『終末期看護プラクティスガイド』の全体像
●終末期にある患者や家族に、 看護師がどのようなケアを提供すべきかを具体的なレベルで示したガイドとして作成
●「組織体制整備」「チーム医療の推進」「直接ケア」が効果的に機能することが、 終末期看護では重要
終末期にある患者や家族に看護師が行うべきケアを、具体的に示すものとして作成
終末期医療のあり方については、これまでさまざまな学会や厚生労働省から提言が公表されてきました。
内容は主に、終末期とはどのような状況や時期を指すのかという、いわゆる終末期の定義に関することや、終末期の方針決定のあり方(プロセスを含む)に関するものです。
これらの指針は、患者さんや家族とともに生命にかかわる重大事項を決定する医療者の道標として臨床活用されています。
しかし、終末期に至った患者さんや家族にとって大切なのは、方針を決めることだけではありません。
終末期の医療や看護の目標は、患者さんや家族が、その人らしいgood death(よりよい死)を迎えるため、QOLやQOD(quality of death)を維持・向上させられるように支援することです。
とはいえ、実際の臨床場面では、患者さんや家族へのかかわりに悩みや困難さを抱えることは少なくありません。
しかしながら、これまでわが国では、患者さんや家族の最も近くで看護を提供する看護師が、終末期にある患者さんや家族にどのような看護を提供すべきかを考えるために活用できるガイドは存在しませんでした。
そこで、日本クリティカルケア看護学会と日本救急看護学会の2学会合同の終末期ケア委員会は、終末期に関する先行研究の知見や理論に基づき、終末期看護を具体的な行動レベルで示した『救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド』1,2(以下、本ガイド)を作成しました。本ガイドが臨床活用されることで、終末期医療や看護の質の向上に寄与できると考えています。
一般病棟での終末期ケアにも汎用可能
本ガイドでは、終末期患者やその家族への直接的な看護には、「全人的苦痛緩和」「意思決定支援」「悲嘆ケア」の3つが重要であると考えています。
また、より質の高い直接ケアを提供するために、看護師は、医療チームの一員としての役割を発揮したり、多職種がそれぞれの専門性を発揮しながら連携し合えるように調整役を担いながらチーム医療を促進していくことも必要であると考えています。
そして、看護管理者は、看護師の直接ケアやチーム医療が効果的に機能しているかを確認しながら、管理的アプローチにより、ケア調整や問題解決を果たす役割をもっています。さらに、組織として終末期看護を提供できる体制を整備しておくことも看護管理者の役割です。
このように、終末期看護は、「組織体制が整備」されていることを土台に、「チーム医療を推進」することによって看護師の「直接ケア」が効果的に機能する、という3重構造で構成されていると捉えています(図1)1 。
本ガイドは、終末期患者や家族に直接的に看護を提供する看護師と、部署を管理する看護管理者により活用されることを想定しています。
救急や集中ケアの終末期の特徴を踏まえた内容になってはいますが、一般病棟などで終末期患者や家族に看護を提供する看護師や看護管理者にも汎用可能であると考えます。
- 1.日本クリティカルケア看護学会終末期ケア委員会,日本救急看護学会終末期ケア委員会:救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド(第1部、第2部).
http://jaen.umin.ac.jp/pdf/EOL_guide1.pdf(2024.2.9アクセス)
「医療・看護の知っておきたいトピック」シリーズの記事はこちら
この記事は『エキスパートナース』2020年11月号の記事を再構成したものです。
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