明治期に看護の道を切り拓いた2人のナースが主人公の、NHK連続テレビ小説『風、薫る』。現役看護師は、どんな視点でドラマを楽しんでいるのでしょうか。アンケートをもとに、印象的なシーンや好きな登場人物、見どころなどを紹介します。

※エキスパートナースモニターアンケート、エキスパートナースwebアンケート(2026年5月実施、n=55)より集計。
※本記事では当時の時代背景をかんがみて、歴史的な表現として「看護婦」という名称を使用しています。

NHK連続テレビ小説『風、薫る』

栃木県那須地域の町で元家老の娘として育ち、若くしてシングルマザーになった一ノ瀬りん(演・見上愛さん)と、生まれてすぐに親に捨てられ、教会で保護されて育った大家直美(演・上坂樹里さん)。看護婦養成所に通い、手探りで始まった看護教育を受けながら、「看護とは?」「患者と向き合うとは?」ということを考えていく2人。明治の新しい風を感じながら、刻々と変わり続ける社会のなかで、“自分らしく幸せに生きること”を模索していく。
『風、薫る』公式サイトはこちら

(写真提供:NHK)

働くナースの『風、薫る』視聴スタイル

 『風、薫る』の視聴スタイルを聞いてみたところ、もっとも多かったのは「録画」。「仕事から帰ってきたから、家族と一緒に見ている」(ナース歴6~10年)「翌日の朝6:00ごろに、子どもの世話をしながら見る」(ナース歴21年以上)といったコメントが寄せられました。

 続いて集まったのは、「7:30からのNHK BS放送」を見ているとの声。朝ドラは「NHK総合で8:00から」というイメージが強いかもしれませんが、じつはその前にBSで放送されているのです。「小学校1年生の娘と見ています」(ナース歴6~10年)という人もいました。

 職場で見ている場合は、「待合室で流れているのをたまに見ている」(ナース歴16~20年)「休憩時間の昼帯に流れているのを見たことがある」(ナース歴11~15年)「夜勤明け、患者さんが食事をとるホールでテレビがついているときに見る」(ナース歴6~10年)と、忙しい合間を縫っての視聴となっているようです。

 そのほか、「NHK ONEの配信」を活用している人も。1週間分が無料で見逃し配信されているので、スマートフォンなどで気軽に見たいときに便利です。また、「土曜日のダイジェスト版」を見ているという人もいました。
 自分の生活スタイルに合った形で視聴できる点が、ドラマを楽しみ続けやすい理由の1つといえそうです。

『風、薫る』の“気になった”“印象的だった”シーンはここ!

 りんと直美が出会うまでのエピソードや、看護婦養成所で学んだ日々、帝都医科大学附属病院での看護実習など……。これまでたくさんの見どころがありましたね。
 気になった、印象的だったシーンを聞いてみると、ナースならではの視点を感じさせる回答が集まりました。

りんの父との別れ

●コレラにかかったりんのお父さん(演・北村一輝さん)が自ら納屋に行き、隔離体制に入ったシーン。感染症の正しい対応が周知されていなかった時代、自分で隔離体制に入ることが印象的でした。療養環境は悪いものの、接触しない方法をとったのは現代にも通用する考えなので、お父さんの行動はすばらしかったと思います。(ナース歴6~10年)

●りんが父を亡くしたシーンは見ていて苦しかったですが、おり鶴を渡したり、歌を歌ったりと、自分の子どもがもし同じ場面でそのようにかかわってくれたらうれしいだろうなと思いました。(ナース歴21年以上)

風、薫る_信右衛門とりん
(画像提供:NHK)

看護婦養成所での学び

「看護」とは、病気ではなく人をみる、観察することだと主人公たちが気づくシーンが印象的です。自分自身も学生時代に問われ続けた問いで、今もまだ課題が続いているような感覚になります。看護観のレポート、つらかったなぁ……とか、とにかく学生時代を思い出す!(ナース歴6~10年)

●シーツ交換のシーン。角を三角に折る、マットレスに敷き込むときは手のひらを下に向ける。基本に忠実でした。(ナース歴11~15年)

●バーンズ先生(演・エマ・ハワードさん)がりんに、患者さんにとってのゴールは治ることであり、 患者からの感謝をほしがるとは欲深い、と言うシーン。(ナース歴6~10年)

風、薫る_りんとバーンズ先生
(画像提供:NHK)

帝都医科大学附属病院での実習

●りんが患者の園部さん(演・野添義弘さん)とコミュニケーションをうまくとれなかった場面を見て、自分の実習を思い出しました。実習後、看護師は患者さんのそばにいないと看護ができないんだなと痛感。りんが渡した花の花瓶の水を園部さんが交換していたと知ったときには、受け入れられていたことがわかり、見ていて安堵しました。(ナース歴21年以上)

●今井教授(演・古川雄大さん)の手術シーン。よくわからないマスクを被せて麻酔をしていました。手袋はなし、ワイシャツで手術。今では考えられません。(ナース歴21年以上)

