せん妄の場合の検査データの見方、アセスメントのつなげ方を解説。事例を紹介しながら、原因を検査データと症状と結びつけながらアセスメントする方法をお伝えします。

※本記事は書籍『検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?』の内容を再構成したものです。

ココcheck

●せん妄は、急性に出現する脳機能障害である
●脱水・感染・薬剤など、1つの要因だけでは説明できないことが多い
●行動や意識の変化を手がかりに、検査データと結びつけて全身状態を考える

●「せん妄=高齢者あるある」ではない。原因を探す姿勢が大切
●検査データの「どこを、どう見る?」
●検査データと所見から、どうアセスメントする?

「せん妄=高齢者あるある」ではない。原因を探す姿勢が大切

 せん妄は、臨床現場で非常に頻繁に見られるにもかかわらず、「高齢だから仕方ない」「認知症があるから」と見過ごされやすいのが現状です。

 しかし、せん妄は脳の急性機能障害であり、その多くは、脱水や感染、薬剤の影響など、身体のどこかに起きた異常の結果として出現します(表1)。つまり、せん妄は病態そのものではなく、重要な“警告サイン”なのです。

表1 想定される原因・疾患
せん妄で想定される原因・疾患の表

 看護師は、せん妄を「行動の問題」として対応するのではなく、「なぜ今、この患者さんにせん妄が起きているのか」を、検査データと症状を結びつけながら考える視点が求められます。

せん妄を疑った場合のアドバイスとイラスト
ちょっと詳しく

身体的拘束
身体的拘束は、安全確保のために行われることがあります。しかし、感覚遮断や不安の増強を通じ、せん妄を悪化させる要因となることがあるため、必要性を常に再評価する視点が重要です。

検査データの「どこを、どう見る?」

検査項目とそれぞれの特徴、看護での着眼点の表

1.電解質:Na(ナトリウム)とCa(カルシウム)

①Na(ナトリウム)

 Naは脳細胞の浸透圧調整に深く関与しています。

●基準値:135~145mEq/L
●異常:低Na血症・高Na血症のいずれでも、せん妄や意識変容を引き起こす

 特に重要なのは数値そのものよりも、短期間での上昇や低下といった変化の大きさです。軽度の異常であっても、急激な変動があれば注意が必要です。

②Ca(カルシウム)

 Caは神経・筋の興奮性に関与しています。

●基準値:8.6~10mg/dL
●異常:低値ではしびれや不穏、高値では傾眠や意識低下といった形で、せん妄として現れることがある

 そのため、Caは「高いか低いか」だけでなく、症状と結びつけて評価することが重要です。

看護アセスメントの視点
電解質は「高い・低い」よりも、「どのように変わって、どのような症状が出ているか」を見ることが、看護の視点では重要です。

2.腎機能:BUN/Cr比(尿素窒素/クレアチニン比)

 BUN/Cr比は、脱水が関与しているかを考えるめやすです。BUN(尿素窒素)と Cr(クレアチニン)をセットで見ることで「腎臓そのものの問題か」「脱水の影響が強いのか」を考えます。

●基準値:約10が基準
●上昇:脱水の関与を疑う(ただし、いつもとの比較が重要)

看護アセスメントの視点
脱水や腎機能低下により老廃物が体内に蓄積すると、尿毒症性の意識変容やせん妄が出現することがあります。脱水があると、血液が濃縮され、BUNが相対的に上昇しやすくなるため、BUN/Cr 比が高くなるのです。だからこそ、BUNやCrをそれぞれ単独で見るのではなく、両者の関係や変化の経過をあわせて評価することが重要です。

3.感染徴候:WBC(白血球数)、CRP(C反応性タンパク)

 感染症は、せん妄の最も頻度の高い原因の1つです。

●基準値:【WBC】4,000~8,000/μL
     【CRP】0.14~0.3mg/dL以下
●上昇:軽度の上昇であっても、経過や他の症状とあわせて評価する

看護アセスメントの視点
特に高齢者では、典型的な症状(発熱や痛みなど)が目立たず、せん妄が感染症の初発症状として現れることも少なくありません。そのため、明らかな発熱がない場合でも、WBCやCRPの変化から感染が背景にないかを考える視点が重要です。

せん妄の原因の1つ感染症についてのコメント

4.血糖

 低血糖は脳機能を直接低下させ、急激なせん妄や意識障害を引き起こします。特に、糖尿病がある患者さんは、治療内容や食事摂取量の変化によって自覚症状が乏しいまま低血糖を起こすことがあるため注意が必要です。

