補助循環の基礎知識を整理したうえで、VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)、VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)、IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)について解説。それぞれのしくみや管理時の注意点、主な合併症などをまとめました。
※本記事は『新 これならわかるICU看護』の内容を再構成したものです。
- ●補助循環の基礎知識
●VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)
●VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)
●IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)
●本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!
補助循環の基礎知識
補助循環は「一時的に心臓や肺を休ませる」ための装置
重症心不全や心原性ショック、重症呼吸不全など、薬物治療だけでは循環や呼吸を維持できない場合に使用されるのが補助循環です。
補助循環は、心臓や肺の機能を一時的に補助あるいは代替し、全身の臓器灌流を維持するための装置です。
ICUでは、薬物療法や人工呼吸器だけでは救命困難な患者さんが少なくありません。補助循環を導入することで、心臓や肺を休ませながら臓器障害の進行を防ぎ、回復までの「橋渡し(ブリッジ)」として重要な役割を果たします。
補助循環は「呼吸を補助するVV-ECMO」と「それ以外」に分かれる
補助循環にはいくつかの種類があり、目的によって使用する装置が異なります(表1)。

VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)
VA-ECMOは心臓と肺の両方をサポートする
VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)は、静脈から脱血した血液を膜型人工肺で酸素化した後、ポンプで動脈に送り返す装置です。
心臓から血液を送り出す部分をポンプが代替し、酸素化を膜型人工肺が担うため、心臓と肺を両方サポートできます。そのため、心拍出が著しく低下した状況でも全身灌流を維持できます。
適応は、急性心筋梗塞や心筋炎などによる重度の心原性ショック、心停止からの蘇生(ECPR)、開心術後の心不全、重症肺塞栓などです。
一方、重度の不可逆的な脳障害や進行性の多臓器不全では適応が限られます。
また、高齢や重度の末梢血管疾患では、導入困難や合併症のリスクが高まります。
「循環不全が改善できているか」はミキシングゾーンに現れる
看護上の注意点として重要なのは「回路は患者さんの循環そのもの」と理解することです。流量は心拍出量に相当するため、流量低下はただちに全身灌流低下につながります。
VA-ECMOの特徴は、大腿動脈から挿入した送血カニューレを介し、大動脈に向かって「逆行性」に血液が流れることです(図1)。そのため、心臓から拍出される血液と、VAECMOから送られる血液がぶつかり合う境界(ミキシングゾーン)が生じます。ミキシングゾーンの位置は自己心拍出量によって変化するため、心機能回復の評価時に重要です。
なお、右橈骨動脈から採血して血液ガスを測定すると「その血液が自己肺とVA-ECMOどちらで酸素化されたか」を判別でき、ミキシングゾーンの推定に役立ちます。

Check
●医師が、駆動装置で遠心ポンプの回転数(一般的に2,000~2,500回転/分)を設定
●遠心ポンプによって静脈から脱血された血液は、人工肺でガス交換・酸素化され、動脈に送られる
●設定された回転数や循環血液量などによって流量(flow)が決まる。一般的に3L/分程度をめやすに回転数を調整する

VA-ECMOによる左室への負荷
VA-ECMO使用時は、逆行性送血によって左室の後負荷が増大し、左室内に血液が貯留して拡張しやすくなります。肺うっ血や心機能悪化につながる可能性があることから、心エコーや動脈圧波形による心機能評価に加え、呼吸状態や尿量、乳酸値など臓器灌流の指標を継続的に観察し、呼吸と循環のバランスを多角的に評価することが重要です。
左室の後負荷軽減を目的に、IABPやIMPELLAを併用する場合もあります。
アラーム・機器トラブルには、即座にチームで対応する(表2)
最も多いのは「低流量(low flow)アラーム」で、回路の閉塞、脱血不良(体位変換や循環血液量低下)、カニューレ位置異常などが原因で鳴ります。
VA-ECMOのトラブルは患者さんの生命に直結するため、まずは血行動態と酸素化を確認し、至急、医師・臨床工学技士に連絡することが重要です。

