急変対応で大切なこと①患者さんを把握しよう!5Pをチェック

急変対応は何年たっても自信がもてないもの。急変を起こさないようにするためには、観察やアセスメントが重要です。看護師や研修医に向けて、救急初期対応などの研修を豊富に行っている坂本壮先生の新刊『急変対応の授業』の一部を抜粋(全4回)。第2回は、第1回で紹介した急変対応において大切なことの1つ目「患者さんの把握」について解説します。
急変対応で大切なこと①患者さんを把握しよう!5Pをチェック
あたりまえですが担当患者さんの把握は大切です。相手のことを知らずして適切な対応はできませんよね。何のために入院し、どのような治療方針なのか、何が問題点なのか、今後起こりうる出来事はどのようなものが挙げられるのか、このあたりを整理することが大切です。
【1】目的(Purpose):入院の目的・理由は?
目の前の患者さんは何のために入院しているのでしょうか。
〇発熱、呼吸困難を主訴に救急外来を受診。精査の結果、細菌性肺炎の診断、点滴による抗菌薬治療のため入院となった。
〇自宅で転倒し動けなくなり、精査の結果、左大腿骨近位部骨折の診断で手術目的に入院となった。
〇不明熱の精査目的に入院となった。
このように、担当患者さんの入院の目的を理解しましょう。
急性期病棟では患者さんの入れ替わりが激しく、また夜間などは把握すべき患者さんの数が多く大変かもしれませんが、何のために入院しているのかを把握していなければ、みるべき点や備えるべき点を意識することはできません。
【2】患者(Patient):患者さんはどんな人?
入院の目的は同じでも、急変のリスクは同じではありません。基礎疾患のない若年者と、複数の病気を治療中の高齢者とでは、明らかに後者のほうがリスクは高そうですよね。
抱えている病気やアレルギー歴、内服薬(抗血栓薬など)、嗜好歴(タバコ、アルコールの程度)なども整理しておきましょう。高齢者では介護度などにも注目し、普段のADLを把握しておくとよいでしょう。カルテ記載を鵜呑みにしてはダメですよ。担当医を信じるなという意味ではありません。誰でも誤ることはありますし、初療の段階では聞き逃していることもあるものですから。必ず一度は、自身で確認するくせをもっておきましょう。
【3】方針(Policy):今後の方針は?
担当患者さんが今後、どのような方針なのかを理解しておきましょう。例えば、
〇細菌性肺炎で抗菌薬治療中、食事が半量以上摂取できれば点滴は抜針、抗菌薬は内服へ移行予定。
〇出血性胃潰瘍で点滴管理中、本日内視鏡を再検し、止血が確認できれば食事を開始する予定。
など、具体的に方針を確認することで、患者さんの進むべき道が見え、退院へのイメージがわくはずです。
また、入院当初は必要であった点滴や尿道カテーテルも、不要な状態となればただちに抜去が望ましいですが、担当医よりもベッドサイドに近いみなさんのほうが早期に判断ができるかもしれません。みなさんが気づき、適切なタイミングで抜去できれば感染を未然に防ぐことができます。
方針を確認するためには、担当医とのコミュニケーションが不可欠です。最近は電子カルテの病院が多いと思いますが、カルテ上のみでのやりとりでは適切なコミュニケーションはとれません。また、なにか問題があってもリアルタイムで対応できません。スマートフォンやPHSでもかまいませんが、可能な限り回診時などに対面で情報を共有しましょう。
【4】問題点(Problem):現在の問題点は?
方針どおりに事が進めばよいのですが、全部が全部そうはいきませんよね。
〇細菌性肺炎に対して抗菌薬治療を行っているものの、なかなか酸素化が改善しない。
〇急性期脳梗塞で入院した患者さんが、痙攣を認めた。
〇大腿骨近位部骨折の術後の患者さんが、創部の痛みを訴えている。
など、現在の問題点を患者さんごとに整理しておきましょう。
問題点も担当医と共有ですよ。みなさんが記載している看護記録、予想以上に医師は見ています。痛みの訴えや治療方針の不満など、看護記録には患者さんからの訴えの記載があるものの、担当医へ連絡がないのは寂しいものです。