●基準値:70~110mg/dL(空腹時血糖)
●低下:低血糖による意識障害を疑う

看護アセスメントの視点
せん妄が出現した場合には、原因検索と並行して、まず血糖を確認する視点が重要になります。「せん妄を見たら、もれなく血糖値も確認する」ことを習慣づけましょう。

5.薬剤の影響(血中濃度)

 中枢神経に作用する薬剤は、用量が適正であっても、高齢者ではせん妄を誘発することがあります。特に、腎機能が低下している場合には、薬剤が体内に蓄積しやすく、血中濃度の上昇や作用の遷延によって、せん妄として現れることがあります。

 そのため、せん妄を認めた際には、新しく開始された薬剤や容量の変更だけでなく、「いつも使っている薬」も含めて見直す視点が重要です。

せん妄の原因の1つ、薬剤の影響についてのコメント

6.患者さんの背景によって確認するデータ

 せん妄の背景が明確でない場合や、経過から別の要因が疑われる場合には、以下の検査データを状況に応じて追加で評価します。

●SpO2・動脈血液ガス:低酸素血症の有無を評価する。呼吸状態の悪化がせん妄の原因となることがある
●AST・ALT・NH3:肝機能障害や肝性脳症の鑑別に用いる。特に NH3は意識変容の評価に有用
●Hb:貧血による脳への酸素供給低下がないかを確認する
●TSH:甲状腺機能異常による代謝亢進・低下が意識状態に影響していないか評価する

せん妄の全身チェックについてのコメント

7.併せて見るべき症状と身体所見

①急性の変化かどうか

 「いつから様子が変わったのか」「昨日までとの違いは何か」を確認します。急性の変化であれば、せん妄をまず疑いましょう。

②身体的要因(優先的に除外する)

 「脱水」「感染」「低血糖」「低酸素」の有無を確認します。命に直結する要因から順に評価するのがポイントです。

③環境・薬剤要因の見直し

 「新しく開始された薬剤や用量の変更」「睡眠状況や環境の変化」が、身体的要因と重なっていないかを確認します。

せん妄をアセスメントするポイントについてのコメント

検査データと所見から、どうアセスメントする?

1.入院3日目に夜間の不穏が生じたAさん

●85歳男性、入院後3日目から、夜間を中心に不穏な様子が見られるようになった
●検査データ:Na128mEq/L(低値)、BUN/Cr比上昇
●所見:食欲低下あり

①アセスメント

●入院後の食事・水分摂取量の低下を背景に、脱水および低Na血症によるせん妄が疑われる
●夜間に症状が強くなる点からも、せん妄の特徴(日内変動)と一致している

せん妄の夜間症状についてのコメント

②看護の対応

●水分摂取状況の把握と管理
→摂取量・排泄量を確認し、脱水の進行がないかを評価する
●電解質補正の有無と経過の確認
→Na補正の方針や速度を把握し、急激な補正になっていないか観察する
●夜間の環境調整と安心できるかかわり
→照明や物音への配慮を行い、時間や場所が分かる声かけを行う

夜間不穏の患者についてのSBARでの報告の例(表)

2.急に「話がかみ合わない」状態となったBさん

●78歳女性、今朝、急に会話がかみ合わなくなり、反応が鈍い様子
●所見:発熱は認めない
●検査データ:WBC軽度上昇、CRPは7.0mg/dL(高値)

①アセスメント

●発熱がないものの、急性の意識・行動変化と炎症反応の上昇から、感染症(尿路感染症など)を背景としたせん妄が疑われる
●高齢者では、せん妄が感染症の初発症状となることがある点に注意が必要である

高齢者の感染についてのコメント

②看護の対応

●全身状態の観察と感染徴候の評価
→バイタルサイン、尿量・尿性状、呼吸状態などを観察する
●感染精査の進行状況を確認
→尿検査や培養検査の有無を確認し、結果を追跡する
●状態変化の早期共有
→せん妄の経過や意識レベルの変化をすみやかに医師へ報告する

話がかみ合わなくなった患者についてのSBARでの報告例(表)
1.黒川清監修,春日雅人,北村聖,大西宏明編:臨床検査データブック2025-2026.医学書院,東京,2025.

\続きは書籍で/

検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?の表紙

検査データって看護アセスメントにどう活かしたらいいですか?
井上陽士、古賀雄二 編著
山本明彦 医学監修
照林社
2026年9月2日発売
B5版
2,970円(税込)

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