ここもおさえて!
回路内圧のモニタリング機器トラブルを回避するためには、回路内圧のモニタリングが重要です。それぞれの測定部位の圧変化が何を意味するのかを理解することが、トラブルの予防につながります。
VA-ECMO使用時の観察項目は多岐にわたる
VA-ECMO使用時は、動脈圧、尿量、乳酸値、四肢末梢循環、カニューレ部出血や血腫、回路内凝血、ガス交換状況(PaO2・PaCO2)などを包括的に評価します。
また、回路内の血栓形成を防ぐためヘパリンを持続静注し、ACTを180~200秒程度で管理していますから、出血リスクの観察も欠かせません。
代表的な合併症(表3)
合併症は、出血、血栓塞栓、下肢虚血、溶血、感染が代表的です。特に、カニューレが挿入された下肢の虚血は重篤であり、冷感やチアノーゼを早期に見逃さないことが看護師の大事な役割の1つです。
また、大量輸血を要する出血や、抗凝固不足による血栓塞栓症は生命予後に直結します。褥瘡など皮膚トラブルにも注意が必要です。

ここもおさえて!
局所酸素飽和度の測定下肢の虚血を見逃さないために、両下肢に局所酸素飽和度を測定する装置を装着することもあります。本症例では右下肢の血流が低下し、下肢の虚血が認められました。
on-offテストを行いながら、慎重に離脱を図る
VA-ECMOからの離脱は、心機能や全身状態が回復してきたと判断された段階(表4)で流量を段階的に減少させ、自己心拍出で循環が維持できるかを確認しながら行います。これをon-offテストと呼びます。
離脱試験中は、動脈圧、尿量、乳酸値、エコー所見を慎重に観察し、わずかな変化も見逃さないことが求められます。
表4 VA-ECMO離脱基準(例)
●収縮期血圧>80mmHg
●PCWP<12mmHg
●心係数>2.2L/分/m2
●PaO2、PaCO2が適正範囲
●心エコー所見が改善傾向Check
離脱基準は「心機能・全身状態が回復してきた」と判断される指標
VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)
VV-ECMOは肺を休めるために使用する
VA-ECMOとの違いは「送血の部位」
VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)は、重症呼吸不全に対して導入される補助循環です。血液を静脈から脱血し、膜型人工肺で酸素化・二酸化炭素除去を行った後、再び静脈に戻します。
VA-ECMO(動脈に送血)が心拍出そのものを代替するのに対し、VV-ECMO(静脈に送血)は心拍出を補助する機能はなく、「肺のガス交換を代替すること」が目的です。つまり、患者さん自身の心臓が十分に拍動していることが前提条件となります。
VV-ECMOは、人工呼吸管理で改善が得られない重症低酸素血症に導入され、肺を「休ませる」ことで回復の時間をかせぎます。
適応と禁忌
VV-ECMOの適応となるのは、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)や重症肺炎、COVID-19などによる重度低酸素血症です。通常は、PEEPを含めた人工呼吸管理、筋弛緩薬や腹臥位療法などを尽くしてもPaO2/FIO2比が80~100以下に低下する場合に検討されます。
禁忌としては、不可逆的な肺疾患や重度の多臓器不全、重大な中枢神経障害が挙げられます。また、高度な出血傾向をもつ患者さんでは導入が困難となります。
人工呼吸管理との関連
VV-ECMO管理において、看護師が意識すべき最大のポイントは「lung rest(肺を休ませる戦略)」です。
重症呼吸不全に対して呼吸を維持するために人工呼吸器で高い圧をかけると、肺は傷害を受けて状態が悪化してしまいます。VVECMOの導入により、人工呼吸器は低い圧・低い酸素濃度でも安全に運用できます。これがlung restです。
血液の再循環(リサーキュレーション)に要注意
基本的なアラーム対応や観察項目、合併症はVA-ECMOと共通します。ただし、VV-ECMOでは血液の再循環(リサーキュレーション)が生じることがあります(図2)。

再循環は、主にカニューレ位置の不良によって生じます。送血管と脱血管の距離が近い場合、血液がすぐに吸引されてしまうためです。ECMO流量が過大な場合や、患者さんの循環不良・静脈還流不足も同様の現象を引き起こします。
再循環が生じると、VV-ECMO流量が十分であるにもかかわらず、SpO2やPaO2の改善が乏しくなります。送血回路と脱血回路の色調が類似する場合にも、再循環を疑います。
これらの異常が認められたら、すみやかに医師や臨床工学技士へ報告し、カニューレ位置の再調整や流量設定の変更につなげることが求められます。
呼吸状態が回復したら、VV-ECMOからの離脱を図る
VV-ECMOからの離脱は、肺のガス交換能が回復してきた段階で行います。流量を徐々に下げ、「人工呼吸器で酸素化・換気が維持できるか」を確認する離脱試験を実施します。
通常、Sweepガス流量を減らし、最終的にゼロにしても血液ガスが安定しているかを確認します。この過程ではSpO2やPaO2の低下、呼吸回数の増加などを注意深く観察し、肺が十分に機能を取り戻したことを確認して離脱となります。
IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)
IMPELLAは心室の血液を大動脈に送り出す
IMPELLA(〈インペラ〉補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)は、大腿から挿入し、大動脈弁を越えて左室内に留置されるポンプカテーテルです(図3)。心室の収縮を一時的に代替し、心拍出量を直接補助します。

