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川嶋みどり 看護の羅針盤 第351回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

人々の生活の中から
生まれた専門職として
普通の人の気持ちに
寄り添うことのできる
センスを磨きたい

 日々の看護においても、発想の貧困や感性の鈍麻は、技術の未熟以上に患者を苦しめることになる。人々の生活の中から生まれた専門職として、普通の人の気持ちに寄り添うことのできるセンスを磨きたい。それは一見何気ないように見えて、そのセンスのありようが、病者にとっては療養の質を左右することにもなる。

 たとえば、絶飲食を解かれて最初に口にする流動食の味やのどごしを、その病者がどのように体験しているかについての看護師の想像力の有無は、その後の回復を左右するとさえ言えると思えるからである。

(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』120ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第350回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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看護師の人間宣言
「看護師だって人間だから
結婚もする、子どもも産む
賃金も多くほしい」と
それまでの前近代的労働から
脱皮を図りました

 1959年(昭和34年)から 1960年(昭和35年)にかけて病院ストと言われる「医療統一闘争」が起こります。いわゆる看護師の人間宣言、「看護師だって人間だから、結婚もする、子どもも産む、賃金も多くほしい」と、それまでの前近代的労働から脱皮を図りました。

 看護師の労働条件を訴えること、これが先ほども申しましたが看護改革の第2の契機と言えます。ちょうど日本の社会全体は安保闘争の時代にありました。

(出典:『看護の危機と未来今、考えなければならない大切なこと』116ページ、ライフサポート社)

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【連載まとめ】診療報酬・介護報酬の最新動向と入退院支援のポイント

 令和6年度診療報酬・介護報酬のW改定対応!入退院支援加算1の地域連携強化要件など、最新動向をまとめました。入退院支援の具体例や、外来でのスクリーニングについても解説します。

※記事は『エキスパートナース』2025年11月臨時増刊号「入退院支援&社会資源の最新ポイント」の内容を抜粋したものです。

【令和6年度最新】診療報酬&介護報酬の注目ポイント

〈目次〉
●充実した支援、地域との協働に対する取り組みへの加算
●入退院支援加算1の要件:地域連携する方向へ誘導する要件の強化
●入退院支援加算1の人員配置:専従・専任・兼務の配置ミスによる返還リスクに注意!

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退院後の生活を見据えた入退院支援:病棟看護師が行う支援の具体例

〈目次〉
●情報提供の際は、「退院後の生活」を見据えよう
・入院前からの支援イメージ図
・入退院支援の具体例

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入退院支援に向けたスクリーニング:外来でのアセスメントと評価項目

〈目次〉
●入退院支援の必要性を判断するスクリーニング
・外来における入院前評価
・退院支援か必要がどうかのスクリーニング

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第349回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

忙しくて業務が繁雑であればこそ、
患者の状態やケアの内容を
書きとどめておくことは
重複や見落としを
避ける上からも重要である

 もとより、患者の病状把握のために、 診断上有効な資料として看護記録が使われることを否定するものではないが、看護師の主体性の欠如、ケアに対する自信のなさが記録に反映していることは事実である。また、記録がきちんと書けない理由として必ずあがってくるのは“忙しさ”である。
 
 たしかに書くという仕事は、意外と時間のかかるものであり、また、気分的にも落ち着いて書かないとよいものが書けないというのも理解できることである。

 しかし、忙しくて業務が繁雑であればこそ、患者の状態やケアの内容を書きとどめておくことは、重複や見落としを避ける上からも重要である。

(出典:『看護記録 看護過程にそった記録の提案』17ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第348回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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迫りくる死に対して
医学的にうつべき手がなくなっても
患者のその時々の苦痛を軽減する
看護のケアの手を休めてはならない

 迫りくる死に対して医学的にうつべき手がなくなっても、患者のその時々の苦痛を軽減する看護のケアの手を休めてはならない。(中略)

