『風、薫る』で注目の「派出看護」―大関和の『派出看護婦心得』が伝える看護の教え
朝ドラ『風、薫る』で直美が始めようとしている「派出看護」。大関和の著書『派出看護婦心得』の内容を紹介しながら、派出看護先での注意点や、赤痢の感染対策、患者との向き合い方など、現代にも通じる看護の考えを読み解きます。
※本記事では当時の時代背景をかんがみて、歴史的な表現として「看護婦」という名称を使用しています。
『派出看護婦心得』とは
『風、薫る』の主人公・一ノ瀬りんのモチーフである大関和(おおぜき・ちか)が、1899(明治32)年に出版した『派出看護婦心得』(初版のタイトルは『看護婦派出心得』)。看護の知識や業務について、詳しく解説したものです。

「派出看護」とは、患者の家や入院先の病院に出向いて行う看護のこと。現在の訪問看護の原点といえます。
『風、薫る』のもう1人の主人公・直美のモチーフとなった鈴木雅(すずき・まさ)は、1891(明治24)年に、日本で最初の派出看護婦会「慈善看護婦会」を立ち上げました。その後、「東京看護婦会」に改称してから、和も経営を手伝うようになっています。
和は、派出看護婦たちにどのようなことを伝えているのでしょうか。1919(大正8)年に出版された『派出看護婦心得 第6版』の内容の一部を見ていきます。
●二、病室についての注意
第一に、清潔と消毒の方法、空気の入れ換え、室温を適切に保つことなどに注意すること。●三、病人についての注意
第一に、体温・脈拍・呼吸に注意し、次に薬の使用や食事、治療などはすべて時間を守って行うこと。また、睡眠・不眠の状態や、あらゆる排泄の状態に注意すること。●六、看護婦自身についての注意
立ち居ふるまいは静粛にし、心を平静に保ち、言葉を慎み、よく忍耐し、自分の体を清潔に保つこと。また、食事や労働においても衛生を心がけるように努めること。(文献1、p2-3,5を参考に作成)
『風、薫る』でも描かれた換気の大切さや、患者さんとの接し方の基本が取り上げられています。そのほか、医師や患者さんの家族との接し方、地方の病院に派遣された際の心得、遺体の取り扱い方などの項目もあり、具体的な注意点が丁寧に説明されています。

なかでも詳細に書かれているのが、患者さんの自宅で1日を通して行う看護の手順と、赤痢病棟における勤務スケジュールについてです。
患者さんの家での看護の手順
患者さんの家での看護の手順について、朝食までに行うこととしては、下記が記されています。
①患者の体温を測り、脈拍、呼吸を測定し、日誌に記載すること。
②患者にうがい、手洗いをしてもらい、すぐに食前の薬を飲ませること。
③患者の顔にほこりがかからないよう、ハンカチなどで覆ってから掃除をし、窓や戸を十分に開けて換気をする。患者の病状が重くなければ、寝具を交換するとよい。換気のために窓や戸を開ける時間は6分間をめやすとすること。
④牛乳やスープなどの滋養のある食事を与える場合は、このタイミングで提供する。その後、朝食を提供する。患者の食事は、すべて看護婦が責任をもって提供しなければならない。薬や食事の前後には、必ず患者にうがいをしてもらう。ただし、患者の都合によっては、看護婦が先に食事をとることもある。その場の状況や、その家の習慣、または患者の希望に応じて対応すること。
⑤患者に朝食を提供した後、看護婦自身が食事をとること。
(文献1、p5-7を参考に作成)
このように、換気、服薬・食事の管理など、患者さんの生活環境の整備が重視されていました。また、看護婦自身の食事のタイミングは臨機応変に対応するように書かれるなど、患者さんの暮らしを尊重してケアを行う姿勢が求められていたことがうかがえます。
赤痢病棟における勤務スケジュール
赤痢病棟では、「薬や食事を担当する係」「清潔・消毒を担当する係」、必要に応じて「日誌を記録する係」を決めるとされています。さらに、人数が多い場合は、それぞれの担当に補助者をつけることも必要だと、和は述べています。
「清潔・消毒を担当する係」の業務内容について、下記に挙げます。
●まずは看護婦自身が、うがいと手洗いをして清潔にし、衣服を整えてから病室に入る。
●最初に重症患者のおむつを交換する。腰まわりが汚れている場合は、お湯に石炭酸水を加え、やわらかい手ぬぐいで静かに拭き取るのがよい。
●重症患者のおむつ交換が終わったら、便器を消毒室へ運ぶ。その際、それぞれに名前を書いたり、順番を決めたりして、取り違えないようにする。
●患者ごとの記録用紙に便質を詳しく記載する。粘血便、粘液の多い便、軟便、褐色の軟便に粘液や血液が混じるもの、黒色の軟便に粘液が混じるもの、水様便に少量の粘液や血液が混じるものなど、便の性状を記載する。
●記録後、便は汚物容器に廃棄し、便器をよく洗ってから少量の石炭酸水を入れ、病室に備える。(後略)
(文献1、p13-14を参考に作成)
赤痢は粘液や血液が混じった下痢(粘血便・血便)が特徴。上記のとおり、粘液・血液の混入や、便の色・硬さなど、便の性状を観察し、記録することが重視されていました。現在の感染管理や看護記録に通じる考え方が、すでに提唱されていたことがわかります。
消毒薬、流動食のつくり方など、付録も充実
さらに、『派出看護婦心得』には「消毒薬のつくり方」「病室の消毒」「流動食のつくり方」「看護婦規則施行細則」「市立病院派出看護婦の心得」などが付録として掲載されています。看護婦の仕事の基礎から実践まで学べる、当時のナースたちにとっての必携書だったといえそうです。

『派出看護婦心得』は、国立国会図書館のウェブサイトで閲覧できます!
●『派出看護婦心得 第6版』
https://dl.ndl.go.jp/pid/935171
- 1.大関和:派出看護婦心得 第6版,大関看護婦会,東京,1919.
- 1.川嶋みどり,川原由佳里,鈴木紀子,平尾真智子,名原壽子:座談会 明治と令和・看護に通底するもの その2.オン・ナーシング 2026;5(1):40-47.
2.山下麻衣:「看護婦」の近代社会史 誇りが拓いた自立への道,朝日新聞出版,東京,2026.
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紙おむつ「アテント」4コマでわかる!産学連携商品使い方ガイド公開
大王製紙株式会社が、大人用紙おむつブランド「アテント」の産学連携商品や取り組み内容を4コマ漫画で伝えるリーフレットを、7月8日よりホームページで公開しています。
排泄ケアに関する情報を4コマ漫画でわかりやすく解説
「アテント」では、介護する人・うける人、それを支える家族まで、「安心」で「快適」に「自己実現」できる排泄ケアをサポートするという「介護の快護化®」の考え方のもと、病院・介護施設職員の業務負担軽減に向けたセミナーの実施や、産学連携商品の開発に取り組んできました。
排泄ケアに関する専門性の高い情報を、多忙な病院・介護施設職員に短時間でわかりやすく伝えるためにつくられたのが、「アテント 4コマでわかる!産学連携商品ガイド」です。誰でも活用できるよう、ホームページで閲覧できるようになっています。
同社ではこのガイドを通じて、病院・介護施設職員が前向きに業務に向き合うきっかけをつくるとともに、利用者の紙おむつに関する悩みに応じた商品選択の一助になることをめざしているといいます。

モレ、スキントラブルなどの悩みに役立つ商品を紹介
4コマ漫画は5作品を掲載。同社が病院・介護職員向けに実施した「紙おむつで困っていること」に関する調査で上位となった「あて方の工夫では難しいモレ(拘縮・男性・側臥位・座位)」「モレ(軟便・水様便)」「スキントラブル」といった悩みに対し、産学連携商品がどのように役立つのかが紹介されています。
取り上げられているのは、「アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド」「アテント Sケア 軟便安心パッド」「アテント Sケア 長時間安心パッド ダブルブロックタイプ」の3アイテム。商品の画像や特長も掲載されています。
「アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド」篇

『アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド』

・石川県立看護大学学長、東京大学名誉教授の真田弘美先生との共同研究成果を活用して開発した、テープ止めタイプ用の尿とりパッド。
・排尿口付近の前側吸収ゾーンで尿を吸収。スキントラブルが発生しやすいおしり側に尿が付着することに着目した設計で、おしり側(尾骨・仙骨部)に尿が流れにくくい。
・「おしり超うすゾーン」により、おしり側へ体圧がかかりにくい。
・2種類の「あて方マーク」により、テープ止めタイプの紙おむつに簡単に装着できる。
「アテント 4コマでわかる!産学連携商品使い方ガイド」 概要
公開日
2026年7月8日
内容
全5作品
①「介護の快護化®」篇
②「産学連携品をなぜ作っているのか」篇
③「アテント Sケア 前側吸収 おしりさらさらパッド」篇
④「アテント Sケア 軟便安心パッド」篇
⑤「アテント Sケア 長時間安心パッド ダブルブロックタイプ」篇
閲覧方法
公式ホームページでの公開、学会やセミナーなど各種イベントで配布、病院・介護施設への配布公式ホームページ
https://www.elleair.jp/c/1XoE
問い合わせ
エリエールお客様相談室 フリーダイヤル:0120-205205
お問い合わせフォーム:https://www.elleair.jp/inquiry/rules
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救命救急をもっと知りたい看護師へ!急変対応・心電図・呼吸管理などおすすめ記事まとめ
医療ドラマ「クロスロード~救命救急の約束」では、救命救急の現場で患者さんと向き合う医療者たちが描かれています。ドラマをきっかけに関心をもった方に向けて、救急・急性期看護に役立つ記事を紹介します。
「クロスロード~救命救急の約束」とは
ドラマ『クロスロード~救命救急の約束』(テレビ朝日)の主人公は、今田美桜さんが演じる救命医・春木遙。「どんな命も救うことをあきらめない」と心に誓っているものの、救命医としてはまだまだ成長途中。患者さんの抱える問題に全力で向き合い、理想と現実の間で葛藤しながらも、仲間とともにひたむきに進んでいきます。
救命救急医療の最前線でもがく、救命医、救急隊員、警察官――。「誰かを救いたい」という思いを共有する若者たちの成長を描く、クロス医療ドラマです。
ドラマに関連して、救急・急性期の看護について、もっと知りたい方に向けた記事をまとめました。
番組公式ホームページ
https://www.tv-asahi.co.jp/crossroad/
ドラマにも登場した「エクモ」とは?
補助循環の基礎知識:VA-ECMO、VV-ECMO、IMPELLAのポイントを解説
1台しかないエクモをどちらの患者さんに使うか――。第1話で遙(演・今田美桜さん)の葛藤が描かれました。その「エクモ」のしくみや管理時の注意点などがわかります。

急変とはどのような状態?
看護における“急変”の定義
辞書の言葉の意味通り、患者さんの状態が急激に変化したら、それは「急変」?事例漫画をもとに、そもそも急変とは何かを考えていきます。

急変を疑ったら、まず何を見る?
フィジカルアセスメントの基本
心拍数や呼吸数、血圧、意識をみたり、四肢に触れたり、痛みや状態を尋ねたり。急変を疑ったときのアセスメントから、“本当にいま必要な3項目”を選ぶための知識を紹介します。

胸の音やバイタルサインから、肺の異変をどう読み取る?
フィジカルアセスメントとX線画像
バイタルサインやフィジカルアセスメントの所見は、画像にどう反映されているのでしょうか。バイタルサインとX線画像の関連、呼吸音とX線画像の関係などを解説しています。

心電図波形、どう見分ける?
心電図波形の基礎から実践を図解で総まとめ
心電図は、救命救急の現場で患者さんの状態を把握するために欠かせない情報の1つ。心電図波形の特徴と見分け方のポイントをコンパクトにまとめました。

人工呼吸器装着中のケアのポイントは?
人工呼吸ケアのよくあるギモン
救命救急の現場では、人工呼吸器による呼吸管理が必要となる患者さんもいます。気管吸引、カフ圧の調整、気管チューブの固定方法など、ケアのポイントを押さえましょう。

適切なデバイスを選び、効果的な酸素療法を行うには?
本当に効果がある酸素療法ができるようになる!
本当に効果がある酸素療法を行うには、患者さんの状態に応じて適切なデバイスや流量を選択することが重要です。酸素療法の知識を基本からお届けします。

救急・ICUで終末期ケアが注目されるのはなぜ?
救急・ICUで「終末期ケアを実践する」ということ
高度な医療技術を駆使しても、救命できない患者さんがいることは避けられない現実。救急・ICUで終末期ケアが注目される背景や、ナースに求められる役割を解説します。

PICS(集中治療後症候群)にさせないためには?
PICSの基礎知識とケアのポイント
ICU在室中あるいはICU退室後、さらには退院後に生じるPICS(集中治療後症候群)。高侵襲の治療を受ける高齢者の増加に伴い注意しておきたいPICSの予防について学べます。