IABPが「間接的に」心筋酸素需給を改善するのに対し、IMPELLAは「直接的に」心拍出を増加させます。特に、左室の後負荷を大きく減らし、心筋酸素消費を低下させる点で優れています。V-A ECMOと違って呼吸の補助はできませんが、侵襲が比較的少ないことも大きなメリットです。
適応は、急性心筋梗塞に伴う心原性ショック、ハイリスクPCIの周術期補助、重症心不全の一時的サポートなどです。禁忌は大動脈弁狭窄や大動脈弁閉鎖不全、左室内血栓、機械的合併症(心室中隔穿孔など)です。
IMPELLAは「位置の管理」「補助流量の把握」が重要
看護のポイントとして最も重要なのは、ポンプカテーテルが大動脈弁を越えて左室に正しく位置していることが重要です。位置がずれると効果不十分や溶血、弁損傷を引き起こすため、波形やエコーで確認します。
また、強力な吸引力を持つため、脱血不良が起これば溶血や血球破壊が進行することがあります。ヘモグロビン尿やLDH上昇に注意が必要です。
各種設定とカテーテルの種類(表4)
IMPELLAによる補助レベルは、専用コンソール(制御装置)で設定します。
挿入するポンプカテーテルの種類と補助レベルによって、最大補助流量も異なります。

アラームが鳴ったら、位置波形から状態を把握する
IMPELLAのアラームでは、ポンプ位置不良アラームやサクション(吸引)アラームが代表的です。なかでもサクションアラームは、循環血液量の不足や位置異常の可能性があり、いずれも循環不安定につながるため、早急な対応が必要です(図4)。

観察項目と代表的な合併症
観察項目は、動脈圧や尿量、乳酸値といった臓器灌流の評価に加え、溶血の徴候(Hb低下、LDH上昇、尿の色調)、出血・感染徴候の確認が含まれます。大動脈弁を通過するカニューレに関連して大動脈弁損傷や大動脈内血栓形成にも注意が必要です。
合併症として起こりうるのは、溶血、出血、血栓、感染、弁損傷などです(表5)。抗凝固療法下(ACT160~200秒程度)で管理するため、出血リスクの観察も欠かせません。他の補助循環と同様に、皮膚トラブルや安静保持によるストレスも重要ポイントとなります。

徐々に補助レベルを下げて離脱する
IMPELLAからの離脱は「心機能が改善し、自己心拍出が十分に得られるようになった」段階で、補助レベルを段階的に下げていくことで行われます(表6)。その過程で血圧や尿量、乳酸値を評価し、循環が維持できることを確認します。
離脱試験中の観察はきわめて重要で、微細な変化も逃さない注意深さが必要です。
表6 IMPELLAの離脱基準(例)
●平均血圧>60mmHg
●乳酸値<2mmol/L
●肺動脈楔入圧(PAWP)<20mmHg
●心拍数が維持され、新たな不整脈の出現なし
●心係数(CI)>2.2L/分/m2
●SvO2の低下なしCheck
離脱は、徐々に補助レベルを下げ、補助レベルP2でも左記を満たす場合に実施
- 1)Turner DA,,Cheifetz IM.Extracorporeal membrane oxygenation for adult respiratory failure.Respir Care 2013;58(6):1038-1052.
2)Ikeda Y,Ishii S,Maemura K,et al.Hemodynamic assessment and risk classification for successful weaning of Impella in patients with cardiogenic shock.Artif Organs 2022;46:1358-1368.
3)小尾口邦彦:こういうことだったのか!! ECMO・PCPS.中外医学社,東京,2020.
4)日本呼吸療法医学会・日本経皮的心肺補助研究会 編:ECMO/PCPSバイブル.メディカ出版,大阪,2021.
本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!

新 これならわかるICU看護
道又元裕 監修
夛田 覚 編
B5・272ページ
定価:3,520円(税込)
照林社
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