医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回は投与経路を間違えると重大な事故が起こる、トロンビン液について。静脈への投与が禁忌である理由や注意点を紹介します。

 投与経路を間違えると重大な事故が起きる薬剤。事故を防ぐためにも、薬剤を準備(調剤)するときと投与する直前の「6R」の確認が重要です。代表的な事例と一緒に、注意ポイントを示します。

トロンビン液は血管内に投与すると血栓に

 トロンビン液は、通常の結紮によって止血困難な小血管、毛細血管および実質臓器からの出血(外傷に伴う出血、手術中の出血など)に用いられます。トロンビン液には血液を凝固させる作用があり、血管内に投与すると血栓ができるため、きわめて危険です。そのため静脈への投与は禁忌です。

 事例①では、輸液ルートに金属針や専用のカニューラを必要としないルアータイプのシリンジが接続できるポートを使用していたことも原因の1つでした(図1)。

 トロンビン液ソフトボトルのノズルの形状は内視鏡の鉗子口に接続できる構造のため、物理的には輸液セットにも接続可能となっています。そのためポートにも接続でき、そのまま投与されてしまいました。

 形状や薬剤のラベルだけで判断するのではなく、「医師の指示に立ち返り再度確認」することが重要です。

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