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看護師が症候学を学ぶには?学習プロセスとポイントを紹介
症状から病態を察する技術「症候学」。看護師が症候学を学ぶための学習プロセスやポイントを、國松淳和先生がわかりやすく解説します。
※この記事は『エキスパートナース』2026年8月臨時増刊号「ナースのための症候学」の内容を抜粋したものです。
前回の記事:「症候学」とは?看護師に必要な「症状から察する力」を身につける
症候学をどう学ぶ?
症候学を身につけるには、残念ながら一朝一夕では無理なんです。
じつは症候学に限らないんですが、つまり、勉強して何かを身につけるってこと全般に言えることについて、少し述べます。それは、
①「例題1 → 例題2 ……→ 例題nをこなす」
という段階の後に、
②「原理・原則がわかってくる」
があり、その次に、
③「応用問題をやる」
がきて、それで、
④「ひたすら演習」
のフェーズとなるのがだいたいの場合です。この①〜④をこなして、あることが習得できたり、見えてくるものがあったりするのです。学習の一般論と思ってください。
①例題1→例題2…→例題nをこなす

②原理・原則がわかってくる

③応用問題をやる

④ひたすら演習

こういうことを学生時代にちゃんとやりましたか? 私はまさにこれは、例えば高校数学だなと思いました。私は、特に算数や数学の天才などでは決してなく、新しい単元は最初は普通にちんぷんかんぷんでした。が、授業や教科書や参考書を使って①②を経て少しだけ何かを見いだし、その後、問題集などで③や④をやるわけです。もちろん順序はいろいろ入れ替わります。①→②→③→②→③→④、とか、①→②→①→③→④、とかまあなんでもいいんですが、ポイントは次のようです。
●①+②、あるいは②だけで終わってはいないということ
●結局あとは実戦で数をこなすということ
よくない学習というのは、効率よく学ぶことをめざしすぎるためか、いきなり「簡単な②」を探して、それを覚えてしまって終わらせようとするものです。これは効率よく、ではなく単にサボっているだけです。臨床は実学であり、実践のなかで実践知が身につくので、どっちかと言えば帰納的なやり方の学習のほうが多いわけです。
これを臨床に当てはめると、つまりは仕事をすること自体が、(②のような)何かを見いだす過程となるのです(だから、初期研修医よりも慣れた看護師さんのほうが、仕事やある程度のアセスメントができたりするのです)。
では、まことに失礼ながら、なぜみなさんが身につかないか。それは、よき指導者に教わらなかったからです。①②③④の間には矢印がいろいろな方向や順序で入っているのですが、この矢印こそが「指導」であったり、「勉強」であったり。でも、学生に戻れるわけではないので、当面はこれを自分の努力でやるしかないわけです。まあがんばりましょう。私もそうやってきました。
最後に、症候学というのが例えばどんな感じのことかを具体的な本で紹介します。『診察エッセンシャルズ 新訂第3版』(日経BP、2020年)という本は、医書ですが一番「症候学」って感じがします。購入必須の課題図書にするつもりはありませんが、意欲のある人は本屋さんでパラパラとめくって症候学というものの雰囲気を見てみてもいいでしょう。
新しいことを学ぶつもりで
みなさんは症候学をフレッシュな気持ちで学んでください。新しい概念をこれから入れていくんだっていう、ちょっとワクワクした気持ちでいてください。
ただし、症候学を勉強するときに必ず意識してほしいことがあります。これは絶対ですのでそのつど強調はしますが、「まだいろいろわかっていない(=情報がそろっていない)段階で考えるのが症候学ということ」です。臨床では時間が経つにつれて必ず情報が増えていきます。
今ここで話題にしているのは、ある時点において、その瞬間でしかわからない限られた情報を最大限生かして、未来のことを予想(できれば推論・推測)するということなのです。情報が集まって、いろいろわかってからならいくらでも言えるんです。「それはこうすればよかったじゃん」って後からサクッと言われてしまうことがありますが、それはあまりよい振り返りではありません。
「症状から、まだわかっていない病態を類推する」ということは、つまりはそれはそれで別途トレーニングが必要だということなのです。なので、きっとみなさんは症候学を学んだことがありません(経験で、教わらず自然に身につけてしまっているすごい看護師さんもいますが!)。
未来を推測する力をつける。
そのために、どんな情報をどのようにとればよいかについて具体的に考える。
そして、そのための必要な知識をつける。
これです。みんなで症候学しましょう!

\続きは誌面で/

エキスパートナース2026年8月増刊号
ナースのための症候学
國松淳和 著
B5・176ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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「症候学」とは?看護師に必要な「症状から察する力」を身につける
患者さんの症状から病態を察する技術「症候学」。症候学が看護師にとって必要な理由を、國松淳和先生が紹介します。
※この記事は『エキスパートナース』2026年8月臨時増刊号「ナースのための症候学」の内容を抜粋したものです。
突然ですが「症候学」です
みなさん、はじめまして。私は東京の病院で内科医をしております、國松と申します。医師24年目らしい(今数えた)ですが、『エキスパートナース』に連載をはじめて6年目になります。
さて、24年臨床医をやっているということは、24年看護師さんと一緒に仕事をしているということになります。24年看護師さんの働きを見続けたことになるので、看護師の仕事についてはそれなりによく眺めてきたことになります。みなさんが「医者? あー、いろいろいるよね〜」「医師の仕事はどんなものかはだいたいわかる」って思うのと同じかそれ以上に、私もまたナースとナースのお仕事を見てきました。
そんな私が、これから看護師さんたちに「症候学」なるものを、かなりの時間を割いて解説しようとしています。
さて、「症候学」って何でしょうか。これは簡単にいうと、患者さんの症状や症候からいかに質高く情報を得て推論し、それをその後の診断や治療に結びつけることができるかという考え方、あるいはその方法論を扱う学問のことをいいます。
応用を効かせることに大変役立つので、「原理を学ぶ」のごとく学問として考えてもいいし、普通に実臨床で直結的に役立ったりするので、業務上のコツのような実践知のようにとらえてもいいでしょう。
ナースと症候学
「症候学」といきなりいわれましても、と思いつつ、おそらく何となくよさげなものだと思ってくれると思います。そうなんです。じつは症候学は、看護師が身につけたらものすごく役に立つものだと私は思っています。これについてまず説明します。
看護師は、患者さんやその家族を除けば、患者さんの症状をあらゆる職種のなかで一番はじめに把握する人になると思います。これにはおそらく、まったく異論はないはずです。
入院では、ラウンド時やナースコールで患者さんの様子をまず感じ取り、また話を聞いたりして状態の変化を見とっていきますよね。その後、各種の情報収集に入り、医師の判断をもらうべきかの判断をするのですが、とにかくまずは看護師です。
外来では、受付事務員・クラークさんが最初に手続きするとしても、症状をまずうかがうのは看護師だと思います(聞き取るのが看護助手さんだったとしても、最初に症状について考えるのは看護師ですよね)。
電話相談だとしてもそうだと思います。とにかく困りごとの内容から症状を聞き取り、受診やその後の診療にどうつなげるべきかを考えて、適切に医師の診察に誘導していると思います。いうまでもなくここは事務員では無理で、来院後しんどそうだったらベッドに寝かせて待つ、先に点滴など処置を行うべきか考える、皮膚を触りつつ、そして話をさらに聞きながらバイタルを測定する。こういったことは外来看護師の仕事……というか職能を活かした行為です。
症候学が生かされるのはまさにこのようなときです。このようなとき? 何にも目新しくもない、看護師さんにとってはごくありふれた日常だと思われるでしょうか。私の眼目は、「このような」という事柄が何を指しているかというところにあります。
もったいぶらずに言いますと、これらすべて「患者さんが症状を発した後、かつ、まだどんな診断か決まっていない段階である」という点なんです。つまり、まだ情報がうんと少ない段階。時間的なフェーズの話です。
ナースに限らずどんな職種でも(医師でも)、まだよくわかってない段階で、堅牢な指針をもって具体的な行動に移すことは難しいです。難しいというか、未知で不確かという状況に耐えられず、多くの人が(くどいですが医師でも)不安になり、ときにいら立ったり、ソワソワして落ち着いていられなくなったりします。
このように、医師にとってすら、こうした不確かな状況で考えること(つまり症候学)が万年課題となっているのですが、患者さんにどの職種よりも最初に接触する看護師こそ、この症候学に長けているほうが、患者さんのその後のケアに大きく貢献できると私は思うわけです。
症候学のよさはほかにもあって、「脳の中だけでできる」という点です。手技や資格も要らないですし、記録さえ要らないです。なぜなら症候学というのは、“方向づけ”のためにやるものであって、行為(判断)と行為(判断)を結びつけるためのものです。その結びつきが、滑らかであり、そして早ければ早いほどよいわけです。この、まだ誰もわからない段階でも適切に方向づけることができる、というのが症候学の真髄なのですが、私の考えではナースも適任だと思っています。
勉強熱心なナースや、今よりできるようになりたいと思っている看護師さん。そして何より、手技の下手さや要領の悪さとかのために、同期や同僚や先輩に引け目を感じているみなさん。ついにあなたの時代がやってきました。症候学です。

領域別? 病名? 科?
症候学は、病態学とはどう違いますか。違いますね。「病態学」という言葉は、じつは医師の間では一般的ではありません。「病態生理学」の省略版なのかもしれませんね。ちなみによく「解剖生理」って言葉がありますが、あれもじつは本道の呼び方ではありません。「解剖学と生理学」を実用的な理由から合体したんだと思います。
看護のなかの病態学は、何というか疾患や病名のお勉強というイメージがありますがいかがでしょうか。いいでしょう、それもめちゃ大事です。なお、病態というのは本来、病名という定義されたものを指すよりも、病気の質や様態を指しています。今後、私も「病態」という言葉をたくさん使うと思います。病態というのは、生理学に根差していて、その生理学は解剖学と密接(というか表裏一体)である、というイメージです。
病態という言葉はじつに便利で、病名/診断というのは恣意的な定義に過ぎませんから、病名がなくても把握できるのが病態です。なので、症候学は病態と親和性が高いのです。これは知っておいてよいでしょう。診断をするのは医師だけですが、診断の前に状態把握に肉薄できるという意味で、症候学はナースの売りにしてもいいとすら思います。
さて、特に急性期の入院病棟などで、「循環器の患者さん」「整形外科の患者さん」「消化器の患者さん」「脳神経の患者さん」のように、ある程度は病名がついていることがありますね。領域というか、科目というか。受け持つ科が決まっている時点で、だいたいの病名は決まっていたりします。
ところで、外来と入院で違うことは何ですか? これにはいろいろあると思いますがその1つが、「外来(初診)患者さんは、病名が決まってない」という点です。入院患者さんには普通病名があるので、病名から患者さんのことを考えます。しかし外来では、特に何らかの症状をもって受診したという場合、その時点ではまだ診断名や病名がありません。
こういうことに意識的だったことがありますか? 症状があるんだから病名なんていずれはあってあたりまえ、と思っていませんか? そのようには思わないとしても、正直、「病名(原因)や病態さえ事前にわかっていれば、楽だよな」と思ったことはあると思います。この「 」のことがけっこうリアルだったりしますよね。
もうほんと、くどいですが症候学というのはこのように、まだ未決のことに対して未決のうちに考えることそのもの、あるいは決めていくための考え方をいいます。患者さんの症状とか問題点から、患者さんに起こっていることを類推していく臨床概念を「症候学」というのです。
これは、臨床の各科目によらないというところがポイントです。「臓器横断的」あるいは「領域横断的」といったりします。外科でも内科でも症候学は応用されます。
また症候学は、外来・入院を問わないということも大きなポイントです。さらには医療機関よりも前、つまり家庭や問題の発生現場にまだいる段階であっても、症候学を応用すれば患者さんのトラブルの原因を類推できてしまうのです。
いち国民の立場になったときに、みてくれる医療従事者から「(病名がわからないので)症状だけでは対応が難しいです」と言い放たれたら嫌ですよね。でも、ほとんどはそれがまあまあ現実です。正直、これは個人的には世の中的に切実な現状だと思っていて、この観点からは、症候学は職種によらずブルーオーシャンということになります(ブルーオーシャンって言いたいだけの可能性があるので忘れてください)。専門ナースもいいですが、領域(科)を横断するナースも、かっこよくないですか?
みなさん、今までと違うナースになりたいですよね? なりたいのであればガンガン症候学を勉強して、日々症候学しましょう!
次の記事:看護師が症候学を学ぶには?学習プロセスとポイントを紹介
\続きは誌面で/

エキスパートナース2026年8月増刊号
ナースのための症候学
國松淳和 著
B5・176ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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【連載まとめ】新・これならわかるICU看護
ICU・集中治療医学・クリティカルケアの定義を確認しながら、ICU看護師の役割を紹介。補助循環のしくみや管理時の注意点、主な合併症などもまとめました。
※本連載は『新・これならわかるICU看護』の内容を再構成したものです。
【第1回】ICU看護とは?集中治療・クリティカルケアの基礎知識とICU看護師の役割
●ICU看護の概念
・ICUと集中治療医学
・集中治療とクリティカルケア
・ICU看護(クリティカルケア看護)とは
・クリティカルケアは、ICU以外の場で必要とされることもある
●ICU看護師の役割
・基盤となるのは「安全に」基本的看護を提供すること
・安全な看護提供のため、患者さんの全体像を知ることが必須
・チーム医療の要となるために、基盤となる知識を身につける
・正しい知識をもち「患者さんのための最良」を追求する
【第2回】補助循環の基礎知識:VA-ECMO、VV-ECMO、IMPELLAのポイントを解説
●補助循環の基礎知識
●VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)
●VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)
●IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)
そのほかの連載はこちら
看護書大賞2026開催中!ノミネート書籍のおすすめポイントを紹介
「看護書大賞2026」にノミネートされている、照林社の書籍のおすすめポイントを紹介します。投票する本を選んでいる方や、看護に役立つ本を探している方はぜひチェックしてみてください!
看護書大賞とは
毎年6月~8月に全国の書店で開催される「看販会フェア」の出品書籍を対象とし、「フレッシュナース部門」「アドバンスドナース部門」「表紙・デザイン部門」の各部門で投票を行うイベントです。
医療系出版社8社で構成される「看護書販売を考える会(看販会)」が主催しており、今年で3回目の開催となります。
そんな看護書大賞に、2026年も照林社の本がノミネートされています!
看護書大賞の投票はこちらから
https://kangosho.com/votes/form
照林社のノミネート書籍一覧(発売順)
照林社からは、次の10冊がノミネートされています。
フレッシュナース部門
新版 病棟でよく使われるくすり 知らないと危ない!