 末期患者特有の脱力感や倦怠感を癒す決定的な方法はないが、手足をさすったり、腰の下に手をさし入れるなど、スキンシップを兼ねた方法を試みる。膝下に枕を入れるのもよい。一時的に安楽がはかれても、その状態を長く続けては効果がない。

 また、体温調節機能が低下しているため、必要があれば湯タンポを入れる。外から触れると冷たいのに患者は暑がる場合もあるので、状態をよく観察しながら行う。

(出典:『看護学のすすめ』30ページ、筑摩書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第347回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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ゼミ形式の学習方法が
最も高度な学習形態であった

 東京看護学セミナーでの20年にわたる学習法とその成果から、ゼミ形式の学習方法が、もっとも高度な学習形態であることは、私自身のこれまでの学びの過程で実感してきたことでもあった。セミナーでは、指導者のいない自主的学習集団を標榜し、テーマに添って定例の学習や共同研究を続けていた。講師を招く学習も行ったが、たとえば、武谷三男による技術論講座では、決して一方的な講義はなく、いつでも受講者の自発的なプレゼンテーションに基づいて、求めている疑問の解明に応じる師の姿があった。

 問題意識を煮詰める過程で読んだ文献や図書の行間からの学びが、討論過程で活かされ次のステップへの足がかりとなった。

(出典:『看護実践 経験知から創造へ 健和会臨床看護学研究所20年の歩み』124ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第346回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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看護のアイデンティティは
ごく日常的な看護ケアの
実施によって
確固たるものになる

 危険信号が鳴り響く職場環境に隠れて、看護師が自らの本務を怠るようなことが決してあってはなりません。怠っているのではなく、できないというのなら、ナイチンゲールの次の言葉をどのように受け止めたら良いでしょう。

 「その患者にとって何が看護となるかを看護師が知らないとなると、患者としては、それを看護師に教えるよりは、看護師の怠慢をがまんしているほうがはるかにましなのである」—— 看護のアイデンティティは、ごく日常的な看護ケアの実施によって確固たるものになることを信じて、まずは実践しましょう。実践できないというなら、それを阻むものを明らかにして、改善をするのが今を生きる看護師としての役割ではないでしょうか。

(出典:『看護を語ることの意味 “ナラティブ”に生きて』128~129ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第345回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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どのようなケアであれ
実施するのが看護師であっても
評価するのは患者である

 苦痛が軽減しなかったにせよ、誰かの手が自分の苦痛を和らげようとして働いていると感じるだけでも、病人にとっては慰めとなる。(中略)

 どのようなケアであれ、実施するのが看護師であっても評価をするのは患者であるということを忘れてはなるまい。まさに、患者と看護師の協同作業の中からもろもろの技術は生まれ高められていくのである。

(出典:『いま、病院看護を問う 看護の時代1』52ページ、勁草書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第344回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

病人が直面している問題を
理解するために
面接やコミュニケーションの
技術や、社会・家族の問題に
ついても広い視野で深く
考えられる知識を身につける
ことが求められます

 病気や手術で仕事を中断したり、学校を欠席したり、家族と離れて入院している病人の気持ちは複雑です。しかも、一人ひとりが異なった社会・家族背景や価値観をもっています。

 ですから、病人が直面している問題を理解するために、面接やコミュニケーションの技術や、社会・家族の問題についても広い視野で深く考えられる知識を身につけることが求められます。

(出典:『看護師になるには』51ページ、ぺりかん社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第343回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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忙しさに流されることがあっても、
記録の際には
その流れをせきとめて
自らの行為をふり返る必要がある

 毎日の業務量の多さもあるだろうが、ルーチーン化された仕事をこなすのに精いっぱいで、 目的意識的な患者への働きかけが不足すると、 自分の実際に行ったことに対する自信が失われ、これを客体化して言語で表現することなどできないのが当然である。

 たとえ、忙しさに流されることがあっても、記録の際には、その流れをせきとめて、自らの行為をふり返る必要があるのではないだろうか。

(出典:『看護記録 看護過程にそった記録の提案』28ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第342回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

