「君はどう思う?」と、答えのない問いを投げかけられる感覚

白石 作品を通して、生活や仕事で活きていることはありますか。

かげさん 私はイラストを描いている身なので、仕事の視点で作者の思考に注目しますね。手塚先生が医療のことをこれだけ勉強していて、それを漫画として届ける意味、どこまでの人に伝えたいのか、その読者の対象にどうやって落とし込むのか、どこまでユーモアを入れるのかみたいなことを、精神的な面ですごく考えさせられるなと思います。

大森ちゃん 1話完結なので、1話ごとに手塚先生に「君はどう思うの?」と問われている感覚になるんですよね。私にとって印象に残るシーンは最後のコマが多いような気がします。医者は何のためにあるんだとか、本間先生の最期のシーンも最後のコマが印象的。答えのない問いに立ち止まり、向き合うことの大切さに気づかせてくれます。読んだ人に「あなたはどう思ったの?」と感想や考えを聞きたくなりますね。

白石 この座談会がぴったりですね。私は仕事をするなかで、「あ、この場面って『ブラック・ジャック』でもあったな」と重なって、もしかしてあのときのあの人のセリフはこういう意味だったのかな…みたいなことを振り返っています。本間先生の最後のセリフなんかは特にそう。
 
 看護学校に入りたての頃は、『ブラック・ジャック』に出てきた病名はだいたい知っていたので、講義の内容も頭に入りやすかったのは助かりましたね。バセドウ病やアナフィラキシーとか、「あ、これ読んだやつだ」と思って、なんだか嬉しかったですもん。

かげさん 『ブラック・ジャック展』の寄せ書きコーナーのようなところで、「看護学校受かりました」「医学部受かりました」という書き込みを見かけました。やっぱり医療系の学生さんが読んだら面白いだろうなと。あとは、医療に関心がある人全般におすすめしたいですね。

大森ちゃん 学生さんとや若い方が読むと、医療の歴史も感じられ、新たな発見があって面白いと思います。活字は苦手だけど、医療漫画はちょっと読んでみたいという人にとっては手を出しやすいかも。

白石 初学者もそうですし、いろんな経験を積んでいる医療者も、きれいごとばかりではない、ブラック・ジャックの葛藤や迷いみたいな、泥臭さが残るようなところに共感するんじゃないかなと思います。ちょっとやさぐれているブラック・ジャックが、ふとしたときに疲れに染み入る瞬間があるんですよね…。

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