★オススメポイント
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★オススメポイント
10年ぶりに改訂した今回、基礎医学や看護の部分を、より臨床に役立つようアップデートしました。循環器薬やアブレーションの基本も学べます。著者こだわりのイラストは、くすっと笑えて、看護師への熱いメッセージやポイントが盛りだくさんです!
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映画『Return to My Blue』人工呼吸器をつけた少年の無人島への挑戦を描くドキュメンタリー
映画『Return to My Blue』が、7月24日(金)よりキノシネマ新宿ほか全国で順次公開。人工呼吸器を装着する少年が、無人島に挑む姿を追った短編ドキュメンタリーです。
※正式タイトルは「My Blue」にのみ下線を引いた『Return to My Blue』。
医療的ケアを必要とする少年の、無人島への夢
人工呼吸を装着し、車椅子で生活をする10歳の壮眞(そうま)くん。低酸素性虚血性脳症による両上肢・両下肢・体幹機能障害を抱えています。
母・純代さんの「春休み、小学校の連絡帳に『無人島へ冒険に行ってきました』って書いたら、かっこよくない?」という一言から、無人島への挑戦が始まりました。
監督・プロデューサーは、 NHK連続テレビ小説『あんぱん』『エール』、大河ドラマ『どうする家康』などで監督を務めた野口雄大さん。本作が自身初のドキュメンタリー作品となります。

障がいを抱えた子どもたちと沖縄の無人島へ行くツアーに参加することを決意した、壮眞くんと純代さん。しかし、高度医療的ケアが必要な壮眞くんが電気も水もない無人島に行くことは決して安全ではありません。
担当医の山本先生は当初、無人島行きを反対。しかし、壮眞くんに直接会い、自らの意思で「無人島に行きたい」と希望していることを知って、心を動かされます。「本人が行きたいなら、何かしらの形でサポートをしたい」とツアーに同行してくれることになり、無人島への旅がかないました。
親子で家の中で練習していたという、飛行機の離着陸。実際に揺れ動く機内を体験し、壮眞くんは驚きつつも笑顔に。沖縄に無事たどり着くと、さまざまな人の協力のもとに小さな漁船に乗り込み、無人島に上陸します。

壮眞くんは人工呼吸器を外し、手動の器具に切り替え、純代さんに抱きかかえられて海へ。その瞬間見せたとびきりの笑顔が、美しい風景とともに映し出されます。
野口監督は、このときの壮眞くんの笑顔について、「言葉では言い表せない、圧倒的な“光”でした」とコメント。「あの日、私が目にした圧倒的な光を、1人でも多くの方に届けたい。それは、生と隣り合わせの現実の中でなお、人が“生きる”ことを選び続ける、その強さの光でもありました」と語ります。
壮眞くんの挑戦について、自分自身にとってもチャレンジ・成長につながったと話す、山本先生やツアースタッフ。周囲の心強いサポートがあったからこそ実現した冒険の旅であることが伝わってきます。
本作のタイトルの「Blue」には、「誰もが心の奥にもっている原点のようなもの」という意味が込められているとのこと。壮眞くんの気持ちが周りの人々を動かし、一緒に挑戦をし、1人ひとりの心にある大切なものを思い出させてくれる――。そんな瞬間を記録したドキュメンタリーです。

映画『Return to My Blue』
7月24日(金)よりキノシネマ新宿ほか全国順次公開出演:吉原壮眞、吉原純代、加藤真心、加藤さくら、山本英世
監督・プロデューサー:野口雄大
プロデューサー:中臺孝樹
ラインプロデューサー:小宮誠
アソシエイトプロデューサー:松井佳敬/小林由佳
撮影:勝野楓太/松永昂大/野口雄大/中臺孝樹/堀田弘明
編集・カラリスト:堀田弘明
整音:郡弘道
音楽:KAITO MORI/美音/アルベルト・ピッツォ
アートディレクター:塚本哲也
コピーライター:上田浩和
字幕:坂口智佳
PRプロデューサー:尾上玲円奈
自由人:高橋歩
配給:ギグリーボックス
制作プロダクション:スタジオなあに
上映時間:39分
©スタジオなあに

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【受付終了】看護についての考えや悩みを編集部員と話しませんか?
『エキスパートナースweb』では、看護専門のウェブサイトや雑誌制作の参考にさせていただくため、オンラインでのヒアリングの参加者を募集しています。ふだん考えていることやお悩みなどを、編集室スタッフとお話しませんか?
ヒアリング参加者には雑誌『エキスパートナース』と書籍をプレゼント!
日々の業務や勉強のなかで、「本当に知りたい情報が見つからない」「現場で役立つコンテンツがもっとほしい」「こんなテーマを記事で取り上げてほしい」などと思ったことはありませんか?
『エキスパートナースweb』では、ナースの皆さんにとってより役立つ記事やコンテンツをお届けするため、オンラインでのヒアリングにご協力いただける方を募集しています。
ヒアリングでは、日頃の業務や学習での悩み、看護に役立つWEBコンテンツへのご意見などをお伺いします。現場で感じていることを、ぜひお気軽にお聞かせください。
ご参加いただいた方には、雑誌『エキスパートナース』のバックナンバー(最新号~過去1年間発行分)からご希望の1冊と、弊社発行指定書籍からご希望の1冊、計2冊をプレゼントいたします!
こんな方はぜひご参加を!
・看護の学習や情報収集を日常的に行っている方
・看護師向けのWEBコンテンツづくりに協力してみたい方
・看護の学習に雑誌やWEB記事、セミナーなどを活用している方
・「看護に役立つこんなコンテンツがあったらいいのに」との思いがある方
ヒアリング開催概要
日程:7月21日(火)~7月31日(金)の期間の平日いずれか1日
形式:オンライン(Zoom)にて、参加者の方数人+編集室スタッフで実施
所要時間:2時間程度
対象:看護師、准看護師、看護教員等の方
※※受付は終了しました※※
https://questant.jp/q/expertnurseweb_202607
※応募締切:2026年7月10日(金)12:00まで
※ご参加をお願いする場合のみ、2026年7月15日(水)までに編集部より詳細をメール差し上げます。
日本老年看護学会が『認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言』を公開
日本老年看護学会が、『認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言』をホームページで公開しました。認知症看護の質向上をめざして作成された、同提言の概要を紹介します。
認知症基本法、身体的拘束の最小化等を受けて刷新
2026年3月、日本老年看護学会は『認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言』を同会ホームページで公開しました(表1)。同提言は、2016年に公表された『「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明 2016』(以下、『立場表明2016』)を見直し、刷新したものです。
『立場表明2016』は、急性病院に入院する認知症高齢患者への援助不足を改善するために、同会の立ち位置を示すものとして作成されました。その『立場表明2016』の表明から10年が経ち、認知症を取り巻く社会の状況が大きく変わったとし、同会は、看護職が認知症の人と家族に向けてよりよい看護実践を探求する際の道標になるよう同提言をまとめたとしています。“社会状況の大きな変化”としては、2024年に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(認知症基本法)、同年の診療報酬改定による「身体的拘束の最小化」等が挙げられます。
認知症看護での目的意識をチームで確認する際に活用できる
『立場表明2016』の見直しにあたって、同学会会員へのweb調査と並行して、認知症の人とその家族にこれまでの受療経験をふまえたヒアリングやアンケートを実施しています。老人看護専門看護師・認知症看護認定看護師を対象のグループインタビュー、認知症療に携わる医師による意見等を含め、推敲が重ねられました。同会ホームページにて同提言の詳細が確認できるため、認知症看護での目的意識をチーム内で確認するためにも活用できます。
同会は同提言を看護職と共有することで、医療機関が認知症の人と家族にとって安心できる場となっていくこと、認知症看護の質向上を図り、認知症の人と医療機関の信頼を確固たるものにすることをめざしています。
表1 認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言
提言1 看護職は、自らの認知症に対する認識を振り返り、時代に合う認知症観へと更新していきます。
提言2 看護職は、認知症の人をひとりの人としてとらえ、認知症の人の日々の意向に気づき、誠実に意思決定支援を積み重ねていきます。
提言3 看護職は、認知症の人ならびに家族との対話を通して、認知症の人が望む生活を共有し、その実現に向けた最善の看護を提供していきます。
提言3-1 安全の確保と意思に基づく行動の自由を両立していく看護
提言3-2 認知症の人の言葉や表情、振る舞いに深い関心を寄せ、伝えたい思いに真摯に向き合う看護
提言3-3 受療前後の生活の継続性に注目し、認知症の人の「できること・やりたいこと」を引き出す看護
提言3-4 医療機関の内外に在るさまざまな人々と手を携え、認知症の人と家族の多様なニーズに応える看護
提言3-5 認知症の人にとって居心地がよく、本人の持てる力を引き出す環境を創る看護
提言3-6 これまでに表明された認知症の人の思いを紡ぎ、自分の人生を生きることを守る看護
提言4 看護職は、認知症の人の家族が置かれている状況や揺れ動く気持ちを受け止め、最善の選択と対応ができるよう支援していきます。
提言5 看護職は、地域共生社会の中で、医療機関が認知症の人と家族から信頼される存在となるよう日々の看護実践に力を尽くしていきます。
- 1.日本老年看護学会:認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言(簡易版).
https://rounenkango.com/houkoku/pdf/ninchi_kakehasi_teigen_short.pdf
2.日本老年看護学会:認知症の人と医療機関の架け橋となる看護への提言(詳細版).
https://rounenkango.com/houkoku/pdf/ninchi_kakehasi_teigen_detail.pdf
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急変対応の授業【おすすめBOOK】
看護師におすすめの本を紹介。今回は、患者の異常を見抜く力と対応力をみがける「急変対応の授業」です。
現場で遭遇しがちな事例をもとに解説
総論、バイタルサインの変化・解釈の解説のほか、院内心停止、アナフィラキシー、SpO₂低下など、現場でよくある事例を取り上げ、すぐに実践できる急変対応の「王道」を解説。
雑誌『エキスパートナース』で「フィジカルアセスメントの授業2」を好評連載中の救急救命医・坂本壮先生が教える、患者さんの異常を見抜く力と対応力をみがき、自信をもって急変対応ができるようになるテキスト。

急変対応の授業
坂本壮 著
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定価:2,530円(税込)
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ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第5版【おすすめBOOK】
看護師におすすめの本を紹介。今回は、「ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第5版」です。
最新のガイドラインに対応してブラッシュアップ!
所収用語は1,200語、ストーマ・排泄リハビリテーションにかかわる医療従事者のバイブルとなる用語集。今回、臨床の新しい技術や最新の各診療ガイドラインに対応し、ブラッシュアップした改訂第5版となる。
医師・看護師やその他医療従事者が「共通の用語」をもつことで、臨床のレベルアップとチーム医療の推進をバックアップする。
図表や資料も多数掲載しており、学会発表や論文投稿時のみならず、臨床の現場でも必携の1冊。

ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第5版
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会 編
照林社
A5判
定価:2,640円(税込)
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補助循環の基礎知識:VA-ECMO、VV-ECMO、IMPELLAのポイントを解説
補助循環の基礎知識を整理したうえで、VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)、VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)、IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)について解説。それぞれのしくみや管理時の注意点、主な合併症などをまとめました。
※本記事は『新・これならわかるICU看護』の内容を再構成したものです。
- ●補助循環の基礎知識
●VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)
●VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)
●IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)
●本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!
補助循環の基礎知識
補助循環は「一時的に心臓や肺を休ませる」ための装置
重症心不全や心原性ショック、重症呼吸不全など、薬物治療だけでは循環や呼吸を維持できない場合に使用されるのが補助循環です。
補助循環は、心臓や肺の機能を一時的に補助あるいは代替し、全身の臓器灌流を維持するための装置です。
ICUでは、薬物療法や人工呼吸器だけでは救命困難な患者さんが少なくありません。補助循環を導入することで、心臓や肺を休ませながら臓器障害の進行を防ぎ、回復までの「橋渡し(ブリッジ)」として重要な役割を果たします。
補助循環は「呼吸を補助するVV-ECMO」と「それ以外」に分かれる
補助循環にはいくつかの種類があり、目的によって使用する装置が異なります(表1)。

VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)
VA-ECMOは心臓と肺の両方をサポートする
VA-ECMO(静脈-動脈膜型人工肺)は、静脈から脱血した血液を膜型人工肺で酸素化した後、ポンプで動脈に送り返す装置です。
心臓から血液を送り出す部分をポンプが代替し、酸素化を膜型人工肺が担うため、心臓と肺を両方サポートできます。そのため、心拍出が著しく低下した状況でも全身灌流を維持できます。
適応は、急性心筋梗塞や心筋炎などによる重度の心原性ショック、心停止からの蘇生(ECPR)、開心術後の心不全、重症肺塞栓などです。
一方、重度の不可逆的な脳障害や進行性の多臓器不全では適応が限られます。
また、高齢や重度の末梢血管疾患では、導入困難や合併症のリスクが高まります。
「循環不全が改善できているか」はミキシングゾーンに現れる
看護上の注意点として重要なのは「回路は患者さんの循環そのもの」と理解することです。流量は心拍出量に相当するため、流量低下はただちに全身灌流低下につながります。
VA-ECMOの特徴は、大腿動脈から挿入した送血カニューレを介し、大動脈に向かって「逆行性」に血液が流れることです(図1)。そのため、心臓から拍出される血液と、VAECMOから送られる血液がぶつかり合う境界(ミキシングゾーン)が生じます。ミキシングゾーンの位置は自己心拍出量によって変化するため、心機能回復の評価時に重要です。
なお、右橈骨動脈から採血して血液ガスを測定すると「その血液が自己肺とVA-ECMOどちらで酸素化されたか」を判別でき、ミキシングゾーンの推定に役立ちます。

Check
●医師が、駆動装置で遠心ポンプの回転数(一般的に2,000~2,500回転/分)を設定
●遠心ポンプによって静脈から脱血された血液は、人工肺でガス交換・酸素化され、動脈に送られる
●設定された回転数や循環血液量などによって流量(flow)が決まる。一般的に3L/分程度をめやすに回転数を調整する

VA-ECMOによる左室への負荷
VA-ECMO使用時は、逆行性送血によって左室の後負荷が増大し、左室内に血液が貯留して拡張しやすくなります。肺うっ血や心機能悪化につながる可能性があることから、心エコーや動脈圧波形による心機能評価に加え、呼吸状態や尿量、乳酸値など臓器灌流の指標を継続的に観察し、呼吸と循環のバランスを多角的に評価することが重要です。
左室の後負荷軽減を目的に、IABPやIMPELLAを併用する場合もあります。
アラーム・機器トラブルには、即座にチームで対応する(表2)
最も多いのは「低流量(low flow)アラーム」で、回路の閉塞、脱血不良(体位変換や循環血液量低下)、カニューレ位置異常などが原因で鳴ります。
VA-ECMOのトラブルは患者さんの生命に直結するため、まずは血行動態と酸素化を確認し、至急、医師・臨床工学技士に連絡することが重要です。

ここもおさえて!
回路内圧のモニタリング機器トラブルを回避するためには、回路内圧のモニタリングが重要です。それぞれの測定部位の圧変化が何を意味するのかを理解することが、トラブルの予防につながります。
VA-ECMO使用時の観察項目は多岐にわたる
VA-ECMO使用時は、動脈圧、尿量、乳酸値、四肢末梢循環、カニューレ部出血や血腫、回路内凝血、ガス交換状況(PaO2・PaCO2)などを包括的に評価します。
また、回路内の血栓形成を防ぐためヘパリンを持続静注し、ACTを180~200秒程度で管理していますから、出血リスクの観察も欠かせません。
代表的な合併症(表3)
合併症は、出血、血栓塞栓、下肢虚血、溶血、感染が代表的です。特に、カニューレが挿入された下肢の虚血は重篤であり、冷感やチアノーゼを早期に見逃さないことが看護師の大事な役割の1つです。
また、大量輸血を要する出血や、抗凝固不足による血栓塞栓症は生命予後に直結します。褥瘡など皮膚トラブルにも注意が必要です。

ここもおさえて!
局所酸素飽和度の測定下肢の虚血を見逃さないために、両下肢に局所酸素飽和度を測定する装置を装着することもあります。本症例では右下肢の血流が低下し、下肢の虚血が認められました。
on-offテストを行いながら、慎重に離脱を図る
VA-ECMOからの離脱は、心機能や全身状態が回復してきたと判断された段階(表4)で流量を段階的に減少させ、自己心拍出で循環が維持できるかを確認しながら行います。これをon-offテストと呼びます。
離脱試験中は、動脈圧、尿量、乳酸値、エコー所見を慎重に観察し、わずかな変化も見逃さないことが求められます。
表4 VA-ECMO離脱基準(例)
●収縮期血圧>80mmHg
●PCWP<12mmHg
●心係数>2.2L/分/m2
●PaO2、PaCO2が適正範囲
●心エコー所見が改善傾向Check
離脱基準は「心機能・全身状態が回復してきた」と判断される指標
VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)
VV-ECMOは肺を休めるために使用する
VA-ECMOとの違いは「送血の部位」
VV-ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)は、重症呼吸不全に対して導入される補助循環です。血液を静脈から脱血し、膜型人工肺で酸素化・二酸化炭素除去を行った後、再び静脈に戻します。
VA-ECMO(動脈に送血)が心拍出そのものを代替するのに対し、VV-ECMO(静脈に送血)は心拍出を補助する機能はなく、「肺のガス交換を代替すること」が目的です。つまり、患者さん自身の心臓が十分に拍動していることが前提条件となります。
VV-ECMOは、人工呼吸管理で改善が得られない重症低酸素血症に導入され、肺を「休ませる」ことで回復の時間をかせぎます。
適応と禁忌
VV-ECMOの適応となるのは、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)や重症肺炎、COVID-19などによる重度低酸素血症です。通常は、PEEPを含めた人工呼吸管理、筋弛緩薬や腹臥位療法などを尽くしてもPaO2/FIO2比が80~100以下に低下する場合に検討されます。
禁忌としては、不可逆的な肺疾患や重度の多臓器不全、重大な中枢神経障害が挙げられます。また、高度な出血傾向をもつ患者さんでは導入が困難となります。
人工呼吸管理との関連
VV-ECMO管理において、看護師が意識すべき最大のポイントは「lung rest(肺を休ませる戦略)」です。
重症呼吸不全に対して呼吸を維持するために人工呼吸器で高い圧をかけると、肺は傷害を受けて状態が悪化してしまいます。VVECMOの導入により、人工呼吸器は低い圧・低い酸素濃度でも安全に運用できます。これがlung restです。
血液の再循環(リサーキュレーション)に要注意
基本的なアラーム対応や観察項目、合併症はVA-ECMOと共通します。ただし、VV-ECMOでは血液の再循環(リサーキュレーション)が生じることがあります(図2)。

再循環は、主にカニューレ位置の不良によって生じます。送血管と脱血管の距離が近い場合、血液がすぐに吸引されてしまうためです。ECMO流量が過大な場合や、患者さんの循環不良・静脈還流不足も同様の現象を引き起こします。
再循環が生じると、VV-ECMO流量が十分であるにもかかわらず、SpO2やPaO2の改善が乏しくなります。送血回路と脱血回路の色調が類似する場合にも、再循環を疑います。
これらの異常が認められたら、すみやかに医師や臨床工学技士へ報告し、カニューレ位置の再調整や流量設定の変更につなげることが求められます。
呼吸状態が回復したら、VV-ECMOからの離脱を図る
VV-ECMOからの離脱は、肺のガス交換能が回復してきた段階で行います。流量を徐々に下げ、「人工呼吸器で酸素化・換気が維持できるか」を確認する離脱試験を実施します。
通常、Sweepガス流量を減らし、最終的にゼロにしても血液ガスが安定しているかを確認します。この過程ではSpO2やPaO2の低下、呼吸回数の増加などを注意深く観察し、肺が十分に機能を取り戻したことを確認して離脱となります。
IMPELLA(補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)
IMPELLAは心室の血液を大動脈に送り出す
IMPELLA(〈インペラ〉補助循環用心内留置型ポンプカテーテル)は、大腿から挿入し、大動脈弁を越えて左室内に留置されるポンプカテーテルです(図3)。心室の収縮を一時的に代替し、心拍出量を直接補助します。

IABPが「間接的に」心筋酸素需給を改善するのに対し、IMPELLAは「直接的に」心拍出を増加させます。特に、左室の後負荷を大きく減らし、心筋酸素消費を低下させる点で優れています。V-A ECMOと違って呼吸の補助はできませんが、侵襲が比較的少ないことも大きなメリットです。
適応は、急性心筋梗塞に伴う心原性ショック、ハイリスクPCIの周術期補助、重症心不全の一時的サポートなどです。禁忌は大動脈弁狭窄や大動脈弁閉鎖不全、左室内血栓、機械的合併症(心室中隔穿孔など)です。
IMPELLAは「位置の管理」「補助流量の把握」が重要
看護のポイントとして最も重要なのは、ポンプカテーテルが大動脈弁を越えて左室に正しく位置していることが重要です。位置がずれると効果不十分や溶血、弁損傷を引き起こすため、波形やエコーで確認します。
また、強力な吸引力を持つため、脱血不良が起これば溶血や血球破壊が進行することがあります。ヘモグロビン尿やLDH上昇に注意が必要です。
各種設定とカテーテルの種類(表4)
IMPELLAによる補助レベルは、専用コンソール(制御装置)で設定します。
挿入するポンプカテーテルの種類と補助レベルによって、最大補助流量も異なります。

アラームが鳴ったら、位置波形から状態を把握する
IMPELLAのアラームでは、ポンプ位置不良アラームやサクション(吸引)アラームが代表的です。なかでもサクションアラームは、循環血液量の不足や位置異常の可能性があり、いずれも循環不安定につながるため、早急な対応が必要です(図4)。

観察項目と代表的な合併症
観察項目は、動脈圧や尿量、乳酸値といった臓器灌流の評価に加え、溶血の徴候(Hb低下、LDH上昇、尿の色調)、出血・感染徴候の確認が含まれます。大動脈弁を通過するカニューレに関連して大動脈弁損傷や大動脈内血栓形成にも注意が必要です。
合併症として起こりうるのは、溶血、出血、血栓、感染、弁損傷などです(表5)。抗凝固療法下(ACT160~200秒程度)で管理するため、出血リスクの観察も欠かせません。他の補助循環と同様に、皮膚トラブルや安静保持によるストレスも重要ポイントとなります。

徐々に補助レベルを下げて離脱する
IMPELLAからの離脱は「心機能が改善し、自己心拍出が十分に得られるようになった」段階で、補助レベルを段階的に下げていくことで行われます(表6)。その過程で血圧や尿量、乳酸値を評価し、循環が維持できることを確認します。
離脱試験中の観察はきわめて重要で、微細な変化も逃さない注意深さが必要です。
表6 IMPELLAの離脱基準(例)
●平均血圧>60mmHg
●乳酸値<2mmol/L
●肺動脈楔入圧(PAWP)<20mmHg
●心拍数が維持され、新たな不整脈の出現なし
●心係数(CI)>2.2L/分/m2
●SvO2の低下なしCheck
離脱は、徐々に補助レベルを下げ、補助レベルP2でも左記を満たす場合に実施
『新・これならわかるICU看護』の試し読み記事一覧
- 1)Turner DA,,Cheifetz IM.Extracorporeal membrane oxygenation for adult respiratory failure.Respir Care 2013;58(6):1038-1052.
2)Ikeda Y,Ishii S,Maemura K,et al.Hemodynamic assessment and risk classification for successful weaning of Impella in patients with cardiogenic shock.Artif Organs 2022;46:1358-1368.
3)小尾口邦彦:こういうことだったのか!! ECMO・PCPS.中外医学社,東京,2020.
4)日本呼吸療法医学会・日本経皮的心肺補助研究会 編:ECMO/PCPSバイブル.メディカ出版,大阪,2021.
本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!

