てんかんは単一の病態ではなく、さまざまなタイプの「てんかん」があります。そのため、どのようなてんかんであるのかを明らかにするために、てんかんを分類する必要があります。

 てんかんの分類には、どのような発作であるかを示す「てんかん発作型分類」と、どのような病態でてんかん発作が生じているのかを示す「てんかん病型分類」があります。

 新しいてんかん症候群や発作の知見を反映するため、2017年に「国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)」より新しいてんかん発作型分類とてんかん分類1が作成されました。

1981年から2017年発作型分類への変更点2

  1. 「部分(発作)」から「焦点(発作)」へ変更。
  2. 一部の発作型は、焦点起始発作、全般起始発作、起始不明発作のいずれにも分類されうる。
  3. 起始不明発作でもさらに分類しうる特徴を示す場合がある。
  4. 意識(awareness)を焦点発作の分類要素として使用する。
  5. 認知障害(発作)、単純部分(発作)、複雑部分(発作)、精神(発作)、二次性全般化(発作)という用語を廃止した。
  6. 焦点発作型に、自動症発作、自律神経発作、動作停止発作、認知発作、情動発作、運動亢進発作、感覚発作、焦点起始両側強直間代発作を新設した。脱力発作、間代発作、てんかん性スパズム、ミオクロニー発作、強直発作は、焦点起始と全般起始のどちらにも起こりうる。
  7. 全般発作型に、眼瞼ミオクロニーを伴う欠神発作、ミオクロニー欠神発作、ミオクロニー強直間代発作、ミオクロニー脱力発作、てんかん性スパズムを新設した。

文献2より引用)

2018年にガイドラインが改訂

 また、てんかんは有病率約1%で、頻度の高い神経疾患の1つです。一方、てんかんを適切に診断・治療することで多くの患者さんは発作が抑制され、通常の生活を送ることができるようになります。

 そのため、ガイドラインに沿った標準的な医療を行うことが重要です。近年、新しいてんかん症候群や新しい抗てんかん薬が登場し、それらを反映するため、2018年に日本神経学会の『てんかん診療ガイドライン3が改訂されました。
 本稿では、前半でこれらの新しい分類について、後半でガイドラインについて、それぞれおさえておきたいポイントについて説明します。

おさえておきたいこと

てんかんの新しい分類
● 発作型分類は、「焦点発作」「全般発作」に分類される
● 病型分類は、「焦点てんかん」「全般てんかん」「全般焦点合併てんかん」「病型不明てんかん」に分類される

新しいてんかん発作型分類に

 てんかん発作は大きく「焦点性」か「全般性」の2つに分類され、発作型分類は、てんかん性活動の開始が「焦点性」か「全般性」かを判定するのが第一段階です。

 焦点(起始)発作は、一側大脳半球だけのネットワーク内に起始し、はっきりと限局する、あるいはもう少し広汎に一側半球内に広がったもので、意識や運動症状の有無により、図1-①2のように分類されます。発作の特徴により、さらにこまかく分類することも可能です。

 全般(起始)発作は、両側大脳半球のネットワーク内に起こり、このネットワークが急速に発作に巻き込まれるもので、「全般運動発作」と「全般非運動発作(欠神発作)」に分けられます(図1-②2。 さらに下位の分類は以前の分類に類似していますが、新しい発作型(眼瞼ミオクロニーを伴う欠神発作、ミオクロニー欠神発作、ミオクロニー強直間代発作、ミオクロニー脱力発作、てんかん性スパズム)も追加されています。情報不足などで決められない場合は、「起始不明」とします(図1-③2

図1 ILAE2017年発作型分類
(文献2を参考に作成)

新しいてんかん病型分類:「焦点(起始)発作」と「全般(起始)発作」の有無で4つに分類される

 てんかん病型分類では、焦点(起始)発作のみの場合「焦点てんかん」、全般(起始)発作のみの場合「全般てんかん」、焦点(起始)発作と全般(起始)発作の両者をもつ場合「全般焦点合併てんかん」、起始不明発作をもつ場合など、患者さんがてんかんであることはわかっていても、てんかん病型を判断できない場合、「病型不明てんかん」と分類されます(図21

図2 ILAE2017年てんかん分類の枠組み
(文献1より一部改変して引用)

 新しい分類では病因も、「構造的」「素因性」「感染性」「代謝性」「免疫性」「病因不明」の6つに分類*することになりました。

* 【てんかんの病因】

●構造的:脳卒中、外傷、感染、大脳皮質形成異常など

●素因性:小児欠神てんかん、若年ミオクロニーてんかん、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、ドラベ症候群など

●感染性:神経嚢虫症、結核、HIV、脳マラリア、脳トキソプラズマ症など

●代謝性:アミノ酸代謝異常症、尿素サイクル異常症、GLUT-1欠損症など

●免疫性:ラスムッセン脳炎、NMDA受容体抗体脳炎、LGI-1抗体脳炎など

●病因不明:原因の明らかになっていないてんかん患者は多く存在する ※同一患者が2つ以上のカテゴリーに分類される可能性もある

1. Scheffer IE,Berkovic S,Capovilla G,et al.:ILAEてんかん分類:ILAE分類・用語委員会の公式声明.てんかん研究 2019;37(1):6-14.
2.Fisher RS,Crosse JH,French JA,et al.:国際抗てんかん連盟によるてんかん発作型の操作的分類:ILAE分類・用語委員会の公式声明.てんかん研究 2019;37(1):15-23.
1.日本神経学会監修,「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編:てんかん診療ガイドライン2018追補版2022.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_tuiho_2018_ver2022.html

『てんかん診療ガイドライン2018』のポイント

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この記事は『エキスパートナース』2020年6月号の記事を再構成したものです。
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