検査データを読むために看護師が知っておきたいこととは?検査データを読む目的、検査データを読む際に身につけたい姿勢、検査データが測定している成分の量について解説します。

※本記事は書籍『検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?』の内容を再構成したものです。

●検査データは「アセスメントの根拠」である
●検査データは「単独」ではなく「組み合わせて」読む
●その成分の「産生・消費・分解」の経路をイメージする

 みなさんは、受け持ち患者さんの検査結果を開いたとき、何を思い浮かべるでしょうか。基準値から外れた数値、HやLの印がついた項目を探すこと。それはもちろん大切です。

 しかし、検査データを読む本当の目的は、異常値を見つけることそのものではありません。目の前の患者さんに、いま何が起きているのかを考え、次にどうケアするかを判断するための「根拠」を得ることにあります。

検査データは「アセスメントの根拠」である

 看護のアセスメントは、患者さんから得られるさまざまな情報を集め、意味づけ、統合していく思考のプロセスです。バイタルサイン、フィジカルアセスメントで得た所見、患者さんの訴え、そして検査データ。これらは、それぞれ単独では断片的な情報にすぎません。しかし、組み合わせて読み解いたとき、はじめて患者さんの全体像が立ち上がってきます。

 そして、その検査データのいちばん近いところにいるのが、看護師です。採血や検体の採取を担い、出てきた結果に最初に目を通すのも、多くの場合は看護師です。

 さらに、24時間そばで患者さんを見ているからこそ「何だか、いつもと様子が違う」と最初に気づくのも看護師であることが少なくありません。その小さな気づきをきっかけに検査データを確認するという流れは、看護師にとってごく自然なものです。

 たとえば「何となく元気がない」という感覚的な気づきがあったとします。これだけでは、報告しても相手に伝わりにくいです。ところが、そこに「ヘモグロビンの低下」という検査データが加わると、「貧血が進行しているのかもしれない」という仮説が立ちます。さらに便の色や血圧の変化が確認されれば、消化管出血という可能性まで見えてきます。検査データは、こうした「気づき」を「根拠のある判断」へと変えてくれる、看護師の力強い味方なのです。

 本書は、検査データを暗記するための本ではありません。1つひとつの数値が、患者さんの身体で起きているできごととどうつながっているのかを理解し、ケアの判断に活かせるようになることをめざしています。数値の向こう側にいる患者さんを見つめる。その姿勢こそが、検査データを読む力の出発点です。

患者さんのアセスメントの図

検査データは「単独」ではなく「組み合わせて」読む

 検査データを読むときに、まず身につけてほしい姿勢があります。それは、1つの数値だけを見て判断しないということです。

1.「複数の検査データ」を組み合わせて見る

 検査結果の一覧を見ると、基準値から外れた項目にHやLの印がついています。そこに目が行くのは自然なことですし、大切な着眼点でもあります。しかし、1つの数値が異常を示していても、それだけで何かを結論づけることはできません。反対に、複数の数値を関連づけて見ると、1つずつ見ていたときには気づけなかった病態が浮かび上がってくることがあります。

 たとえば、発熱している患者さんの白血球が増えていたとします。この数値だけでは「感染か炎症がありそうだ」ということしかわかりません。

 しかし、そこに白血球分画(好中球かリンパ球か)、CRP(C 反応性タンパク)、PCT(プロカルシトニン)、そして局所の症状(咳・痰や排尿時痛など)を重ねていくと、「細菌感染らしい」「感染源は肺かもしれない」というように、見立ての解像度が上がっていきます。

 いくつかの情報を突き合わせて「○○ではないか」と仮説を立て、別の情報で確かめていく。この一連の思考が、臨床推論の入り口です。

2.同じ項目の「前回値」と比べる視点も不可欠

 基準値の範囲内でも、前回から大きく動いている数値には重要な意味が隠れていることがあります。たとえば、Cr(クレアチニン)が 0.6mg/dL から1.0mg/dL に上がった場合、どちらも基準範囲内ですが、腎機能がかなり低下したサインかもしれない、ということです。検査データを「点」ではなく、時間の流れのなかの「線」としてとらえることが大切です。この「線で読む」姿勢は、やがて「予測しながら読む」力へとつながっていきます。

 本書の Part3では、心不全で入院した患者さんの事例をとおして、NT-proBNP や Cr、Hb が経過のなかでどう動いたかを、時間軸で読み解いていきます。1つの数値ではなく、複数の値が「前回と比べてどう変わったか」を追うことで、病態がなぜ、どのように動いたか、という流れが見えてくることでしょう。

 受け持ち患者さんの検査データを見る前に「今日はどの値が、どちらに動いているだろう」と一呼吸おいて予測してみる。その小さな習慣の積み重ねが、数年後のアセスメント能力に大きな差を生みます。

 組み合わせて読み、時間の流れのなかで読む。この2つを意識するだけで、同じ検査結果からずっと多くのことが見えてきます。

検査値の予測についてのコメントとイラスト

その成分の「産生・消費・分解」の経路をイメージする

 検査データの多くは「血液中に含まれる成分の量」を測っています。では、その成分の量はどうやって決まるのでしょうか。

 ここで役に立つのが、それぞれの成分が、体内の「どこで作られ(産生)」「どこで使われ(消費)」「どこで壊されて排出されるか(分解・排泄)」という経路をイメージすることです。

1.異常の原因は「産生・消費・分解」のどこにあるかを考える

 血液中の成分の量は、洗面台をイメージするとわかりやすいです。
 
 たまっている水の量(検査値)が変化したとき、その原因は
 「蛇口が開きすぎた(産生の増加)」のか、
 「排水口が詰まった(分解・排泄の低下)」のか、
 「使う量が増えた(消費の変化)」のか、と見当をつけていきます。

 たとえば、ビリルビンは、古くなった赤血球が壊れるときに作られ、肝臓で処理されて胆汁として排泄されます。T-Bil(総ビリルビン)が高いときには「赤血球が壊れすぎている(産生の増加=溶血)」のか、「肝臓の処理が追いつかない(肝細胞の障害)」のか、「胆道が詰まっている(排泄の障害)」のか…と経路に沿って考えれば、次にどの検査データを見るべきかが見えてきます。

 また、BUN(血液尿素窒素)であれば、主に肝臓でアンモニアから作られ、腎臓から排泄されるという流れを知っていれば、その値が腎機能だけでなく脱水や消化管出血でも動く理由が理解できます。

2.経路を理解していれば、数値を暗記する必要がない

 この「産生→消費→分解・排泄」という見方のよいところは、丸暗記に頼らずに数値を理解できることです。

 経路を知っていれば、初めて出会う病態でも「この経路のどこかが障害されているのだな」と推論できます。知識が応用の利く「使える知識」に変わるということです。

 本書では、それぞれの検査項目を解説するときに、可能な限りこの産生・消費・分解の経路に触れるようにしました。少し遠回りに感じるかもしれませんが、この理解が、あとで大きな力になります。

\続きは書籍で/

検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?の表紙

検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?
井上陽士、古賀雄二 編著
山本明彦 医学監修
照林社
2026年9月2日発売
B5版
2,970円(税込)

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