新・これならわかるICU看護
道又元裕 監修
夛田 覚 編
B5・272ページ
定価:3,520円(税込)
照林社
この記事の続きは書籍で! 本書は、「看販会看護書大賞2026」の「フレッシュナース部門」にノミネートされています。投票を受け付け中ですので、ぜひチェックしてみてください。
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ICU看護とは?集中治療・クリティカルケアの基礎知識とICU看護師の役割
ICU看護とは何かを基礎から解説。ICU・集中治療医学・クリティカルケアの定義を確認しながら、ICU看護師の役割、求められる知識・スキルを紹介します。ICU看護の全体像を学べる入門記事です。
※本記事は『新・これならわかるICU看護』の内容を再構成したものです。
- ●ICU看護の概念
・ICUと集中治療医学
・集中治療とクリティカルケア
・ICU看護(クリティカルケア看護)とは
・クリティカルケアは、ICU以外の場で必要とされることもある
●ICU看護師の役割
・基盤となるのは「安全に」基本的看護を提供すること
・安全な看護提供のため、患者さんの全体像を知ることが必須
・チーム医療の要となるために、基盤となる知識を身につける
・正しい知識をもち「患者さんのための最良」を追求する
●本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!
ICU看護の概念
ICUの患者さんは「生命の危機状態」にある
ICUと集中治療医学
ICU(集中治療室)は「内科系、外科系を問わず、呼吸、循環、代謝、その他の重篤な急性機能不全の患者さんを収容し、強力かつ集中的に治療看護を行うことによりその効果を期待する部門」1)と定義されています。
また、ICUで行われている集中治療医学は「生命の危機に瀕している急性期重症患者を救命、安定化して、原因となった疾患を解明して治療へと導く急性期全身管理医学である。重症患者の全身状態を病態に即して至適な状態に維持するtitrating therapy(侵襲にさいなまれた身体を癒す)を主として行い、原因疾患の治療と回復を図る。このための診断、モニタリング、治療、病態生理の解明がその学問体系である」2)とされています。集中治療を専門に行う医師がintensivist(インテンシヴィスト)です。
集中治療とクリティカルケア
集中治療(intensive care)は、多くの場合、主に専門ユニット(ICU)で行われる治療・看護そのものや環境をさします。一方、クリティカルケア(critical care)は、やや包括的・総合的な概念で、ICU以外の高度救命救急センターや各科の重症管理病棟などで行われる治療・看護も含みます。
クリティカルケアは、生命の危機状態にある患者さんに対するキュア(cure)とケア(care)を併せた概念です。キュアは「治療」、ケアは「疾病などの影響によって、さまざまな苦痛(症状)を取り除いたり、少しでも安楽な状態へ導いたりすることをさし、もともと米国などで広く用いられています。
現在では「クリティカル(生命の危機的な状態、重篤な状態)な患者さんをケアする」という意味で、日本で用いられるようになり、集中治療とほぼ同義に扱われています。
ICU看護(クリティカルケア看護)とは
AACN(米国クリティカルケア看護師協会)は、クリティカルケアを「看護のなかでも特に生命に危険を及ぼしている健康問題に対する人間の反応を診断し、専門的にケアする分野」と定義しました。
また、日本では「急激に生命を脅かす重度の侵襲にさいなまれた人々(患者さん)に対してさまざまな生体反応を緩和し、現在ある機能を最大限に高めてゆく援助である」3)と定義づけられています。
すなわち、ICU看護とは、種々の健康問題によってこれらの機能が破綻し、生命の危機的状態に陥った(または、そのリスクが著しく高い)急性かつ重篤な患者さんの健康問題をアセスメントし、重篤化を回避しながら早期回復に向けた看護実践であるといえます。
その看護実践の提供は、24時間継続して、患者さん2人に対して看護師1人配置が最低の単位体制で行われることが特徴です。
生命の危機状態=ホメオスタシスが破綻した状態
生命の危機的状態とは「生命を脅かす重篤な健康問題(潜在的、顕在的)があり、それに対して身体機能の安定や合併症の予防、最大限の人間らしさを保つために、集中的・濃厚な介入(治療・看護)を持続的に必要とする状態」のことです。
そのような状態にある患者さんが、過大な侵襲を受けると、身体のみならず心理・精神的にも、社会的にも、生命を営むうえでの重大な機能的変調が生じます(→本書p22)。その結果、ホメオスタシス(恒常性)の破綻をきたし、いわばカタストロフィ(安定の破綻)の状況に陥ってしまうのです(図1)。

Check
「重篤な健康問題」の原因はさまざま
①先天性の障害
(先天性心臓疾患、超・極・低出生体重児など)
②後天性疾患
(心筋梗塞、重症呼吸不全(急性呼吸窮迫症候群/ARDS)など)
③事故
(外傷:交通事故、重症熱傷を含む重度外傷)
④医学的治療
(大手術:心臓手術、臓器移植など)
クリティカルケアは、ICU以外の場で必要とされることもある
クリティカルケアは、一般的にICUで行われます。しかし、必ずしもICUで救命を目的としてだけ行われるものではありません。救命を目的とせずとも、集中ケアが必要な場(一般病棟など)も、クリティカルケアを実践する場に該当します。
また、ICUは、管理別・疾患群別など複数の種類に分類されます。高密度な医療を提供するICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患ICU)、三次救急医療の初療室、その他の生命の危機状況にある患者さんへの救命治療を行うHCU(ハイケアユニット)、SCU(脳卒中ケアユニット)などです。
ただし、日本においてはその形態が施設によって種々に異なるのが現状です。日本に多いのは、いわゆる総合ICU(general ICU)、 高度救命救急センターなどが有する三次救命救急ICU(Emergency ICU)です。
ちなみに、総合 ICUは、以下のような入院患者さんを収容対象としています。
●各種の基礎疾患を有し、過大侵襲を伴う大きな手術を受けた患者さん(高齢者、小児を含む)
●呼吸・循環機能低下など、術後合併症の種々のハイリスク因子を有する患者さんの術後管理
●各種慢性疾患(心、肺、腎、肝、脳神経、血液など)の急性増悪、あるいは、これらの基礎疾患に重篤な合併症を伴った患者さんの集中ケア
●病院内で発生した重篤な急変患者に対するすみやかな全身管理
ICU看護師の役割
患者さんの代弁者としてチーム医療の要となる
ICU看護の役割は、大きく2つに分けられます。
①生命の危機状態にある患者さんの病態変化を予測した重篤化の予防
②廃用などの二次的合併症の予防および回復のための早期リハビリテーション看護を管理・実践すること
基盤となるのは「安全に」基本的看護を提供すること
ICUで行われるケアは多岐にわたりますが、実践されるケア内容が、他分野の看護ケアと大きく異なるわけではありません(図2)。基盤となるのは、日常生活にかかわる基本的看護の実践です。

そのうえで、情報収集(全身観察、種々の身体計測、生体モニタリング情報・高密度なバイタルサイン測定の綿密な確認、全身のフィジカルイグザミネーション)を行い、得られた情報をもとに、総合的な臨床推論とアセスメント(全身状態の評価)を行います。そして、それらを根拠とした臨床判断および看護計画と評価、専門的な記録と報告、レコメンデーションを行うわけです。
安全な看護提供のため、患者さんの全体像を知ることが必須
ICUに入室している患者さんは、さまざまな原因からクリティカルな状況に陥っています。しかし、原因がどうであれ、多くの患者さんには共通の生体反応がみられます。その反応を緩和・正常化することが、ICU看護では最も重要です。
クリティカルな状況にある患者さんの全体像を理解するためには、疾患ベースだけの知識では足りません。このレベルで看護過程を展開しても、患者さんの有する問題を解決するための看護実践を提供することはできないのです。
ICU看護とは「急激に生命を脅かす重度の侵襲に急性的にさいなまれた患者さんに生じているさまざまな生体反応を緩和し、現在ある機能を最大限に高めてゆく援助」です。患者さんの心身両面から基本的なアセスメント・臨床推論に基づく臨床判断を行って、タイムリーに必要とされるベストなケアを選択・実践し、早期回復へと導く援助技術だといえます。
そのためには、侵襲のレベルと生体のストレス反応の様相、時期に相応した優先性とバリエーションを理解することが重要です。なぜなら、患者さんの多くは侵襲を受け、そこから離脱・回復するまで続く呼吸・循環・代謝を中心とした複雑かつダイナミックな病態にさらされているからです(→本書p22)。
したがって、ICUに入室している間(超急性期から安定をみるまでの時期)は、①循環調節とそのための呼吸調節、②免疫応答調節、③炎症反応の調節、④エネルギー代謝の調節、⑤ホメオスタシスの維持・調節を前提とした救命的治療と看護を優先すべきです。
その際のフィジカルな看護アプローチの視点は「その時点で、患者さんに不都合となる全身管理と看護ケアを回避すること」となります。
このような看護を実践するために、経験とともにさまざまな能力を育んでいくことが望まれているのです(表1)。
表1 ICU看護師に必要な能力
●短時間内での客観的洞察能力
●細胞レベルでの思考・分析能力
●不測・不慮の事態への迅速な処理能力
●危機的状況を短時間で判断する能力
●日常-非日常を区別する能力
●アサーティブに表現・主張する能力
●対人関係・コミュニケーションの能力
●患者アドボケイトを実践する能力
Check
経験と学習を重ね、リーダーとなったら…
●実践を通じて看護過程の分析・評価を行い、それに基づいて他者に指導する力
●患者さんと家族の意思決定にかかわる問題の調整と支援を行う力
●倫理的問題の調整を行う力
●コンサルティングを行う力
●実践を通じた研究的活動を行う力 なども必要
チーム医療の要となるために、基盤となる知識を身につける
チーム医療は「多種多様な医療者が、各々の高い専門性を尊重し、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、最大限の能力を引き出し合うことで、患者さんの状況に的確に対応した最善の医療を提供する取り組み」4)です。
患者さんの健康を維持・回復するために、必要な多職種の専門家と重要他者(家族またはそれに相当する人的資源)が協働・連携しながら医療サービスを提供します(表2)。

チーム医療の実践が、医療の効率化とアウトカムの改善につながること、種々発生する問題に対する問題解決が円滑にゆくことなどが明らかとなっています。また、医療者による協調的コラボレーションの向上により、①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上なども期待されています。
密なコミュニケーションがカギとなる
多くの場合、チーム医療におけるチームリーダーは医師です。しかし、患者さんにとって最も効果的な治療法や方針を検討するためには、各専門分野でそれぞれの職種が医師と対等な立場で所見を述べ、コミュニケーションを密にすることが必要です。
場面によっては、医師以外の職種がチームリーダーの役割を担うこともありますし、医師と他の医療職の協働に限らず、専門分野の壁を越えた医師同士・看護師同士の協力体制をとる場合もあります。
加えて、純粋な医療者だけでなく、医療情報のデータベース化を担う医療事務スタッフなどがチーム医療のメンバーとなることもあります。
多職種連携には「基盤となる知識」が必要
今後、ICUにおいては、多職種が高度な専門性を発揮し、協働連携するチーム医療の必要性がますます高くなっていくでしょう。
そのためには、関係職種同士がそれぞれの専門性を共有・理解し、互いに尊敬し合いながら、各職種の知識・技術の高度化への取り組みや、ガイドライン・プロトコルなどを活用した治療の標準化の浸透などが必要です。
また、患者さん・家族とともにより質の高い医療を実現するためには、各医療職の高い専門性に委ねつつも、これをチーム医療という活動スタイルを通して再統合していくことが重要となります。
正しい知識をもち「患者さんのための最良」を追求する
ICUは、高密度な治療とケアを提供する場です。看護師は、患者さんの特徴と問題点を十分に認識・理解したうえで看護を実践しなければなりません。
そのためには、真に「患者さんのため」の医療が提供されるよう、患者さんの代弁者としての役割を発揮できるよう、実践者が、患者さんに提供されている医療を正しく牽引できる力が必要です。
その目的を果たすため、ICU看護を提供する看護師には、疾患(disease)の特徴と病態生理(pathologic physiology)、それによる心理も含めた生体反応と回復過程の特徴および治療を含めた対応策を正しく理解することが求められます。
そのうえで、個々のケースにおいて優先的に改善すべき健康問題は何か、また、それに対する優先すべき緩和・改善策は何かを判断・実践することが期待されます。
『新・これならわかるICU看護』の試し読み記事一覧
- 1)ICU研究会・日本麻酔学会:ICU設置基準(厚生労働大臣の定める施設基準特定集中治療室管理の施設基準 保険局長発第8号 ), 1973.
2)今井考祐:集中治療医学の定義.日集中医誌 2009;16:503-504.
3) 道又元裕:クリティカルケア看護の特性.山勢博彰,道又元裕編,系統別看護講座別巻クリティカルケア看護学第2版,医学書院,東京,2020:2-10.
4)厚生労働省:チーム医療の推進について.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf(2026.3.19アクセス).
本書が「看販会看護書大賞2026」にノミネート!