IT化の進行で
顔と顔をつきあわせ
言葉を交わすことの大切さを
忘れかけている

 神谷美恵子は、「思想とは、自分が生きていることそのことから必然的に流れ出る血液」と述べた。(中略)その彼女が病を得て、入院体験をとおして「看護師という存在の意味」を問うているが、自ら医師として働いた日々の思い出と重なっているだけに多くの示唆を含む。(中略)

 「小走りに各病室を回り、秒単位でバイタルサイン情報を集めることでさえ『看護師さんは患者に毎日生きているという実感を与えてくれる』」と。つまり、単調な1日に時間的な刻みをつけるという意味での「生存感」を与えるというのだ。電子カルテをはじめあらゆる種類のIT化の進行で、顔と顔をつきあわせ言葉を交わすことの大切さを忘れかけている現場への警鐘であると同時に、ほんの瞬時でもベッドサイドに行くことの意味を教えている。

(出典:『神谷美恵子の世界』94~99ページ、みすず書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第341回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

病人の日常生活行動を
健康な状態に近づけることは
医師の行う医療の効果を
いっそう高めるものとして
大変有効である

 病気が重くても、何とか自分の口で物を食べることで“生きる意欲”や“病気とたたかう力”が呼び起こされることを、これまで多くの患者さんが身をもって教えてくれました。ですから、看護の立場では、食欲を引き出し、できるだけおいしく、楽しく食べられる方法を考え、自分の口で少しでも食べられる方法を探します。もし、一度の食事で十分な栄養がとれないときには、四度にも六度にも分けて少しずつ食事を進める試みをします。

 こうした病人の日常生活行動を健康な状態に近づけることは、医師の行う医療の効果をいっそう高めるものとして大変有効であると言えます。そしてまた、その人自身の力を引き出す援助ですから、きわめて人間的な技術と言えるでしょう。

(出典:『看護師になるには』51ページ、ぺりかん社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第340回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

看護師が、仕事の効率性や
科学的思考のみを追求している限り
ごく日常的な患者の思いや要求を
見過ごしてしまうのは当然であろう

 看護師が、仕事の効率性や科学的思考のみを追求している限り、ごく日常的な患者の思いや要求を見過ごしてしまうのは当然であろう。そこで、まず、病人やその家族の体験から謙虚に学び、当り前の人間らしさを基盤にした実践が最も大切であることを強調したいのである。

 患者や家族に学ぶということは、いつまでも、その領域内に踏みとどまっていいということではない。古くからの経験をさらに発展させて、職業成立の根拠となる看護の技術化をはかることが必須の課題である。

(出典:『看護の自立2 看護婦の労働と仕事』16ページ、勁草書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第339回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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看護師はどんな人の看護もできる
それが看護の専門性
技術というものである

 二大看護業務として「療養上の世話」と「診療の補助」があるが、「療養上の世話は誰にでもできる」という考え方が非常に根強くある。看護師のなかにもあると思う。私は「療養上の世話」の重要性について強調したい。

 ある医師が入院したときに、「女房のケアのほうが優れているよ。看護師さんよりずっと良かったよ」と言う。私は「それは当たり前でしょう。先生と長年連れ添ってきて、体の隅々から心のありようまで熟知している奥さんが対応するのだから、上手に決まっている。だけど、お宅の奥さんに隣の亭主のケアができますか」と言った。

 看護師は、どんな人の看護もできる。それが看護の専門性、技術というものである。「体を拭くのが、なぜ専門性だ」と言った先生もいた。拭くだけなら誰でもできるが、拭くことによって病気を治したり、命を助けたりすることが可能だということを知らないのである。

(出典:『いま、看護を問う』94~95ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第338回

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看護師にとっては
「あなた一人が患者ではない」

と思っても患者にとっては
「私が患者」なのである

 入院した人々の気持ちに少しでも近づく努力をしながら、入院という環境の心身に及ぶ影響を最小にするよう援助したいものである。

 看護師にとっては、「あなた一人が患者ではない」と思っても、患者にとっては「私が患者」なのである。病状のレベルにもよるが、患者の気持ちとしては、数十人の一人として扱われるのではなく、いつでも、自分のことを主になって気遣ってくれる人がいてほしいと願っている。

