がん化学療法中に起こる急変「アナフィラキシーショック」を早期発見するため、注意したい急変徴候を紹介。対処・予防など、看護師が押さえておきたいポイントを解説します。
●全身性の蕁麻疹
●呼吸困難
●低酸素血症
●血圧低下
●意識消失
●痙攣様腹痛
●嘔吐
⇒急性の全身性反応であるアナフィラキシーショックを疑おう!
抗がん剤投与中に起こる急性症状の1つに過敏症があります。
過敏症のなかでも、原因薬剤の投与から数分以内に起こる比較的急性の全身性反応をアナフィラキシーといいます。また、全身反応が進行して末梢循環不全に陥った状態をアナフィラキシーショックといいます(図1)。
今回は、抗がん剤投与に伴うアナフィラキシーショックの発見と対処、予防について示します。
図1 過敏症・アナフィラキシーショックの理解

アナフィラキシーショックの原因とは?
①抗がん剤によるアレルギー反応
免疫学的機序による過敏性反応をアレルギー反応と言います。アレルギー反応はⅠ型~Ⅳ型(Ⅰ型:即時型反応、Ⅱ型:細胞毒性反応、Ⅲ型:免疫複合体型反応、Ⅳ型:遅延型反応)に分類され、抗がん剤によるアレルギー反応の多くはⅠ型によるものです。
アナフィラキシーはIgE抗体を介したⅠ型反応で、肥満細胞や好塩基球が活性化され、さまざまな化学伝達物質が放出されることによって起こります。
一方で、IgE抗体が関与せずにアナフィラキシーと同じ病態を起こす反応を、アナフィラキシー様反応と呼びます。
②分子標的薬によるインフュージョンリアクション
インフュージョンリアクションとは、分子標的薬のモノクロナール抗体投与中、または投与後24時間以内に現れる症状の総称です。一般の抗がん剤に伴うアレルギー反応とは異なり、2回目以降は頻度・重症度ともに低下するため、アレルギー反応とは区別されています。
発生機序は明確になっていませんが、サイトカインの産生や放出などにより炎症やアレルギー様の反応を引き起こすと考えられています。
アナフィラキシーショックの早期発見・対処のポイント
①症状を早期発見できるような環境をつくる
血圧低下や呼吸困難などのアナフィラキシーショックを起こす前に、前駆症状が出現します。過敏症の前駆症状には下記があります。
●皮膚症状
掻痒感、蕁麻疹、紅潮、ほてり感、浮腫など
●循環器症状
冷汗、動悸、頻脈、胸部不快感など
●消化器症状
悪心・嘔吐、腹痛、便意、尿意など
●呼吸器症状
咳嗽、口腔・咽頭違和感、鼻炎様症状、息苦しさなど
●神経系症状
口唇や四肢の痺れ、めまい、脱力感、頭痛など
●その他
不安感、興奮など
過敏症出現時にいちばん初めに気づくのは患者自身です。そのため、患者のセルフケア能力や理解度に応じた患者教育が重要となります。「いつごろ」「どのような」症状が出るのかなどを具体的に説明し、変化があればがまんせずに報告するように説明を行います。
鼻閉感、便意、不安感など過敏症を疑いにくい症状で出現することもあります。はっきりとした症状が出現していなくても“何か変”“いつもと違う”などの患者の訴えを見逃さないようにしましょう。
過敏症のリスクのある患者は、事前にチーム内で情報共有を行います。また、アナフィラキシーは投与開始10分以内や投与速度を変更した直後などに出現しやすいため、患者のそばに付き添い、観察しやすいナースステーションの近くの部屋などで治療を行うことが必要です。
②アナフィラキシーショック出現時の対処
ただちに抗がん剤の投与を中止し応援を呼びます。アナフィラキシーの場合には数分間で急速に症状が進行することがあるため、患者のそばを離れないようにしましょう。初期対応は図3のように行います。
図3 過敏症出現時の看護師の初期対応

その後は医師の指示により薬剤投与を行い、重症化を防ぐことが大切です。過敏症の評価に用いるスケールである有害事象共通用語規準(CTCAE)*v5.0を表11に示します。
*【CTCAE】=common terminology criteria for adverse events、有害事象共通用語規準。CTCAEは米国国立がん研究所が作成した有害事象の評価や報告に用いることができる記述的用語集である。また各有害事象について重症度のスケール(Grade)を示している。
表1 CTCAE v5.0による過敏症の評価
アレルギー反応
【Grade1】全身的治療を要さない
【Grade2】内服治療を要する
【Grade3】気管支痙攣;続発症により入院を要する;静脈内投与による治療を要する
【Grade4】生命を脅かす;緊急処置を要する
【Grade5】死亡アナフィラキシー
【Grade3】蕁麻疹の有無によらず症状のある気管支痙攣;非経口的治療を要する;アレルギーによる浮腫/血管性浮腫;血圧低下
【Grade4】生命を脅かす;緊急処置を要する
【Grade5】死亡サイトカイン放出症候群
【Grade1】全身症状の有無は問わない発熱
【Grade2】輸液に反応する低血圧または<40%の酸素投与に反応する低酸素症
【Grade3】昇圧剤単剤で管理できる低血圧または≧40%の酸素投与を要する低酸素症
【Grade4】生命を脅かすまたは緊急処置を要する
【Grade5】死亡※Grade説明文中のセミコロン(;)は「または」を意味する
(文献1より引用、一部改変)
治療によりいったんアナフィラキシー症状が落ち着いても、12~24時間後に二相性反応により、再び同様のアナフィラキシー症状が出現する場合があります。発現頻度は1~20%と報告2されていますが、発生機序や発現予測は明確になっていません。そのため、原則は入院による経過観察が必要となります。
③患者・家族の精神面の援助
アナフィラキシー出現時には、患者は急激に進行する症状に対して不安や恐怖を感じます。そのため、患者・家族へていねいな説明と対応を行い、そばに寄り添うなど不安の軽減に努めることが大切です。
アナフィラキシーが出現した場合には、たとえ治療効果を認めていても治療の中止が必要になります。患者・家族の思いを傾聴し、適切な情報提供と精神的ケアを行うことが重要です。
アナフィラキシーショックの予防・予測のポイント
①過敏症歴を確認する
患者の過敏症歴(薬剤、食物、有機溶剤)や治療歴の確認を行います。
例えば、白金製剤(プラチナ系)のシスプラチンで過敏症が出現した場合には、同じ白金製剤のカルボプラチンやオキサリプラチンなどの投与時にも注意する必要があります。
また、パクリタキセルの製剤中やドセタキセルの添付溶解液など、無水エタノールが含まれている薬剤については、アルコール過敏の有無を確認する必要があります。
②使用する抗がん剤のアナフィラキシー出現のリスクをアセスメントする
使用する抗がん剤の過敏症のリスク、起こりやすい時期、症状について理解しておくことが重要です(表2)3。
タキサン系のパクリタキセルやドセタキセルは初回~2回目にアレルギー反応が起こりやすいといわれていますが、白金製剤(プラチナ系)のカルボプラチンやオキサリプラチンでは複数回投与後に起こりやすいといわれています。
また、リツキシマブなどの分子標的薬は初回投与時にインフュージョンリアクションが起こりやすく、2回目以降は出現頻度が低下するという特徴があります。
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