新・これならわかるICU看護
道又元裕 監修
夛田 覚 編
B5・272ページ
定価:3,520円(税込)
照林社
この記事の続きは書籍で! 本書は、「看販会看護書大賞2026」の「フレッシュナース部門」にノミネートされています。投票を受け付け中ですので、ぜひチェックしてみてください。
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LGBTQ+当事者のための医療環境構築に向けた動画教材作成
順天堂大学大学院医学研究科医学教育学・武田裕子教授らの研究グループは青山学院大学、帝京大学と東京都との共同事業で、LGBTQ+(性的少数者)当事者の協力のもと、性自認・性的指向にかかわらず安心して医療機関を受診できる環境構築のための動画教材を作成しました1,2。
誰ひとり取り残さない、安心して受診できる環境構築をめざす
LGBTQ+の人々を対象とした調査では、受診時の困難を経験した人が多いことや、それによる体調の悪化や生命への影響などが報告されている一方、医療従事者からも「対応がわからない」「傷つけてしまうのではないかと不安」といった意見が挙がっていました1。こうした状況に鑑み、医療従事者のほか、この領域について学びたい人が誰でも視聴できる動画教材が作成されました。
教材では、性自認・性的指向に関する基礎知識や、「同性パートナーのいる女性の外来受診と入院例」「性別違和を有する人の定期健康診断とその後の外来受診の例」について順天堂医院の取り組みをふまえて解説しています1。
- 1.順天堂大学ホームページ:性自認・性的指向にかかわらず安心して受診できる医療環境の構築 誰でも活用できる動画教材を作成―順天堂大学・青山学院大学・帝京大学と東京都との共同事業による成果 ―.
https://www.juntendo.ac.jp/news/26446.html(2026.4.20アクセス)
2.順天堂大学:「令和7年度 東京都と大学との共同事業」動画教材へのリンク申し込みフォーム.
https://forms.gle/FRmX5A6CgBMuJW7v5(2026.4.20アクセス)
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高齢者の週1回持効型溶解インスリン製剤使用の推奨事項が改訂
日本糖尿病学会と日本老年医学会による合同委員会は3月31日、「高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation」の改訂版を公開しました1。
低血糖の重篤化・遷延化をふまえた対応を追記
本Recommendationは、週1回持効型インスリン製剤(商品名:アウィクリ®注、一般名:インスリンイコデク)の使用上の留意点をまとめたものです。
本剤は、少ない注射回数で持続的なインスリン作用をもたらすことで、特に自己注射が困難な高齢者において、家族や医療従事者による週1回の投与で血糖管理ができるようになることが期待されています1。一方、投与回数の少なさにより投与調節の柔軟性に制限があり、低血糖が重篤化・遷延化するリスクも指摘されています1。
今回は、2025年1月30日~7月29日の市販後調査によって報告された重篤な低血糖の事例をふまえた留意点・対応が追記されました(表)2,3。
表 週1回持効型インスリン製剤使用上の留意事項
1.適切な治療目標を設定する
2.適切なタイミングで血糖モニタリングを実施する
3.訪問看護や介護環境では慎重に計画する
4.感染症、術前の血糖管理を適宜実施する
5.低血糖予防の注意事項と対応について患者指導などを実施する
6.重篤な低血糖への対応を考慮する
・ 本剤による重症低血糖は遷延しうるため、投与量や患者背景に応じて、ブドウ糖持続静注、入院や専門医へのコンサルテーションを考慮する
・ 切り替え/用量調節の際、シックデイや血糖変動が大きいと思われる場合は、頻回の血糖測定や持続血糖モニタリングも考慮される(文献2、3を参考に作成)
- 1.高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会:高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation.
https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/icodec.pdf(2026.4.20アクセス)
2.日本老年医学会,日本糖尿病学会編著,高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会:高齢者糖尿病診療ガイドライン2023.南江堂,東京,2023.
3.綿田裕孝監修:アウィクリ®注 投与ガイド.ノボ ノルディスク ファーマ,東京,2026.
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新たな心臓移植希望者(レシピエント)選択基準「Status1A」
3月23日、日本循環器学会・日本心臓移植学会は2学会合同で「心臓移植Status1A制度」の開始にあたり、制度改正について発表しました¹。
優先する選定基準として「Status1A」が設けられた
心臓移植の「待機リスト」に登録している心臓移植希望者において、新たな選定基準として「Status1A」が設けられ、4月1日から運用されています(表)² 。
表 「Status1A」を含む 新しい心臓移植希望患者選択基準
Status1A
緊急に心臓移植を施行しないと短期間に死亡が予測される病態や疾患群で、予測余命1か月以内の60歳未満の者Status1
Status1A以外で次の(ア)~(エ)までのいずれか1つ以上に該当する状態
(ア)補助人工心臓を装着中の状態
(イ)大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)、セントラル体外式膜型人工肺(ECMO)、又は補助循環用ポンプカテーテル
(ウ)人工呼吸管理を受けている状態
(エ) カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与を受けている状態*カテコラミン等の強心薬にはフォスフォディエステラーゼ阻害薬なども含まれる
Status2
待機中の患者で、上記以外の状態*ドナーが18歳以上の場合
*同一Status内でも、年齢やABO式血液型の一致/適合などを考慮して優先度を考慮する
(文献2を参考に作成)
従来の心臓移植希望者の選定基準は優先度順にStatus1~3で、同じStatus内で親族への優先提供の意思や治療等の状況などの諸条件が同一の希望者が複数いる場合、待機期間が長い希望者を優先していました。ただ、Status1の希望者でもよりよいドナー条件を求めて移植を辞退することなどがあり、より緊急度の高い希望者を早期にマッチングするシステムが求められていました¹。
今回運用が始まった制度では、「Status1A」として「緊急に心臓移植を施行しないと短期間に死亡が予測される病態や疾患群で、予測余命1か月以内の60歳未満の者」が定められ、待機中死亡率の低減や、LVAD*に適応がないために移植登録をあきらめていた患者に移植の機会ができることなどが効果として期待されています¹。
*【LVAD】left vantricular assist device:左室補助人工心臓。心臓移植を待つ間などに、心機能を補助するために患者自身の心臓に装着する装置。
- 1.日本循環器学会・日本心臓移植学会:心臓移植Status 1A制度開始にあたっての発表.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2026/03/status1a_media_01.pdf(2026.4.20アクセス)
2.厚生労働省:心臓移植希望者(レシピエント)選択基準.
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001526470.pdf(2026.4.20アクセス)
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【連載まとめ】がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK
『がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版』の試し読み記事を公開!がん薬物療法のレジメンの見方・読み方や、副作用としてみられる末梢神経障害と味覚障害についてわかりやすく解説します。
【第1回】レジメンの見方とは?抗がん薬・副作用の基礎知識
〈目次〉
●レジメンの見方
・レジメンの名称
・抗がん薬による副作用リスクの確認
・その他のチェックポイント
●レジメンに含まれる抗がん薬の理解
・レジメンに含まれる抗がん薬の種類
●副作用の理解
・副作用の発現頻度
・発現頻度とGradeの考え方
・発現時期
【第2回】がん薬物療法の副作用対策:末梢神経障害の症状、アセスメント、ケアのポイント
〈目次〉
●抗がん薬による末梢神経障害のしくみ
1 感覚神経の障害(急性)
2 運動神経の障害(慢性)
3 自律神経の障害
●末梢神経障害の症状を起こしやすい薬剤
●末梢神経障害のアセスメント
●末梢神経障害のケア
1 症状の予防·緩和
2 二次障害の防止(感覚障害に伴うリスク)
3 精神的な支援(症状がよくならないことへの不安)
●末梢神経障害の患者説明・セルフケア支援
【第3回】がん薬物療法の副作用対策:味覚障害の症状、アセスメント、ケアのポイント
〈目次〉
●抗がん薬による味覚障害のしくみ
●味覚障害を起こしやすい薬剤
●味覚障害の観察・アセスメント
●味覚障害の患者指導・セルフケア支援
そのほかの連載はこちら
映画『急に具合が悪くなる』往復書簡の世界を描くために取り入れたユマニチュード
6月19日(金)公開の映画『急に具合が悪くなる』。パリの介護施設の施設長とがん闘病中の演出家、同じ名前の響きをもつ女性2人が偶然出会い、絆を深めていく物語です。映画化にあたり、ユマニチュードが取り入れられた背景についても紹介します。
カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞をW受賞
第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、主演のヴィルジニー・エフィラさんと岡本多緒さんが最優秀女優賞を受賞した、『急に具合が悪くなる』。『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞®国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督の最新作です。
原作は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・宮野真生子さんと、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂さんが交わした、20通の往復書簡からなる同名書籍。映画では主人公をフランス人と日本人に置き換え、原作のエッセンスをすくいあげた新しい物語を展開しています。

理想の介護を追求するマリーと、余命半年の舞台演出家・真理
パリ郊外の介護施設「自由の庭」のディレクターとして、理想の介護を探求するマリー=ルー(演:ヴィルジニー・エフィラさん)。知覚・感情・言語による包括的なケア技法である「ユマニチュード*」を浸透させようと奮闘しています。ユマニチュードの研修を推進するものの、人手不足を理由に現場からは反発が起こります。
そんなある日、マリー=ルーは偶然出会った日本人の舞台演出家・森崎真理(演:岡本多緒さん)の公演を観に行くことに。上演後の質疑応答で、マリー=ルーの問いかけに対し、真理は進行がんで余命半年であることを伝えます。
劇場の外で待ち合わせ、日本語とフランス語を交えながらお互いのことを伝え合う2人。少子高齢化や資本主義といった社会の構造、ユマニチュード、死について……。会話は止まらず、夜通し語り合い、お互いがお互いの唯一無二の友人となります。
2人の絆が深まっていくなか、真理の病は進行していき――。彼女たちがともに過ごし、魂を通わせたひとときが、3時間16分の上映時間に凝縮されています。
ユマニチュード
フランスで生まれた、知覚・感情・言語による包括的なケアの哲学・技法。ケアを受ける人を「対象」ではなく、「人間」としてとらえる。「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの要素を柱とし、複数を組み合わせながらケアを行う。さらに、すべてのケアを1つの物語のように一連の手順で実施する。
*ユマニチュードについての詳細はこちら

ベテラン看護師とのケアに対する価値観の違い
意見の相違からマリー=ルーと激しく対立するのが、ベテラン看護師のソフィ(演:マリー・ビュネルさん)。年3回ユマニチュードの研修に人員を割くことを、「現場の現実と合わない」と批判します。また、入居者の「歩く」行為を重視する方針にも、転倒リスクの点から疑問を呈します。
ケアに対する価値観が異なるものの、現実的なプロフェッショナルとして描かれるソフィ。真理との出会いを果たしたのち、マリー=ルーはソフィに歩み寄ることを決断します。さらに、理想を追い求めることに対する彼女の考えも明らかになり……。
他者を理解することの難しさ、それでもあきらめずに対話をした先にある喜びを映し出しています。
往復書簡を映像化するために盛り込まれたユマニチュードと演劇
往復書簡として構成された原作を映画化するにあたり、濱口監督は「距離」が必要だと考えたとのこと。その「距離」をつなぐ要素として思い当たったのが、以前から興味があったというユマニチュードでした。
濱口監督は、「この技法がめざす、高齢者個々の人生を活性化させようとする態度は、お2人の往復書簡ともつながるような印象があったからです。(中略)『介護』という行為が、単に抽象的に論をやり取りするだけでない『アクション』を映画にもたらすだろうとも考え、ここでようやく『急に具合が悪くなる』を映画にするうえでの筋道が立ったような気がしました」と語っています。
ユマニチュードに加えて濱口監督が盛り込んだのが、真理の演劇です。真理が手がけた公演「Da vicino nessuno è normale. 近づいてみれば、誰もまともな者はいない」は、イタリアで精神病院がどのように廃絶していったかをテーマにした物語。長塚京三さん演じる清宮吾朗が主演俳優として登場します。

主人公は精神病院でディレクターを務め、イタリア精神医療改革の中心的存在となったフランコ・バザーリア。文化人類学者・松嶋健さんの『プシコ ナウティカ―イタリア精神医療の人類学』(世界思想社)を参考とし、濱口監督がオリジナル戯曲を書き上げました。
同書に記された「〈人間〉に対するアニミズム」について、濱口監督は「『アニミズム』という言葉は、本来は魂を持たない存在に魂を感じることを指すわけですが、何よりも人間が人間を『魂をもった存在』として扱うことができていない、それをさせないのがこの社会なのではないか。そのことをこれほど端的に指摘した言葉はないように思われ、それを問題にする姿勢は『急に具合が悪くなる』とも響き合うように感じました」と話します。

「誰が精神病院を解体できると思った?重要なのは不可能が可能になることを示したことだ」との吾朗の言葉。困難な状況のなかでも希望を見いだしたくなる、そんな思いに寄り添ってくれます。
それぞれの方法で生と死を見つめながら、ともに過ごせる短い時間のなかで交流を深めていくマリー=ルーと真理。偶然が導いた2人の結びつきを、静けさをたたえた映像のなかで丁寧に描き出しています。
『急に具合が悪くなる』
6月19日(金)TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー出演:ヴィルジニー・エフィラ 岡本多緒 長塚京三 黒崎煌代
監督:濱口竜介
原作:宮野真生子・磯野真穂著『急に具合が悪くなる』(晶文社)
製作:Cinéfrance Studios, オフィス・シロウズ, ビターズ・エンド, Heimatfilm, Tarantula
配給:ビターズ・エンド
提供:Soudain JPN Partners フランス=日本=ドイツ=ベルギー合作
映倫:G
© 2026 Cinéfrance Studios – Arte France Cinéma – Office Shirous – Bitters End – Heimatfilm – Tarantula – Gapbusters – Same Player – Soudain JPN Partners

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『風、薫る』医事考証に聞く、医療描写のリアルと明治のナース
NHK連続テレビ小説『風、薫る』の医事考証を担当する冨田泰彦先生にインタビュー。手術シーンや医療器具の再現へのこだわり、明治期のナースの姿、今後の医療的見どころなど、詳しく語っていただきました。
話を聞いたのは
冨田泰彦先生
杏林大学 医学部医学教育学 特任教授、同付属病院 総合研修センター 副センター長杏林大学医学部脳神経外科、救急医学(高度救命救急センター)にて診療・研究・教育に従事。日本医学史学会・医学史教育に関する委員会・委員。漫画およびドラマ『JIN-仁-』(集英社/TBS)の医療監修をきっかけに、NHK大河ドラマ『龍馬伝』『どうする家康』、NHK連続テレビ小説『らんまん』『虎に翼』『あんぱん』など、多数のドラマや漫画の医療監修・医事考証・医事指導を担当。
ワイシャツにベスト、今井教授の手術シーンはどこまで本当?
――「医事考証」とはどのような役割なのでしょうか。
『風、薫る』の医事考証では脚本の第1稿から目を通し、医療描写が医学的・時代的に合っているかを確認します。問題ない場合は「○」、専門家が見ると違和感があるものは「△」、絶対だめなものは「×」という3段階に分けています。例えば、手術をする病気として一般の視聴者にもなじみのある虫垂炎が脚本に書かれていましたが、明治期は手術適応ではありませんでした。なので、「△」をつけて「違う病気にしたほうがいいです」といったコメントをして調整してもらう、そうしたことの積み重ねです。
――劇中で今井教授(演・古川雄大さん)がワイシャツ、ベストという日常着のままで手術をするシーンがありました。時代設定は1888(明治21)年とのことですが、当時は手術着や手袋、マスクを着用せずに手術をしていたのでしょうか。
手術について、明治20年代までは写真の史料があまりなく、イラストや文章で確認をしました。『東京大学医学部百年史』には、お雇い外国人でドイツ人外科医のユリウス・スクリバが、シャツの袖をまくり、チョッキの上に革の前掛けをして手術を行ったと書かれています。これになぞらえて、今井教授の手術シーンはあのスタイルになりました。明治20年代以降、だんだんと割烹着のような手術着が広まっていきます。