(出典:『いま、病院看護を問う 看護の時代1』27ページ、勁草書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第337回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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新たな発想は包丁を手にしたときや
まさに今味見の瞬間といったときに
生まれるものです

 食べることへの関心と、食事を作ることへの興味は、子ども時代から続いています。不条理な戦時下での空腹体験も強く影響していますが、乏しい食材をあれこれ工夫して食膳を整えた祖母から受け継いだことの多さを思うこの頃です。(中略)

 共働き主婦としての数十年間、できるだけ手をかけないで美味しい食事を作ることは、厳しい三交代制の看護師時代から現在までの、ふつうの妻ではない、ふつうの母親ではなかった私の密かな義務感でもありました。さりとて調理をすることは決して苦痛ではなく、多忙であればあるほどリフレッシュの機会でもありました。

 それどころか、新たな発想は包丁を手にしたときや、まさに今味見の瞬間といったときに生まれるものです。「習うより慣れろ」通り、計量スプーンは飾り物。何時でも、お塩ぱっぱ、胡椒ガリガリ、お醤油タラーっという感じで、結構満足できる味になるから不思議。

(出典:『看護実践の科学』29(13)-96、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第336回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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最も恐れなければならないのは
痛む心の存在までも

忘れてしまう状況に
いつしか慣れてしまうことである

 教育に携わる者として、現場の質に反映するに至らない高等教育のありようを反省することしきりである。しかし、それ以上に、在院日数の短縮やIT化が、看護師の意識や行動にもろに影響していることは明白であろう。

 そうはいうものの、看護サービスの低下の要因を、医療改革の名のもとに進む病院経営の合理化の結果とするのは、あまりにも安易過ぎる。最も恐れなければならないのは、痛む心の存在までも忘れてしまう状況にいつしか慣れてしまうことである。

(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』123ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第335回

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複数の看護師で一人の患者を
みていく場合には
当然そのチームとして
共通の技術をもつことが大切である

 近代看護創生期(明治の中期)にみるような「派出看護婦」による1対1の看護という状況のもとでは、看護師個人がすぐれた技能をもっていれば、その看護師の世話を受けた患者は、高水準の看護を受けることができたし、したがって、看護はその人個人が自分の経験の蓄積の中で身につけたコツで十分であったと言えよう。

 しかし、今日のように、複数の看護師で一人の患者をみていく場合には、当然そのチームとして共通の技術をもつことが大切である。そして、同時間系列におけるチームワークとともに、24時間の連続性のなかでのチームワークの効果を最大に発揮させるためにも、チームメンバーの看護技術の水準を同レベルにしていく必要がある。

(出典:『看護の自立 現代医療と看護婦』117ページ、勁草書房)

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【連載まとめ】たらればさん×エキナス編集長トークイベントレポート

 編集者のたらればさんと『エキスパートナース』編集長によるトークイベントをレポート!紀伊國屋書店新宿本店で、「いまの時代だからこそ専門雑誌を読んでほしい理由」を語り合いました。全3回の記事で、当日の様子をお伝えします。
 ※イベントは2024年11月に開催しました。

たらればたられば

古典文学をはじめ、さまざまな情報をSNSで発信する編集者。フォロワー数は23万人以上。かつて『エキスパートナース』のなかでその名前が掲載されたことも。
@tarareba722

『エキスパートナース』編集長えきすぱーとなーすへんしゅうちょう

『エキスパートナース』本誌とwebの編集長。エキナスの公式Xでいつも漫画の話をしている。
@ExpertNurse_EN

第1回

〈目次〉
●今が雑誌の大きな転換期
●雑誌の“価値”を伝えていくこと
●すぐ近くにある、タイムライン

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第2回

〈目次〉
●映画やCDのように、雑誌を楽しむ
●紀伊國屋書店新宿本店と2人
●“うっかり”の出会いがもたらすもの

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第3回

〈目次〉
●雑誌と時代
●雑誌の未来は?
●たらればさんと編集長に聞きたいこと

・特集はどうやって決めているの?
・表紙はどうやって決めている?
・著者に期待していることは?
・ダイビングの専門誌を作ってほしい
・医学系出版社でウェブの企画を通すには?
・第2のたらればさんをめざすには?
・定期購読と電子版について知りたい
・若い読者を増やす方法は?