看護師が患者さんの異変に気づいているのにもかかわらず、実際に医師へ報告したのは75%であったという報告があったりします1。4回に1回は報告しないのです。個人差はあると思うのでこの割合を覚える必要はありませんが、みなさんも気になることがあっても全例報告することなく、胸の内に秘めてしまったことってあると思います。報告すべきか自信がもてずしなかった、報告しづらい状況であったなど、さまざまな要因があるとは思いますが、理想はなんでも相談できる関係ですよね。まずはリーダーなど先輩看護師に相談するのもよいですが、報告すべきか悩んだらぜひぜひ担当医へも積極的に相談してください。
【5】予測(Prediction):急変する可能性ってある?
“○○さんは□%の確率で急変します”。そんなことが数値化され、見える化されればわかりやすいですが、確立したデータはありません。しかし、ここまでの【1】〜【4】を把握し、後述する急変のサインを知れば、起こりうる急変のリスクをある程度、見積もることはできます。
例えば、若年者と高齢者では、基礎疾患や臓器の予備能から高齢者のほうがリスクが高いでしょう。治療が奏効している患者さんと難渋している患者さんでは、後者のほうがリスクは高いですよね。また、点滴や膀胱留置カテーテルを要している場合には感染のリスクは高く、寝たきりなどADLが低下している場合には深部静脈血栓症(DVT)、それが原因となって引き起こされる肺塞栓症のリスクがあります。他にも、せん妄のリスク、転倒のリスクなどを見積もる術がありますが、それはまたいずれ取り上げます。
確立されたものはないと記載しましたが、「GO-FAR score」という院内心停止の予後予測スコアは存在します2。このスコアで24点以上となると、機能良好(CPC 1;意識清明、軽度の脳神経障害や軽度の精神障害があっても普通の生活、労働が可能)での生存退院率が1%未満と報告されています。評価項目数が多いですが、webやアプリケーションで簡単に計算でき、慣れるとそれほど時間はかかり
ません(私は「MDCalc」というアプリをスマートフォンに入れて利用しています)。
例えば、施設入所中の80歳の女性が急性期脳卒中で入院し、誤嚥性肺炎を併発している場合には、その時点で24点以上となり、心停止に陥ってしまった場合の神経学的予後はきわめて不良と考えられます。
あくまで院内心停止の予後予測であり、このスコアが高いから急変しやすいというわけではありませんが、担当患者さんの急変の可能性の見積りに悩んだ際には、参考にするとよいでしょう。見た目の重症度が低そうに思えても、じつは危険因子を複数併せもっていることを理解していれば、日々の観察を慎重に行いたくなりますよね。
- 1.Franklin C,Mathew J:Developing strategies to prevent inhospital cardiac arrest:analyzing responses of physicians and nurses in the hours before the event.Crit Care Med 1994;22(2):244-247. PMID:8306682
2.Ebell MH,Jang W,Shen Y,et al.:Development and Validation of the Good Outcome Following Attempted Resuscitation(GO-FAR)Score to Predict Neurologically Intact Survival After In-Hospital Cardiopulmonary Resuscitation.JAMA Intern Med 2013;173(20):1872-1878. PMID:24018585 DOI:10.1001/jamainternmed.2013.10037
【本記事は、『急変対応の授業』からの抜粋です。続きは書籍でどうぞ】