世界の外科医の手袋について調べた論文によると、1890(明治23)年では着用率は5%程度。1900(明治33)年で28%です。100%になるのは1950(昭和25)年とのことでした。
ちなみに、手術用のゴム手袋は1889(明治22)年にアメリカで開発されました。ジョンズ・ホプキンズ大学の外科医で、乳がんの術式の名前にもなっているハルステッドが、タイヤメーカーに開発を依頼。なぜゴム手袋をつくろうとしたかというと、手術室看護師の婚約者の手が消毒薬で荒れていたからだそうです。人間味のあるお話ですよね。
マスクについては、明治30年ごろから有効性が提唱され始めましたが、社会的に普及したのは1918(大正7)年のスペイン風邪がきっかけ。日本で使い捨てのマスクが一般的になったのは1960年代です。マスクの歴史については、北多摩薬剤師会のサイトに詳しく紹介されています。
手術シーンで横から噴射しているのは、消毒薬の石炭酸(フェノール)です。当時はまさに、細菌学が発展していく時期。それ以前は、ナイチンゲールが悪い空気(ミアズマ)が病気の原因だから換気が大切、ということを唱えていたように、社会的にも医学的にも、細菌という定義がきちんと理解されていなかったんです。
1870年代から1890年代にかけて、ドイツのコッホや北里柴三郎、志賀潔といった細菌学者らの発見により、特定の細菌が病気の原因であると認識されていきました。

明治期の医療カタログを参考に医療器具を再現
――手術シーンに登場した医療器具は、どのように準備されたのでしょうか。
当時の医療器具にはどのようなものがあったのか、調べるのには本当に苦労しましたね。古書店で明治20年ごろの医療カタログを手に入れ、手術シーンの参考になるものをチェックして、打ち合わせの際に医療美術担当の方に用意できるかを相談しました。当時は海外から輸入された手術器具が多く、徐々に日本製のものを作るようになっていった時代です。

手術器具は、石炭酸の消毒薬に漬け置きをして消毒していたようです。煮沸消毒はもう少し後、1892(明治25)年にはシンメルブッシュ式の蒸気滅菌器が日本に導入されたことがわかっています。その後、蒸気滅菌器が普及すると、石炭酸のスプレーは使われなくなりました。
乳がん手術などのシーンで出てきた麻酔の方法は、開放点滴法といいます。クロロフォルムなどの液体麻酔薬を滴下したガーゼでマスクを覆って吸入させる方法です。昭和の半ばくらいまで、この方法で麻酔を行っていたことが書かれた文献もあります。

ドイツ留学の設定をもとに「メス」は「メッサー」に
――明治期、看護ではイギリス式が取り入れられましたが、医学ではドイツ式がリードしていた印象です。『風、薫る』の医事考証において、これまでの作品と異なる部分はありましたか。
明治政府が、北里柴三郎や森鴎外らをドイツに留学させたように、日本ではドイツ医学が主流だった面はあります。ただ、ドイツ式はどちらかというと研究がメインであり、一方でイギリス式は実臨床型だったのです。東京慈恵会医科大学を立ち上げた高木兼寛はイギリスに留学しました。ドイツ派とイギリス派の対立では、「脚気論争」が有名ですね。脚気の原因としてドイツ派は細菌説、イギリス派は栄養説を唱えました。
『風、薫る』では学術研究的な話が主流ではないため、ドイツ式、イギリス式を意識しているつもりはありませんが、今井教授はドイツに留学をしていた設定になっています。執刀シーンで、最初は脚本に「メス」と書いてあったのですが、ドイツ語だと「メッサー」なんですよね。ドイツ語監修の方に確認していただいて、OKなら「メッサー」を使ってください、とお伝えしました。そうした手術時のセリフで、ドイツ式を表現したというところはあります。
――仲間由紀恵さん演じる和泉千佳子が、乳がんを告知されるシーンがありました。当時、実際にがんの告知は行われていたのでしょうか。
がんの告知についてはほぼ史料がないものの、岩倉具視が日本で初めてがん告知をされたのではとのエピソードがあります。昭和期に胃がんを胃潰瘍として手術する、ということがあったようですが、胸を切除する乳がんは告知せざるを得ないだろうと考えました。
当時、乳がんがどの程度治るのかを調べたところ、東京大学では1890(明治23)年から33年間で乳がんのデータが86例あり、全治したのは20例で23%。劇中で言われていた「成功率2割」はここからきている数字ですね。

りんや直美のもつ、バイタリティーと観察力
――明治期のナースが主役という点で、『風、薫る』の見どころを教えてください。
私の知る限り、看護師の最初を描いたドラマというのはあまり例がなく、とても価値のある作品だと思います。当時は、梅岡看護婦養成所のモデルとなった桜井女学校附属看護婦養成所や、有志共立東京病院看護婦教育所など、いくつかの学校ができ始めたばかりのころ。教育をする学校と学ぶ生徒、お互いにとってハラハラ、ドキドキの体験ですよね。りんと直美のモチーフとなった大関和さん、鈴木雅さんのような、フロンティア的存在の人たちのバイタリティーはすごいと思います。
現代の看護師が明治期の医療現場に行ったら、さまざまな医療機器がないことにまず驚くと思います。例えば、血圧計もレントゲンも、点滴もまだ普及していません。衛生観念についても先ほどお話ししたとおり、現代の認識とまったく違います。
とはいえ、看護師の視聴者の方から「看護学校時代にシーツ交換で不合格になったのを思い出した」といった感想があるように、自分の若いころを振り返る機会になるのではないでしょうか。

――もしご自身が明治期の医師ならば、ナースにどのような資質・スキルを求めますか?
やはり報告・連絡・相談と、ドラマでも登場した観察力、“Observation(オブザベーション)”ですね。よく患者さんを観察して変化に気づき、それを評価して、医師に伝え、治療に活かしていくことが大事な基本ですから。
りんさんも観察力がありますが、直美さんは周囲をよく見て、知恵を使っていますよね。ちょっと悪く見えるかもしれませんが、いろいろなことに気づいて鋭い。2人合わせると、とてもよい看護婦さんになると思います。
感染症に立ち向かう今後の展開に注目を
――医療の観点から、『風、薫る』の今後の見どころを教えてください。
過渡期ですので、これから看護婦の活躍の場面が変化していきます。ドラマ冒頭でコレラの話がありましたが、コロナのパンデミックを経験したからこそ、ドラマで描けることもあると思います。
明治期にコレラが起こったとき、防疫のために井戸に石灰をまいて消毒していた若い医師に対し、「毒をまいている」との噂が広がり、住民たちが襲って殺してしまうという事件が起きました。“朝ドラ”という制約があるとは思いますが、こうした史実に基づき、少し辛辣に描いてもいいのではという気持ちが個人的にはありますね。
――エンタメとして、医療を描くことの魅力とは?
医療監修・医事考証は、単に医学的なファクトチェックだけではなく、その作品にリアリティを盛り込むことによって、受け手の関心を高められます。ある意味、医療の情報発信のような面があるんです。多くの方に医療について考えていただく機会をつくることには、大きな意義があると思います。
作品を見て「医師になりたい」「看護師になりたい」と思ってもらえるのは、一番うれしいですね。勤務先の大学にも、私がこれまでかかわった作品に影響を受けたという学生さんがいました。
私の医療監修・医事考証としての原点である『JIN-仁-』の原作者の村上もとか先生から、「こうした作品はやはり見てくれる人が『へー!』と思ってくれなきゃダメなので、その『へー!』のためのアイディアをできるだけ教えてほしい」と言われたことが、とても印象深いです。
ドラマを見て、「えー!」とか「へー!」という感嘆詞を口にした経験は記憶に残り、さまざまなことを考えるきっかけになると思います。そういう意味では、『風、薫る』において、ショッキングに見えても、今までにないものを提供することには意義があるのではと感じます。
『風、薫る』放送情報
NHK総合: 毎週月~土曜 午前8時~8時15分
※土曜は1週間振り返り。
NHK BS:毎週月~金曜 午前7時30分~7時45分
NHK BSプレミアム4K: 毎週月~金曜 午前7時30分~7時45分※NHK ONEで同時・見逃し配信予定。
(写真提供:NHK)
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Cocco mina 呼吸器【おすすめBOOK】
看護師におすすめの本をピックアップ。今回は、呼吸器病棟の新人ナースに役立つ『Cocco mina 呼吸器』です。
呼吸器の基本をまとめたお守り本
呼吸器病棟で働き始めるナースのお守り本として、呼吸器の全体像、よくみる状況別対応、主な疾患とその看護、よく行う検査や治療、ケアなどにおいて、現場で必ずやるべきことや見落としがちな観察点、専門知識をまとめたミニブック。
また、よく使うスケールや薬剤についても、ポイントをおさえて解説する。

Cocco mina 呼吸器
公立陶生病院 呼吸器センター 編著
照林社
文庫判
定価:2,200円(税込)
詳細・購入・試し読みはこちら
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妊娠中の感染予防をマンガで学べる冊子:病院などに寄贈するキャンペーンを実施
妊娠中の感染予防についてマンガやイラストで学べる冊子をNPO法人トーチの会が作成。この冊子を医療機関や教育機関に寄贈するキャンペーンが実施されています。
妊婦と赤ちゃんを守るために注意したい場面を解説
NPO法人トーチの会(http://toxo-cmv.org)は、先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症の患者会。“トーチ”は、経胎盤感染によって赤ちゃんに重篤な臓器・神経・感覚器障害をきたす病原体の頭文字を取って名付けられたTORCH(トーチ)症候群に由来しています。
TはToxoplasma gondii(トキソプラズマ原虫)、OはOthers(その他)としてTreponema pallidum(梅毒トレポネーマ)などを含み、RはRubella virus(風疹ウイルス)、CはCytomegalovirus(サイトメガロウイルス:CMV)、そしてHはHerpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス:HSV)を指します。
同会はTORCH症候群のうち、トキソプラズマとサイトメガロウイルス(CMV)による先天性感染症をターゲットとしています。先天性トキソプラズマ症と先天性サイトメガロウイルス感染症は、いずれも感染時の母体の症状が少なく、赤ちゃんに症状が現れていなければ見つけにくい病気です。まだワクチンはありません。症状が出ないこともありますが、流産や死産となったり、先天性トキソプラズマ症は脳や眼、先天性サイトメガロウイルス感染症は脳や聴覚などに重篤な障害が起こる場合もあります。
同会が手がけた小冊子が『マンガとイラストで学ぶ妊娠中の感染予防』(サウザンブックス社)。先天性トキソプラズマ症と先天性サイトメガロウイルス感染症をはじめとした、母子感染症の予防方法を学べる本です。

『マンガとイラストで学ぶ妊娠中の感染予防』
制作:NPO法人トーチの会(先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会)
監修:森内浩幸(国立大学法人長崎大学 高度感染症研究センター センター長・小児科医師)
マンガ・イラスト:山中正大
発行:サウザンブックス社
A5判、36ページ、定価:1,100円(税込)

