高齢者に最適な診療やケアを個別に行うために重要な高齢者総合機能評価(CGA)。『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』に基づく実践のポイントを解説します。
- ●高齢者総合機能評価(CGA)とは?
●高齢者総合機能評価(CGA)の歴史
●『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が発刊
●CGAの役割とは?
●CGAを行う具体的なメリットは?
●看護師の特性とCGAとの関連
●CGAの適用対象
●CGAを実施するタイミング
●CGAツールの活用
●CGAは“多職種の共通言語”
高齢者総合機能評価(CGA)とは?
高齢者総合機能評価(CGA:comprehensive geriatric assessment)とは、疾患の評価に加えて、日常生活活動度(ADL*1)、手段的ADL(IADL*2)、認知機能、情緒・気分、意欲、幸福感、QOL、コミュニケーション、社会的背景などを系統的に評価する手法のことを指します。
大切なことは、CGAは高齢者の現状評価や予後予測に使用することが目的ではなく、高齢者に最適な診療やケアを個別に行うためのものであるということです。最近では、評価とそれに基づいた介入までのプロセスを含めてCGAと定義することが多くなってきています1。
*1【ADL】activities of daily living、「日常生活動作」とも表記される。
*2【IADL】instrumental activities of daily living
高齢者総合機能評価(CGA)の歴史
CGAの歴史は、「老年医学の母」と呼ばれるMarjory Warrenから始まります2。イギリスの外科医であったWarrenは、1935年、714床を有する慢性疾患患者収容施設の責任者に任命されました。そこで彼女を待っていたのは、高齢で貧しく、「不治」のレッテルを貼られ、社会から見放された大勢の患者でした。
「楽観と希望」をモットーとする彼女は、患者に生きる希望を与え、自立を促すことをめざして、疾患の種類や重症度ではなく、生活機能の評価に基づいて患者を分類しました。そして「患者が自分でできることには、いっさい手出しをしてはならない」と述べ、患者のもつ潜在的な能力を最大限に引き出し、これを活かして機能低下を補い、可能な限り自立を促しました。
さらに、居住環境の整備を行い、看護師、セラピスト、社会福祉士などによるチーム医療を構築し、多職種連携とリハビリテーション(リハビリ)を重視しました。
その成果はめざましく、患者は回復するとともに自己効力感を高めて自信をもつようになり、退院する患者が続出し、病床数は240床にまで削減されました。Warrenは「高齢者医療においては常に全人的医療を心がけるべきであり、病気を治すだけでなく、病人を癒す必要がある」と述べています(図1)2。

『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が発刊
1984年にはRubensteinらにより、CGAが生命予後や機能予後を改善するための評価手法であることが発表され、メタアナリシス*3を用いて有効性が確認されました3。日本には1990年代初頭に導入され、2003年にはCGAに関するわが国初のガイドライン『高齢者総合的機能評価ガイドライン』が発刊されました。
以降20年以上にわたり、わが国のガイドラインは改訂されないままでしたが、この間に診療ガイドラインの作成手法は大きく変わり、現在では「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」に従って、推奨を含む文章を作成することが求められるようになりました。
このような背景をもとに、2022年に研究班が組織され、2024年に『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が発刊されることになりました。
*3【メタアナリシス】複数の研究から得られた成果を統計的に組み合わせて、調べたい課題を分析する研究方法。
CGAの役割とは?
CGAとは、疾患のみならず高齢者の全体像を適切に把握し、総合的に評価して介入するプロセスであり、看護職もこのプロセスのなかで時に中心的な役割を担い、個別性の高いケアを実現するために重要な貢献を果たしています。
現在のところ、CGAは高齢者における複数の機能障害を効果的に抽出することができると考えられており、臨床プロファイル、疾患リスク、フレイルなどの評価に関してだけでなく、高齢者の個別のケアプランを決定し実践するための多面的なツールとして推奨されています。
CGAを行うことは、手間と時間を必要としますが、CGA7*4のような簡便なスクリーニングツールも開発されており、診療報酬にも取り入れられています(総合機能評価加算の算定)4。
CGAを始めるにあたって具体的なツールについて知りたい場合は、日本老年医学会のホームページ内にある「高齢者診療のお役立ちツール」ページに「高齢者の機能評価」としてツールがまとめてあります5。誰でも使用することができますので、こちらを参考にしてみるのもよいでしょう。本稿末尾の資料も参照してください。
*4【CGA7】高齢者総合機能評価簡易版。臨床での簡便なスクリーニングのため、評価項目を7つに絞ったもの。
CGAを行う具体的なメリットは?
さて、実際にCGAにどのようなメリットが期待されるのか、具体例を用いて考えてみましょう。
図2に示すように、若年・中年の患者においては、例えば心筋梗塞を発症して心機能障害を起こし、階段を上ることができなくなり、肉体労働ができなくなるといった「疾患から社会的不利につながる」という病態が一般的です6。