【関連記事】
【第1回】“急変”って何だろう?”急変”を起こさないために大切なことは?
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。
“急変”って何だろう?”急変”を起こさないために大切なことは?

急変対応は何年たっても自信がもてないもの。急変を起こさないようにするためには、観察やアセスメントが重要です。看護師や研修医に向けて、救急初期対応などの研修を豊富に行っている坂本壮先生の新刊『急変対応の授業』の一部を抜粋。全4回でお届けする第1回は、「そもそも、急変とは何か」ということを解説します。
これって急変?
まずは、2つの事例漫画を紹介します。
事例1

事例2

「血圧が下がった」「訪室したら反応がなく心肺停止状態であった」——そんなイメージが“急変”にはあるかもしれません。冒頭の2つの場面、院内ではときどき経験する事例であり、みなさんも経験したことがあるかもしれません。
『大辞林』(三省堂)で“急変”と検索すると、「①急激に変化すること、②急に起こった変事」と記載されています。この定義からすると、目の前の患者さんの状態が急激に変化したという認識であれば、それはすべて“急変”ということになります。
例えば、担当の入院患者さんが、「朝のバイタル測定では収縮期血圧130mmHg程度であったのが、昼の測定では80mmHgに変化した」「排尿後に患者さんが失神した」「食事中に突然苦しそうに喉を押さえ、顔色不良となった」など、原因がわからず「え? なんで? どうして?」という状況であれば、このどれもが急変です。
しかし、本当にそれは急変なのでしょうか。頭にクエスチョンマークが浮かんでいるのは自分だけで、先輩の看護師や担当医は原因がわかっており、急変だとは思っていないのではないでしょうか。
ミュージカル『モーツァルト!』の一場面に、母が亡くなったヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが、「医者を、医者を呼ばなきゃ」と慌てる場面があります。しかし、もう手遅れ、手の施しようがありません。その後のシーンで歌う『残酷な人生』は名曲ですが、ヴォルフガングの母への対応は、ほめられるものではありませんでした。
冒頭の2症例、みなさんであればどのように対応するでしょうか? 自信がない? 不安? そうですよね。大丈夫です。この本を読んで落ち着いて対応できるように、頭の中を整理していきましょう。
この事例を考えてみよう
それでは今回の事例を考えてみましょう。

数時間前のやりとり―

高端ナース
山咲さん、420号の夏木さん、38℃台の熱があるのですが大丈夫でしょうか?

山咲ナース
ん? 夏木さんって大腿骨近位部骨折(高齢者で多い骨折の1つ)の方だよね。今日で術後4日だっけ?

高端ナース
はい。術後の経過は順調で、今朝の食事も10割とれていたのですが、昼は食欲がないってことで数口しか食べなかったんです。15時のバイタル測定でこんな感じで。【血圧108/58mmHg、脈拍110回/分、体温38.2℃、SpO2 97%】

山咲ナース
熱もあるし、血圧も若干低めだから担当医へ連絡したほうがいいね。指示なんか入ってる?

高端ナース
発熱時の指示は入っていたので、解熱薬を使おうかと思ったのですが。

山咲ナース
そうね。術後の感染症とかあるかもしれないし、担当医に報告しよう。
15分後

高端ナース
山咲さん、担当医の佐東先生、いま前十字靱帯の手術に入っていて、あと1時間半ぐらいは対応難しいみたいです。とりあえず発熱時のアセトアミノフェン(カロナール®)内服は使用するのはOKみたいですが。

山咲ナース
そっか。まぁ、それほど急がなくても大丈夫だと思うので、薬は飲んでもらって様子をみよう。
1時間後(日勤から夜勤への申し送りをしている)

高端ナース
420号の夏木さんですが、昼から38℃台の発熱を認め、担当医の指示を受けてアセトアミノフェンを内服しています。

千念ナース
発熱の原因は精査中?バイタルは問題ない?

