がん薬物療法の副作用としてみられる味覚障害について解説。発症のしくみや症状を起こしやすい薬剤、アセスメント、ケア、患者説明のポイントなどをわかりやすく紹介します。

※本記事は『がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版』の内容を再構成したものです。

抗がん薬による味覚障害のしくみ

■味覚障害の原因

●味覚障害は以下の3つの要因が関与することが多い。

①末梢性(味蕾障害) :抗がん薬や放射線により、味蕾の再生が障害される
②中枢性:薬剤(オピオイドなど)による神経系への影響
③環境要因:口腔乾燥、口腔内感染(カンジダ)、亜鉛欠乏など

■がん治療中に生じる味覚障害

味覚減退:味が薄く感じる
異味・錯味症:本来と異なる味に感じる(例:醤油が苦い)
自発性異常味覚:口の中に何もないのに、苦味や渋味を感じる

■症状の経過

発現時期:治療開始から2~6週間程度
回復時期:治療終了後に改善するが多くは長期化し、頭頸部への放射線治療後では不可逆的となることもある

●味覚障害を放置すると、味覚消失に進行する可能性があるため、原因の評価と適切な対策が重要である。

味覚障害を起こしやすい薬剤1)2)

●単独投与時よりも併用療法のほうが、より味覚障害が生じやすい。
●患者のリスク因子として、頭頸部への放射線照射がある。
●味覚障害は細胞障害性抗がん薬以外の薬剤や治療でも生じうる。例えば、分子標的治療薬(VEGFR阻害薬、EGFR阻害薬、mTOR阻害薬)や、併用薬(オピオイド、抗コリン薬、抗菌薬)などもリスクがある。また、頭頸部照射、亜鉛欠乏も鑑別する。

味覚障害を起こしやすい薬剤の表

●患者の生命に直接かかわるがん薬物療法を、味覚障害によって中止・減量する必要はない。しかし、がん患者にとって、食事は数少ない楽しみの1つである。したがって、味覚障害発症時には、抗がん薬以外の原因薬剤の可能性も考慮し、優先順位の低い薬剤の中止や代替を検討する必要がある。

●味覚障害の原因となりうる抗がん薬以外の薬剤として、血圧降下薬、心血管作動薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗菌薬、抗うつ薬などが知られている。

治療
対症療法として、下記の治療を行う。

亜鉛欠乏:亜鉛製剤(ポラプレジングなど)
口腔内乾燥:人工唾液(リン酸二カリウム・無機塩類〈サリベート®エアゾール〉)、麦門冬湯
口腔粘膜炎:含嗽薬(アズレンスルホン酸ナトリウム、ベンゼトニウム)、半夏瀉心湯
口腔感染症:口腔カンジダ治療(アムホテリシンBシロップ、フルコナゾール)

味覚障害の観察・アセスメント

食事量の変化:食事量低下による体重減少や低栄養がないか
口腔内の変化:口腔内乾燥、舌炎や口腔粘膜炎、カンジダ症による白苔がないか
血液検査:微量元素(亜鉛・銅・鉄)やビタミンB12の測定

※亜鉛欠乏について、亜鉛の血清/血漿亜鉛値60μg/dL未満で亜鉛欠乏症、60~80μg/dL未満で潜在性亜鉛欠乏と評価される。亜鉛製剤投与時には銅欠乏や、まれに鉄欠乏性貧血をきたすことがあるため注意する

味覚障害の患者指導・セルフケア支援

●薬物性味覚障害の予防・治療法は確立していない。
●治療終了により改善することもあるが、長期化することが多い。
●低栄養は治療中断につながりかねないため、食事の楽しみを維持できるよう、味覚の変化に合わせて食べられるレシピを工夫していく。

■ケアのポイント

患者の嗜好に合わせる
だし・香味や酸味で味を調整

量やタイミングの調整
少量頻回、温度や食感を変える

口腔内衛生
ソフトブラシの使用、うがい、入れ歯の管理、こまめな水分摂取などを励行する

味覚の変化に対する工夫
・金属味→プラスチック・木製食器を使用
・味が薄い→酸味や香辛料で調整
・苦味→冷やした食事を選択
・口腔乾燥→レモンや飴で唾液分泌促進

医師からのワンポイント

歯科医・歯科衛生士による口腔ケアや、栄養士による食形態の工夫といったチーム医療が重要である。がん薬物療法開始時に歯科受診や栄養指導を施行し、ベースラインの評価を行っておくことで、症状発現時にスムーズに介入することができる。

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がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK表紙

がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版
下山達、山村康比古、松尾有花 編
B6・288ページ
定価:2,750円(税込)
照林社

誌面見本(レジメン)

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