毎日行うからこそ、さらにいい方法があれば知りたい「口腔ケア」!より効果的に進めるためのポイントを紹介します。

アセスメントスケールを見直してみよう

 口腔内のアセスメントスケールには、「口腔ケアの自立度を評価するスケール」や「口腔内の状況を評価するスケール」等があります。それぞれの目的を以下に示します

A.口腔ケアの自立度を評価するスケール
 自力での口腔ケアの不十分な部分を明らかにすることで、重点的に介入しなければならない点を明らかにする。

B.口腔内の状況を評価するスケール
 口腔内トラブルの見落としを防ぎ、どの部分に問題があり、その問題に対してどのように介入していくかの判断指標として用いる。

 以下にその特徴や使用上のメリットを示します。重要なのは、これらの評価を“つけただけ”にせず、得られた評価結果を口腔ケアの計画に活かし、患者の口腔ケアへ結びつけていくことです。

A.口腔ケアの「自立度」評価に向くスケール:BDR指標

 口腔清掃の自立度判定基準(BDR指標)は、「歯磨き(Brushing)」「義歯着脱(Denture wearing)」「うがい(Mouserinsing)」の3項目について、「自立」「一部介助」「全介助」で評価し、患者の口腔ケアへの自立度・協力度をアセスメントする指標です。

表1 BDR指標(口腔清掃の自立度判定基準)
表1 BDR指標(口腔清掃の自立度判定基準)
(文献1より引用)

 使う場面は以下の通りです。
●入院時に口腔ケアがどこまで自立しているのかを判断したい場合
●治療や手術等で状態が変化した場合
●安静治療が必要となった場合
●自力での口腔ケアが不十分ではないかと感じた場合 など

 得られた評価結果から、口腔ケアでナースが介入する部分を決定(例えば、歯磨きは自分でやってもらうが、うがいは介助するなど)していきます。
 介入する部分が決定したら、スタッフ全員で統一した介入ができるように情報を共有することが大切です。

B.口腔内の状況を簡便に評価できる口腔アセスメントシート:OHAT(Oral Health Assessment Tool)2

 OHATは、オーストラリアの歯科医師Dr. Chalmersらが要介護高齢者の口腔をアセスメントするために作成した口腔アセスメントシートです。日本語版(OHAT-J)3は、松尾らによって作成されています(図1)。

 OHATには、口唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛の8つの評価項目があり、アセスメントシートに沿って、当てはまる問題をスコア化していきます。評価項目が明確で、数値で評価できるため、簡便、かつ適切に口腔内のアセスメントを実施することができます。
 また、各評価項目の評価に応じて歯科に依頼できるパスも作成することができます。アセスメントにおいて、義歯の不適合やう蝕などを発見できれば、適切に歯科に依頼することができ口腔機能の回復にもつながります。
 
 評価後は、評価結果に基づいて口腔ケアプランを立案しますが、参考として図2に口腔ケアプロトコルを示します4。このように、ケアプロトコルを作成することで、口腔ケアの手技や介入回数の統一が図れます。

図1 Oral Health Assessment Tool
図2 口腔ケアプロトコル

OHAT評価時ポイント

評価項目の理解

  • OHATは8つの評価項目(唇、舌、歯肉・粘膜、唾液、自然歯、義歯、口腔清掃、歯の痛み)から構成されています。各項目の評価基準を理解し、適切に観察します。
  • OHATを用いて評価をする際には、正しい評価基準と手順の理解が必要となります。OHATの評価方法に関しての詳細は、「東京医科歯科大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野」のホームページ(https://www.ohcw-tmd.com/research/ohat.html)で確認してください。

事前準備

  • 評価を行う前に、患者や利用者に対して評価の目的や手順を説明し、同意を得ることが重要です。
  • 評価に必要な道具(ライト、使い捨て手袋、鏡など)を準備します。

患者の状態に配慮

  • 患者の状態や反応を観察し、無理な体勢や動作を避けるようにします。
  • 患者が痛みや不快感を訴えた場合は、評価を一時中断し、対応を考えます。

客観的な評価

  • 個人の主観に左右されず、客観的に評価を行います。必要に応じて、歯科医師や歯科衛生士と意見交換を行い、一貫した評価を保ちます。
1.寝たきり者の口腔衛生指導マニュアル作成委員会,厚生省老人保健福祉局老人保健課監修:寝たきり者の口腔衛生指導マニュアル.新企画出版,東京,1993.
2.Chalmers JM,King PL,Spencer AJ,Wright FA,Carter KD:The oral health assessment tool–validity and reliability.Australian Dental Journal 2005;50(3):191-199.
3.東京医科歯科大学大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野ホームページ:OHATについて.
http://www.ohcw-tmd.com/research/ohat.html(2024.7.22アクセス)
4.稲垣鮎美,松尾浩一郎,池田真弓,渥美雅子,三鬼達人,中川量晴:口腔アセスメントOral Health Assessment Tool (OHAT)と口腔ケアプロトコルによる口腔衛生状態の改善.日摂食嚥下リハ会誌 2017;21(3):145-155.

さらによくなる!口腔ケア【第2回】義歯の管理や装着、どのように行うと効果的?

この記事は『エキスパートナース』2014年9月号特集を再構成したものです。
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