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第334回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

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コミュニケーションは
背中でするわけではありません

 コミュニケーションは背中でするわけではありません。面と向かってするものなのに、看護師は患者さんにお尻を向けてパソコンに向かいデータを打ち込んでいます。その先輩たちの姿を新人たちが必死で学んでいます。
 そして、そういったことがおかしいことだと気づかなくなっている職場の風土に、看護の危機的状況が潜んでいるとみます。

(出典:『看護の危機と未来 今、考えなければならない大切なこと』34ページ、ライフサポート社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第333回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

看護の魅力の一つは
未知への挑戦にある

 看護の魅力の1つは、 未知への挑戦にある。対象の背景の多様性に加えて、個別的な生活様式や習慣の相違からくる、一見ばらばらで、とらえどころのない問題に立ち向かう看護師のアプローチも多様である。

 しかし、注意深く整理していくと、年齢や疾患の相違はあっても、共通で普遍的な何かが明らかになったり、あるいは、看護師の対応の仕方の共通性などが浮きぼりになって興味のつきるところを知らない。

(出典:『看護学のすすめ』9~10ページ、筑摩書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第332回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

50年の歴史をもつ保助看法の
看護の二大業務のそれぞれの
専門性とその内容についても
看護職自身が

確かな見解をもつ必要がある

 50年の歴史をもつ保助看法の、看護の二大業務のそれぞれの専門性とその内容についても、看護職自身が確かな見解をもつ必要がある。医療技術でもなく、介護技術でもない看護技術があるとしたら、それを明確にし、その質を高めることは、生命や健康に責任をもつ看護職の差し迫った課題であると言えよう。

(出典:『看護実践 経験知から創造へ 健和会臨床看護学研究所20年の歩み』9ページ、看護の科学社)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第331回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

看護の専門性を追求し
看護学の方向を模索する過程は

多様である

 看護の専門性を追求し、看護学の方向を模索する過程は多様である。著者は看護の実践的な概念に重きをおき、その実践の積み重ねを流さず記述して分析し、そこにひそむ客観的法則性を引き出して技術化するという方法をこの20数年間提唱してきた。(中略)

 最初に行ったのが、看護に関係した事故分析であった。誰でも故意に起こそうとするのではないが、不幸にして起きてしまった事故の背景には、単なるうっかりや失敗だけでは済まされない、システムや教育の問題があることを知った。また、時や所や背景は違っても、その底にある本質は共通であることも知った。(中略)

 看護実践を技術面から分析していくうちに、生命の安全性と並行して人間らしく生きるという側面、すなわち看護技術における安楽性という概 念の重要性に気づいた。

(出典:『看護技術の現在 看護の時代2』20~21ページ、勁草書房)

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川嶋みどり 看護の羅針盤 第330回

 20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

個々の看護師らの誰もが願う
質の高い看護をスローガンとして

掲げるのではなく
実践することを抜きにしては
成熟した専門職への道は

遠いでしょう

 日々の実践の意味づけにあたってナイチンゲールの論理を適用する試みは、尽きることを知らない思いがします。個々の看護師らの誰もが願う質の高い看護を、スローガンとして掲げるのではなく、実践することを抜きにしては、成熟した専門職への道は遠いでしょう。日々の看護を振り返って、そこから引き出せる論理を引き出していくことの大切さを再び認識しました。

(出典:『看護を語ることの意味“ナラティブ”に生きて』75ページ、看護の科学社)

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