●りんが看護学生となり、看護実習が始まったころから方言(栃木ことば)を話さなくなっているところ。彼女自身が意識してそうしているのか、それとも、自然と東京の発音や話し方になっていったのか……。(ナース歴6~10年)

ナースが選ぶ!『風、薫る』の好きな登場人物

 好きな登場人物を尋ねたところ、やはり主人公のりん、直美という意見が多数。「お互いのことをわかり合っているりんと直美のやりとりが好き」(ナース歴6~10年)「ひたむきにがんばる2人の姿がいい」(ナース歴6~10年)など、「2人合わせて好き」との声も目立ちました。

 主人公2人の次に人気だったのが、バーンズ先生。印象的なセリフの数々に、看護学生時代を思い出す人が多かったようです。

 下記のほか、島田健次郎(演・佐野晶哉さん)、吉江善作(演・原田泰造さん)、(演・英茉さん、宮島るかさん)、松井エイ(演・玄理さん)の名前も挙がりました。
 皆さんの“推しポイント”をふまえて、今後の彼らの活躍に注目してみてください!

りん

風、薫る_りん
(画像提供:NHK)

●1つひとつのことがらをしっかり考えて行動し、患者に寄り添う姿勢がナースに向いている! まだ看護を学ぶ前、通りすがりの子どもが嘔吐をしたら、すぐに駆け寄って看護していたのが印象的です。(ナース歴21年以上)

●りんの「だいじ?」は愛おしさや慈しみがあふれ出る感じがして、「大丈夫?」と言われるよりも胸がほっこりします。(ナース歴21年以上)

直美

風、薫る_直美
(写真提供:NHK)

●実習中の様子から、彼女の割り切った性格が看護婦の仕事に向いていると思いました。(ナース歴6~10年)

●お局に負けない感じがいい!(ナース歴11~15年)

●鹿鳴館で働き始めて炊き出しをした際、吉江先生に遭遇し他人扱いするも、その後教会を訪れてそのときの態度を謝るところ。素直でマナーはしっかりしていると思いました。(ナース歴6~10年)

バーンズ先生

風、薫る_バーンズ先生
(写真提供:NHK)

●バーンズ先生の「This is not nursing(これは看護ではありません)」というセリフ。学生時代のシーツ交換の試験のとき「患者に声かけはしましたか? 患者の状態をみましたか?」と全体講評があったとき、誰も何も答えられなかったあの日を思い出しました。「看護」とは何か、本当に難しいなと思います。(ナース歴6~10年)

●「あなたが病に倒れてしまえば、その患者はあなたの看護を受けられません。あなたたちの手は家族の数百、数千倍の人を助ける手なんです」というセリフがすてきでした。(ナース歴16~20年)

●私が教わった基礎看護の教授と重なる部分があって好きです。私の看護をつくってくれた人です。(ナース歴6~10年)

●「看護は見返りを求めてするものではありません」というセリフが印象に残っています。(ナース歴6~10年)

その他

一ノ瀬美津(演・水野美紀さん)

●外国人の前で琴を奏でるシーンが好き。小さいころからの習い事が身を救うのだと学べたような気がしました。(ナース歴21年以上)

工藤トメ(演・原嶋 凜さん)

●リンゴが送られてきたことから、青森にいる家族が故郷から応援していることが伝わったので、応援したくなりました。(ナース歴21年以上)

大家トヨ(演・松金よね子さん)

●存在感がいいです!(ナース歴11~15年)

もし自分が『風、薫る』のなかのナースだったら?

 患者さんへの接し方や仲間とのかかわり方など、「自分がりんや直美だったらこうする!」と想像しながら見るのも楽しみ方の1つ。りんが担当になった患者の園部さんへの対応や、看護婦見習いの仲間たちとの交流について、コメントが寄せられました。

風、薫る_りんと園部さん
(写真提供:NHK)

●患者の園部さんに冷たくされるりんについて。いい反応がなくても、専門職としての知識と技術を武器にやるべきことを全うします。時に沈黙が必要なこともある、と思っています。笑顔だけがいいわけではなく、会話だけがすべてではないので。(ナース歴6~10年)

●自分はどちらかというとりん寄りなので、園部さんとコミュニケーションがとれなかったことを悔やんでいる姿に共感しました。私の学生時代なら、同じことをしていたと思います。(ナース歴6~10年)

●看病婦たちの行動の根拠を聞いてみます。また、看護婦の仕事について、看病婦との共有の場をつくると思います。(ナース歴6~10年)

●実習中、つらいときは今日のできごとを吐き出して、最後は「今日も1日よくがんばった! また明日ね。あと○日!」と前向きな言葉で締めくくって別れて家に帰っていました。りんちゃんみたいな寄宿舎だったら、夜中ずっとしゃべってレポートどころじゃなかったかも(笑)。(ナース歴6~10年)