子どもの世話をするとき、ペットと触れ合うとき、外食するときなど、妊娠中の感染に注意が必要な場面をピックアップ。妊婦と赤ちゃんを守るため、周囲の人が知っておきたい知識をわかりやすく解説しています。
マンガを読みながら、イラストを見ながら、自然と知識を身につけられる点が特徴。“妊娠中の感染予防11か条”のほか、当事者の体験談や、監修の医師による解説も掲載されています。
啓発・予防教育のため医療機関や教育機関に寄贈
NPO法人トーチの会では、先天性トキソプラズマ症と先天性サイトメガロウイルス感染症の啓発・予防教育を目的として、『マンガとイラストで学ぶ妊娠中の感染予防』を医療機関や教育機関に届けるキャンペーンを実施しています。
病院の待合室や図書コーナーに設置する、両親学級で使用する、スタッフに教材として配るなど、母子感染症予防のために活用してほしいとのこと。
申し込み方法など、キャンペーンの概要は下記参照。
キャンペーン概要
実施期間
2026年12月末まで(寄贈冊数の上限に達し次第終了)申し込み対象
医療機関や教育機関で、先天性トキソプラズマ症とサイトメガロウイルス感染症の啓発・予防教育を目的として、冊子を活用・配布する人申し込み冊数
1施設あたり10冊以上30冊まで費用
無料(小冊子の代金・送料は不要)
申し込み方法
下記フォームより申し込みを。
https://docs.google.com/forms/d/1zDzieT0t6j7HoE2N6WkPh3SoD1hlEdF_h5_OJOGngeI/
問い合わせ先
『マンガとイラストで学ぶ妊娠中の感染予防寄贈プロジェクト事務局(株式会社サウザンブック社内)
メール:info@thousandsofbooks.jp
ホームページ:http://thousandsofbooks.jp
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現役ナースは朝ドラ『風、薫る』をどう見ている?好きなシーンや見どころを調査
明治期に看護の道を切り拓いた2人のナースが主人公の、NHK連続テレビ小説『風、薫る』。現役看護師は、どんな視点でドラマを楽しんでいるのでしょうか。アンケートをもとに、印象的なシーンや好きな登場人物、見どころなどを紹介します。
※エキスパートナースモニターアンケート、エキスパートナースwebアンケート(2026年5月実施、n=55)より集計。
※本記事では当時の時代背景をかんがみて、歴史的な表現として「看護婦」という名称を使用しています。
NHK連続テレビ小説『風、薫る』
栃木県那須地域の町で元家老の娘として育ち、若くしてシングルマザーになった一ノ瀬りん(演・見上愛さん)と、生まれてすぐに親に捨てられ、教会で保護されて育った大家直美(演・上坂樹里さん)。看護婦養成所に通い、手探りで始まった看護教育を受けながら、「看護とは?」「患者と向き合うとは?」ということを考えていく2人。明治の新しい風を感じながら、刻々と変わり続ける社会のなかで、“自分らしく幸せに生きること”を模索していく。
『風、薫る』公式サイトはこちら(写真提供:NHK)
働くナースの『風、薫る』視聴スタイル
『風、薫る』の視聴スタイルを聞いてみたところ、もっとも多かったのは「録画」。「仕事から帰ってきたから、家族と一緒に見ている」(ナース歴6~10年)「翌日の朝6:00ごろに、子どもの世話をしながら見る」(ナース歴21年以上)といったコメントが寄せられました。
続いて集まったのは、「7:30からのNHK BS放送」を見ているとの声。朝ドラは「NHK総合で8:00から」というイメージが強いかもしれませんが、じつはその前にBSで放送されているのです。「小学校1年生の娘と見ています」(ナース歴6~10年)という人もいました。
職場で見ている場合は、「待合室で流れているのをたまに見ている」(ナース歴16~20年)「休憩時間の昼帯に流れているのを見たことがある」(ナース歴11~15年)「夜勤明け、患者さんが食事をとるホールでテレビがついているときに見る」(ナース歴6~10年)と、忙しい合間を縫っての視聴となっているようです。
そのほか、「NHK ONEの配信」を活用している人も。1週間分が無料で見逃し配信されているので、スマートフォンなどで気軽に見たいときに便利です。また、「土曜日のダイジェスト版」を見ているという人もいました。
自分の生活スタイルに合った形で視聴できる点が、ドラマを楽しみ続けやすい理由の1つといえそうです。
『風、薫る』の“気になった”“印象的だった”シーンはここ!
りんと直美が出会うまでのエピソードや、看護婦養成所で学んだ日々、帝都医科大学附属病院での看護実習など……。これまでたくさんの見どころがありましたね。
気になった、印象的だったシーンを聞いてみると、ナースならではの視点を感じさせる回答が集まりました。
りんの父との別れ
●コレラにかかったりんのお父さん(演・北村一輝さん)が自ら納屋に行き、隔離体制に入ったシーン。感染症の正しい対応が周知されていなかった時代、自分で隔離体制に入ることが印象的でした。療養環境は悪いものの、接触しない方法をとったのは現代にも通用する考えなので、お父さんの行動はすばらしかったと思います。(ナース歴6~10年)
●りんが父を亡くしたシーンは見ていて苦しかったですが、おり鶴を渡したり、歌を歌ったりと、自分の子どもがもし同じ場面でそのようにかかわってくれたらうれしいだろうなと思いました。(ナース歴21年以上)

看護婦養成所での学び
●「看護」とは、病気ではなく人をみる、観察することだと主人公たちが気づくシーンが印象的です。自分自身も学生時代に問われ続けた問いで、今もまだ課題が続いているような感覚になります。看護観のレポート、つらかったなぁ……とか、とにかく学生時代を思い出す!(ナース歴6~10年)
●シーツ交換のシーン。角を三角に折る、マットレスに敷き込むときは手のひらを下に向ける。基本に忠実でした。(ナース歴11~15年)
●バーンズ先生(演・エマ・ハワードさん)がりんに、患者さんにとってのゴールは治ることであり、 患者からの感謝をほしがるとは欲深い、と言うシーン。(ナース歴6~10年)

帝都医科大学附属病院での実習
●りんが患者の園部さん(演・野添義弘さん)とコミュニケーションをうまくとれなかった場面を見て、自分の実習を思い出しました。実習後、看護師は患者さんのそばにいないと看護ができないんだなと痛感。りんが渡した花の花瓶の水を園部さんが交換していたと知ったときには、受け入れられていたことがわかり、見ていて安堵しました。(ナース歴21年以上)
●今井教授(演・古川雄大さん)の手術シーン。よくわからないマスクを被せて麻酔をしていました。手袋はなし、ワイシャツで手術。今では考えられません。(ナース歴21年以上)
●りんが看護学生となり、看護実習が始まったころから方言(栃木ことば)を話さなくなっているところ。彼女自身が意識してそうしているのか、それとも、自然と東京の発音や話し方になっていったのか……。(ナース歴6~10年)
今井教授の手術シーンについてはこちらの記事をチェック↓
ナースが選ぶ!『風、薫る』の好きな登場人物
好きな登場人物を尋ねたところ、やはり主人公のりん、直美という意見が多数。「お互いのことをわかり合っているりんと直美のやりとりが好き」(ナース歴6~10年)「ひたむきにがんばる2人の姿がいい」(ナース歴6~10年)など、「2人合わせて好き」との声も目立ちました。
主人公2人の次に人気だったのが、バーンズ先生。印象的なセリフの数々に、看護学生時代を思い出す人が多かったようです。
下記のほか、島田健次郎(演・佐野晶哉さん)、吉江善作(演・原田泰造さん)、環(演・英茉さん、宮島るかさん)、松井エイ(演・玄理さん)の名前も挙がりました。
皆さんの“推しポイント”をふまえて、今後の彼らの活躍に注目してみてください!
りん

●1つひとつのことがらをしっかり考えて行動し、患者に寄り添う姿勢がナースに向いている! まだ看護を学ぶ前、通りすがりの子どもが嘔吐をしたら、すぐに駆け寄って看護していたのが印象的です。(ナース歴21年以上)
●りんの「だいじ?」は愛おしさや慈しみがあふれ出る感じがして、「大丈夫?」と言われるよりも胸がほっこりします。(ナース歴21年以上)
直美

●実習中の様子から、彼女の割り切った性格が看護婦の仕事に向いていると思いました。(ナース歴6~10年)
●お局に負けない感じがいい!(ナース歴11~15年)
●鹿鳴館で働き始めて炊き出しをした際、吉江先生に遭遇し他人扱いするも、その後教会を訪れてそのときの態度を謝るところ。素直でマナーはしっかりしていると思いました。(ナース歴6~10年)
バーンズ先生

●バーンズ先生の「This is not nursing(これは看護ではありません)」というセリフ。学生時代のシーツ交換の試験のとき「患者に声かけはしましたか? 患者の状態をみましたか?」と全体講評があったとき、誰も何も答えられなかったあの日を思い出しました。「看護」とは何か、本当に難しいなと思います。(ナース歴6~10年)
●「あなたが病に倒れてしまえば、その患者はあなたの看護を受けられません。あなたたちの手は家族の数百、数千倍の人を助ける手なんです」というセリフがすてきでした。(ナース歴16~20年)
●私が教わった基礎看護の教授と重なる部分があって好きです。私の看護をつくってくれた人です。(ナース歴6~10年)
●「看護は見返りを求めてするものではありません」というセリフが印象に残っています。(ナース歴6~10年)
その他
一ノ瀬美津(演・水野美紀さん)
●外国人の前で琴を奏でるシーンが好き。小さいころからの習い事が身を救うのだと学べたような気がしました。(ナース歴21年以上)
工藤トメ(演・原嶋 凜さん)
●リンゴが送られてきたことから、青森にいる家族が故郷から応援していることが伝わったので、応援したくなりました。(ナース歴21年以上)
大家トヨ(演・松金よね子さん)
●存在感がいいです!(ナース歴11~15年)
もし自分が『風、薫る』のなかのナースだったら?
患者さんへの接し方や仲間とのかかわり方など、「自分がりんや直美だったらこうする!」と想像しながら見るのも楽しみ方の1つ。りんが担当になった患者の園部さんへの対応や、看護婦見習いの仲間たちとの交流について、コメントが寄せられました。

●患者の園部さんに冷たくされるりんについて。いい反応がなくても、専門職としての知識と技術を武器にやるべきことを全うします。時に沈黙が必要なこともある、と思っています。笑顔だけがいいわけではなく、会話だけがすべてではないので。(ナース歴6~10年)
●自分はどちらかというとりん寄りなので、園部さんとコミュニケーションがとれなかったことを悔やんでいる姿に共感しました。私の学生時代なら、同じことをしていたと思います。(ナース歴6~10年)
●看病婦たちの行動の根拠を聞いてみます。また、看護婦の仕事について、看病婦との共有の場をつくると思います。(ナース歴6~10年)
●実習中、つらいときは今日のできごとを吐き出して、最後は「今日も1日よくがんばった! また明日ね。あと○日!」と前向きな言葉で締めくくって別れて家に帰っていました。りんちゃんみたいな寄宿舎だったら、夜中ずっとしゃべってレポートどころじゃなかったかも(笑)。(ナース歴6~10年)
●看護婦見習いの仲間みんなと一緒に、寮で勉強会をしたい!(ナース歴21年以上)
りんや直美に伝えたい! 看護のコツやメッセージ
看護を学び始め、さまざまな試練に直面するりんと直美。患者さんとのかかわり方に悩みながらも、ひたむきにナースをめざす2人に向けて、届けたいメッセージを聞いてみました。

●まじめに、実直に向き合えば必ず何かが得られる! と、私は思っています。いいことばかりじゃないし、感謝されることばかりではないけれど、患者さんが笑顔になったり、元気になったり、穏やかな死を迎えたとき、看護の意味に気づけて自分自身も成長できる気がします。あなたたちがつくった看護を、今の私たちが引き継いでいます。がんばれ!(ナース歴6~10年)
●自分が悪戦苦闘しているとき、患者さんと楽しそうに過ごす同期はまぶしく見えるもの。“私は○○したい”じゃなくて、“患者さんがどうあるべきか”。患者さんを主語で考えてみてね。あなたは伴走者です。(ナース歴6~10年)
●学生のころに読んでもわからなかった『看護覚え書』が、認定看護師になって読み直すとすごく説得力があることに驚きました。看護とは患者さんをみること。病気以外の話題もたくさん聞いて、記録をしたり、他のスタッフと話し合ったりしてください。ぜひ、その人らしさに近づけるような看護や、コミュニケーションを大切にしてほしいです。また、自分のことを大切にする心を忘れないようにしてください。自分が健康でなければ、人を看護することは難しいですから。一緒に、日々の倫理的な悩みに向き合っていきたいですね。(ナース歴21年以上)
●丁寧で患者への思いが強いりんの性格と、割り切っている直美の性格を、足して2で割るとちょうどいい気がします(笑)。どちらも看護婦の仕事には向いている性格なので、“ほどほど”の気持ちで勉強をがんばってほしいです。(ナース歴6~10年)
●何年やっても悩むことばかりですが、過去に悩んだことや経験が確実に自分を成長させ、自信につながっていると感じます。責任が大きい仕事ではありますが、気張りすぎず、たるみすぎず、自分のバランスを見つけて看護をしてほしいです。(ナース歴16~20年)
『風、薫る』未視聴の人に伝えたい見どころ
まだ『風、薫る』を見たことがない人に向けた、おすすめポイントとは? 「初心を思い出せる」「励みになる」との意見から、ストーリーはもちろん、ファッションや主題歌の魅力まで……。皆さんの熱い声を紹介します。
学生時代や新人のころを振り返る機会に
●看病婦と呼ばれる人たちが知識のないまま療養上の世話をする世界に、りんたちが「空気が、清潔が」と看護の知識をもって乗り込みます。『看護覚え書』を読みたくなること間違いなし! 看護学校1年生からベテランナースまで、必見のドラマです。(ナース歴6~10年)
●看護の本質に悩んだときこそ、見てみるとよいのではないかと思います。看護は緩和ケアを深めることにもつながるため、私も初心に戻れています。これから、看護婦がどのように社会的立場を確立していくのか、海外から来てくれた先生がどのように日本の看護をつくり上げようとしたのかなど、それぞれの登場人物に対してもとても関心があるので、描かれることを願っています。(ナース歴21年以上)
●正直、仕事以外で看護の内容のドラマを見るのは心が休まらず、好まないタイプでした。ですが、『風、薫る』は学生時代や新人のころを思い起こされるので、こんなときもあったな~と気軽に楽しむことができます。ちょっと見てみるかな、くらいの気持ちで見始めてみてはどうでしょうか。(ナース歴16~20年)
●自国にはまだない新しい仕事や、新しい価値観を取り入れること、それを学ぶことの偉大さ・困難が伝わるすばらしいドラマだと思います。この時代に、女性が「働く」、そして、看病を「仕事」とする、いずれも理解されないことだったはずです。今、あたりまえに看護を学び、仕事にできていることに感謝の気持ちがわきます。私の看護が未来へつながっていると信じて、りんや直美のように、自分や家族、患者さんに対していつも誠実に、まっすぐにがんばります!(ナース歴6~10年)
●時代は違うとはいえ、看護学生のやりとり、病院でのナースの立場などは、現代でも通じる内容だと思います。懐かしさを感じることもあれば、つらいことを思い出すこともありますが、初心に戻れる機会とも思って見ています。りんや直美たちの成長を、一緒に見届けませんか。(ナース歴6~10年)
ファッションや主題歌にも注目を
●ナース服がかわいい!(笑) この時代の洋服と和服、髪型など、ファッションも楽しみの1つです。美術もすばらしくて、近代史がお好きな方は特に楽しめるはず。(ナース歴6~10年)
●Mrs. GREEN APPLEが歌う主題歌「風と町」がいい!(ナース歴11~15年)
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