【連載】
よくある誤解②「DNARだからもう緩和医療にシフトしよう」は間違い!
よくある誤解➂前の入院でDNAR指示が出ているから今回も同じ方針で…は間違い!
よくある誤解④「DNAR指示は医師が決めることだから…」は間違い!
【最終回】これからのDNAR指示の考え方

よくある誤解①「DNAR指示がでているから急変しても治療は行わない」は間違い!

DNARとは「心停止時に心肺蘇生(CPR)を実施しない」こと

 看護師の皆さんは日々の業務のなかで、「DNARだから(患者の病状が悪化しても)もう何もしない」「DNAR指示が出ているのにどうしてICUに入室するの?」「DNARなのにいつまで輸血を続けるの?」などという会話をした経験はありませんか?

 これらの発言には、DNARに関する誤った理解が背景にあると考えられます。

 DNAR(do not attempt resuscitation)とは、心停止時に心肺蘇生(CPR)を実施しないことです。より簡潔に表現するならば、「DNAR=no CPR」ということであり、「No Treatment(治療しない)」ではありません。

「DNAR指示=治療差し控え」になってしまっている現状

 しかしながら、2016年に日本集中治療医学会倫理委員会が、医師ならびに看護師会員を対象に行った蘇生不要指示に関する調査1,2では、DNAR指示がある場合に、CPR以外の医療行為について差し控え、または減量、終了が考慮されている現状が示されました(図1図2)。

 この調査結果で、医師、看護師に共通することは、より侵襲的な医療行為ほど、DNAR指示がある場合に差し控えが検討されていることです。

 例えば、気管挿管や人工呼吸器の装着、補助循環装置(IABPやPCPSなど)の装着、血液浄化療法は高い割合で開始が差し控えられています。これらの結果を見ると、治療を担う医師・看護師の間に、「DNARなのだから現行以上の侵襲的な処置はしない」という誤解があるのかもしれません。

図1 DNARで差し控えを考慮する医療行為(日本集中治療医学会:医師会員への調査)
(文献1より引用、一部改変)

図2 DNARで差し控えを考慮する医療行為(日本集中治療医学会:看護師会員への調査)
(文献2より引用、一部改変)