●看護婦見習いの仲間みんなと一緒に、寮で勉強会をしたい!(ナース歴21年以上)

りんや直美に伝えたい! 看護のコツやメッセージ

 看護を学び始め、さまざまな試練に直面するりんと直美。患者さんとのかかわり方に悩みながらも、ひたむきにナースをめざす2人に向けて、届けたいメッセージを聞いてみました。

風、薫る_りんと直美
(写真提供:NHK)

●まじめに、実直に向き合えば必ず何かが得られる! と、私は思っています。いいことばかりじゃないし、感謝されることばかりではないけれど、患者さんが笑顔になったり、元気になったり、穏やかな死を迎えたとき、看護の意味に気づけて自分自身も成長できる気がします。あなたたちがつくった看護を、今の私たちが引き継いでいます。がんばれ!(ナース歴6~10年)

●自分が悪戦苦闘しているとき、患者さんと楽しそうに過ごす同期はまぶしく見えるもの。“私は○○したい”じゃなくて、“患者さんがどうあるべきか”。患者さんを主語で考えてみてね。あなたは伴走者です。(ナース歴6~10年)

●学生のころに読んでもわからなかった『看護覚え書』が、認定看護師になって読み直すとすごく説得力があることに驚きました。看護とは患者さんをみること。病気以外の話題もたくさん聞いて、記録をしたり、他のスタッフと話し合ったりしてください。ぜひ、その人らしさに近づけるような看護や、コミュニケーションを大切にしてほしいです。また、自分のことを大切にする心を忘れないようにしてください。自分が健康でなければ、人を看護することは難しいですから。一緒に、日々の倫理的な悩みに向き合っていきたいですね。(ナース歴21年以上)

●丁寧で患者への思いが強いりんの性格と、割り切っている直美の性格を、足して2で割るとちょうどいい気がします(笑)。どちらも看護婦の仕事には向いている性格なので、“ほどほど”の気持ちで勉強をがんばってほしいです。(ナース歴6~10年)

●何年やっても悩むことばかりですが、過去に悩んだことや経験が確実に自分を成長させ、自信につながっていると感じます。責任が大きい仕事ではありますが、気張りすぎず、たるみすぎず、自分のバランスを見つけて看護をしてほしいです。(ナース歴16~20年)

『風、薫る』未視聴の人に伝えたい見どころ

 まだ『風、薫る』を見たことがない人に向けた、おすすめポイントとは? 「初心を思い出せる」「励みになる」との意見から、ストーリーはもちろん、ファッションや主題歌の魅力まで……。皆さんの熱い声を紹介します。

学生時代や新人のころを振り返る機会に

●看病婦と呼ばれる人たちが知識のないまま療養上の世話をする世界に、りんたちが「空気が、清潔が」と看護の知識をもって乗り込みます。『看護覚え書』を読みたくなること間違いなし! 看護学校1年生からベテランナースまで、必見のドラマです。(ナース歴6~10年)

看護の本質に悩んだときこそ、見てみるとよいのではないかと思います。看護は緩和ケアを深めることにもつながるため、私も初心に戻れています。これから、看護婦がどのように社会的立場を確立していくのか、海外から来てくれた先生がどのように日本の看護をつくり上げようとしたのかなど、それぞれの登場人物に対してもとても関心があるので、描かれることを願っています。(ナース歴21年以上)

●正直、仕事以外で看護の内容のドラマを見るのは心が休まらず、好まないタイプでした。ですが、『風、薫る』は学生時代や新人のころを思い起こされるので、こんなときもあったな~と気軽に楽しむことができます。ちょっと見てみるかな、くらいの気持ちで見始めてみてはどうでしょうか。(ナース歴16~20年)

●自国にはまだない新しい仕事や、新しい価値観を取り入れること、それを学ぶことの偉大さ・困難が伝わるすばらしいドラマだと思います。この時代に、女性が「働く」、そして、看病を「仕事」とする、いずれも理解されないことだったはずです。今、あたりまえに看護を学び、仕事にできていることに感謝の気持ちがわきます。私の看護が未来へつながっていると信じて、りんや直美のように、自分や家族、患者さんに対していつも誠実に、まっすぐにがんばります!(ナース歴6~10年)

●時代は違うとはいえ、看護学生のやりとり、病院でのナースの立場などは、現代でも通じる内容だと思います。懐かしさを感じることもあれば、つらいことを思い出すこともありますが、初心に戻れる機会とも思って見ています。りんや直美たちの成長を、一緒に見届けませんか。(ナース歴6~10年)

ファッションや主題歌にも注目を

●ナース服がかわいい!(笑) この時代の洋服と和服、髪型など、ファッションも楽しみの1つです。美術もすばらしくて、近代史がお好きな方は特に楽しめるはず。(ナース歴6~10年)

Mrs. GREEN APPLEが歌う主題歌「風と町」がいい!(ナース歴11~15年)

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