ところが、高齢者においては、親しい人と死別し、そのショックで寝込んでうつ傾向になり、低栄養や不動性の筋力低下から、肺炎や心不全を発症するといった「社会的不利から疾患につながる」ケースもみられます6。
このようなケースにおいては、医師がどんなに強力な抗菌薬を使用したり、どんなに効果的な心不全の治療薬を投与したりしても、「親しい人との死別によるショック」に対する介入を行わなければ、肺炎や心不全を根本的に改善することはできず、結果として肺炎や心不全を繰り返し、次第に患者は衰弱していくことでしょう。
また、外科の手術目的で入院した患者が、認知機能低下によって薬が飲めなかったり、セルフケアができなかったりということを経験することは少なくありません。
そこで、CGAを行うことで、手術前に患者の生活機能障害を把握することができ、退院後にどのような支援が必要かを前もって準備することができます。さらに、手術自体が果たして患者にとって最適な治療なのかどうか、再考する機会を与えてくれるかもしれません。このように、高齢者にCGAを行うことは、正しい病態を把握することを可能にし、患者に応じた最適なケアプランを作成するために必須のプロセスになります。
看護師の特性とCGAとの関連
改訂されたガイドラインでは、「医療・介護、関係職種によるCGAの利用」というセクションが新たに設けられ、そのなかで看護師の役割にも明確な位置づけがなされています。
注目すべきは、「高齢者の看護(看護部)においてCGAは有用か?」というクリニカルクエスチョンに対して行われたシステマティックレビューの結果です。看護師によるCGAの実施は、高齢者の死亡率を低下させ、ADLの維持にもつながるというエビデンスが示され、そのエビデンスの強さは「A」、推奨度は「1」と、ガイドラインのなかでも最も高い推奨をもってCGAの重要性が示されました7。
このような高い推奨の背景には、多くの関連文献が存在したこともありますが、看護師のケアの性質と専門性が強く関連していると考えられています。看護師は患者やその家族の生活に触れる機会を多く有しており、疾患のみならず、ADLや認知機能の低下、ポリファーマシー、老老介護の状況など、複雑な背景を包括的に把握し、日々患者とかかわっています。
こうした看護師の視点が、CGAの目的や枠組みと高い親和性をもち、今回の結果に反映されているといえるでしょう。では、看護師は実際の臨床のなかで、CGAをどのように始めていけばよいでしょうか。ここからは、ガイドラインの内容をもとに、実践のヒントを考えてみたいと思います。
CGAの適用対象
CGAはgeriatric(老人の)という語が表すとおり、高齢者を対象としたアセスメントですが、ガイドラインでは明確な年齢上の区分は設けられていません。あくまでも、適用すべきは「老年疾患や老年症候群を抱えて日常生活機能が低下した方」とされています。また、入院患者に限らず、外来通院中の高齢患者であっても、生活に支障をきたしている場合には、CGAを積極的に実施することが推奨されています。
CGAを実施するタイミング
本ガイドラインでは「看護師は入院、退院支援、訪問看護の導入、高齢者施設の入所・入居に際して」CGAを実施することが望ましいとされています。患者の状態変化に伴い、療養場所やケア内容を調整するタイミングで、生活背景やADL、認知機能や療養に対する希望などを多面的に把握しやすい看護師が、CGAを通じてケアの方向性を考える役割を担うことが望まれます。
CGAツールの活用
初診時や定期的なチェックではCGA7などのスクリーニングツールを使い、問題が疑われる要素については、個別の評価ツールを用いて詳細に確認します。入院時や入居・入所時には、系統的に詳細を把握するためにも、最初からフルセットで実施することも選択肢の1つとされており、各施設の状況に応じた実施体制の構築が推奨されます。
ただし、CGAの実施には、人的・物的資源、多職種連携の体制、患者の医療依存度など、さまざまなハードルがあるのも事実です。だからこそ、「完璧にやる」ことをめざす前に、「まず一歩を踏み出す」ことが大切です。CGAのスクリーニングから個別ケアの実践まで、完璧に実施することにハードルを感じる前に、自施設で始められそうなことを、まずは1つから始めてみましょう。
例えば、チームで「どの情報なら、みんなで集められそうか?」と話し合ってみる、CGA7のスクリーニングから試してみる、定例カンファレンスにCGAの視点を取り入れてみる、などです。そうした1つひとつの行動が、次の実践につながっていきます。
CGAは“多職種の共通言語”
CGAは医療職だけでなく、介護・福祉関連職種にも理解しやすく、共有しやすい枠組みです。特に、介護職と日常的に連携する機会の多い看護師が中心となって、CGAの視点を活用することで、医療と介護の橋渡し役を果たすことも大いに期待されています。
*
患者の暮らしを支援することは看護師の責務の1つです。CGAを行うことで、高齢者のケアの質を高めることが可能になります。まずは現場でできることから、あなたもCGAを始めてみませんか?
資料:CGAの要素と、各要素の評価ツールの概要
①スクリーニング

②CGAで評価の対象となる要素

- 1.「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドラインの作成研究」研究班, 日本老年医学会, 国立長寿医療研究センター:CGA総論.高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024.南山堂,東京,2024:2.
2.小澤利男:老年医学の先駆者たち―老年医学を学び、研修する人々のために.ライフ・サイエンス,東京,2006.
3.Rubenstein LZ,Schairer C,Wieland GD,et al.:Systematic biases in functional status assessment of elderly adults: effects of different data sources.J Gerontol 1984;39(6):686-691.
4.鳥羽研二:高齢者総合的機能評価ガイドライン.日老医誌 2005;42(2):177-180.
5.日本老年医学会ホームページ:高齢者の機能評価.高齢者診療におけるお役立ちツール.
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/(2025.8.20アクセス)
6.鳥羽研二監修:高齢者総合的機能評価ガイドライン.厚生科学研究所,東京,2003.
7.前掲書1:86-89.
この次に読まれている記事
「医療・看護の知っておきたいトピック」の記事一覧
連載記事の一覧はこちら
※この記事は『エキスパートナース』2025年10月号の記事を再構成したものです。当サイト内の文章・画像・動画等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。


