を行う力
●コンサルティングを行う力
●実践を通じた研究的活動を行う力 なども必要
チーム医療の要となるために、基盤となる知識を身につける
チーム医療は「多種多様な医療者が、各々の高い専門性を尊重し、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、最大限の能力を引き出し合うことで、患者さんの状況に的確に対応した最善の医療を提供する取り組み」4)です。
患者さんの健康を維持・回復するために、必要な多職種の専門家と重要他者(家族またはそれに相当する人的資源)が協働・連携しながら医療サービスを提供します(表2)。

チーム医療の実践が、医療の効率化とアウトカムの改善につながること、種々発生する問題に対する問題解決が円滑にゆくことなどが明らかとなっています。また、医療者による協調的コラボレーションの向上により、①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上なども期待されています。
密なコミュニケーションがカギとなる
多くの場合、チーム医療におけるチームリーダーは医師です。しかし、患者さんにとって最も効果的な治療法や方針を検討するためには、各専門分野でそれぞれの職種が医師と対等な立場で所見を述べ、コミュニケーションを密にすることが必要です。
場面によっては、医師以外の職種がチームリーダーの役割を担うこともありますし、医師と他の医療職の協働に限らず、専門分野の壁を越えた医師同士・看護師同士の協力体制をとる場合もあります。
加えて、純粋な医療者だけでなく、医療情報のデータベース化を担う医療事務スタッフなどがチーム医療のメンバーとなることもあります。
多職種連携には「基盤となる知識」が必要
今後、ICUにおいては、多職種が高度な専門性を発揮し、協働連携するチーム医療の必要性がますます高くなっていくでしょう。
そのためには、関係職種同士がそれぞれの専門性を共有・理解し、互いに尊敬し合いながら、各職種の知識・技術の高度化への取り組みや、ガイドライン・プロトコルなどを活用した治療の標準化の浸透などが必要です。
また、患者さん・家族とともにより質の高い医療を実現するためには、各医療職の高い専門性に委ねつつも、これをチーム医療という活動スタイルを通して再統合していくことが重要となります。
正しい知識をもち「患者さんのための最良」を追求する
ICUは、高密度な治療とケアを提供する場です。看護師は、患者さんの特徴と問題点を十分に認識・理解したうえで看護を実践しなければなりません。
そのためには、真に「患者さんのため」の医療が提供されるよう、患者さんの代弁者としての役割を発揮できるよう、実践者が、患者さんに提供されている医療を正しく牽引できる力が必要です。
その目的を果たすため、ICU看護を提供する看護師には、疾患(disease)の特徴と病態生理(pathologic physiology)、それによる心理も含めた生体反応と回復過程の特徴および治療を含めた対応策を正しく理解することが求められます。
そのうえで、個々のケースにおいて優先的に改善すべき健康問題は何か、また、それに対する優先すべき緩和・改善策は何かを判断・実践することが期待されます。
- 1)ICU研究会・日本麻酔学会:ICU設置基準(厚生労働大臣の定める施設基準特定集中治療室管理の施設基準 保険局長発第8号 ), 1973.
2)今井考祐:集中治療医学の定義.日集中医誌 2009;16:503-504.
3) 道又元裕:クリティカルケア看護の特性.山勢博彰,道又元裕編,系統別看護講座別巻クリティカルケア看護学第2版,医学書院,東京,2020:2-10.
4)厚生労働省:チーム医療の推進について.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf(2026.3.19アクセス).
本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!

新 これならわかるICU看護
道又元裕 監修
夛田 覚 編
B5・272ページ
定価:3,520円(税込)
照林社
この記事の続きは書籍で! 本書は、「看販会看護書大賞2026」の「フレッシュナース部門」にノミネートされています。投票を受け付け中ですので、ぜひチェックしてみてください。
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