高端ナース
そろそろ担当医の先生がみてくれると思うのですが… … 血圧は100mmHg程度あるので大丈夫だとは思うのですが……。

千念ナース
あ、そうなのね。
さて、今回の事例ですが、これって“急変”でしょうか? 違いますよね。今回の経過を高端ナースが知ったら、「え? そんなことが?」ではなく、「あ、やっぱり……もう少し早く担当医に来てもらうべきだった。他に何かできなかっただろうか」、そんなふうに思うはずです。
発熱の原因はその時点では同定できないにしても、介入の必要性はあり、早期に対応できていれば今回のようなことは起こらなかったでしょう。このようなことを防ぐためには、どうするべきでしょうか。
患者さんが発する危険なサインを早期にキャッチすることも大切ですが、そもそもそのようなことを起こさせないことが重要です。本書では、急変時の対応だけでなく、それを未然に防ぐ術も整理していきたいと思います。第1回目の今回は、「そもそも急変を起こさせないためには何が大切なのか」、このあたりをともに学んでいきましょう。
“急変”を起こさせないためにはどうする?
急変は誰もが遭遇したくないものです。
「昨日の夜勤、めっちゃ荒れたよね」
「○○さん、お祓いに行ったほうがいいんじゃない」
こんな台詞を夜勤明けに言ったり、聞いたりしたことありませんか。忙しい、眠れない夜勤というのは誰もが経験するもので、このがんばりを周囲に知らしめたい、「お疲れさま」と言ってもらいたい——その気持ちはよくわかりますが、時にそれが“身から出た錆”ということがあります。
さっきの夏木さんの件もそうですよね。アセスメントすることなく、やるべきことを先送りにしてしまった、その結果、起こるべくして起こったわけです。
救急外来からの緊急入院などを除き、夜間の病棟というのは普通は静かなものです。入院患者さんだって消灯後は寝ますからね。「夜間せん妄が起こることだってあるじゃないか」「排尿後に失神して頭部をぶつけることだって経験したことがあるぞ」、そんな声が聞こえてきそうですが、これらもまた多くの場合防げるのです。
急変対応において大切なことは複数存在しますが、以下の3つに分けて解説します。
1.担当患者さんの把握
2.急変のサインを知リ、評価すべきポイントを理解する
3.チームビルディング:集団→チームへ
【本記事は、『急変対応の授業』からの抜粋です。続きは書籍でどうぞ】

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新人ナース、先輩ナースへ、それぞれ照林社のおすすめ書籍をご紹介!日々の業務や、後輩指導に役立つヒントが詰まった本をピックアップしました。
川嶋みどり 看護の羅針盤 第84回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら
事故は
“個人の不注意”として
かたづけられてはならない
事故は“個人の不注意”としてかたづけられてはならない。個人を責めることでは技術の向上は生まれない。事故の起きた原因を感情的にならず、科学的に徹底的に追求すること、その原因が捉えられればそれに対する対策が立てられ、第2、第3の事故を防ぐことができる。
医療行為は多くの場合、チームで行われる。複数の人々の協力によって遂行されている。したがって事故分析の場合、その医療行為のシステムについて十分検討されねばならない。
(出典:『看護における安全性』159ページ、医学書院)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第83回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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黒子の衣装を脱ぎ捨てて
表舞台で活動できるよう
外来看護師自身の意識改革と
環境の整備を急ぐ必要がある
外来通院患者の健康への希求は、健康時のそれ以上に高まっていることを考えると、その人の必要に応じて「支援か指導か相談か」を、しっかり見極めて行う看護師のアプローチの重要性は論をまたないだろう。(中略)
しかも診療報酬上にない事項で、看護師の関わりにより、疾病を予防したり治癒を促進する上で、有効な患者の自己管理についてのアドバイスを正しく記述し、蓄積することが求められている。
そのためには、 黒子の衣装を脱ぎ捨てて、表舞台で活動できるよう、外来看護師自身の意識改革と環境の整備を急ぐ必要があると思う。
(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』53ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第82回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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安楽性の看護技術とは
人間らしく生きることを
可能にする援助技術である
看護の対象は、傷つき、病み、あるいは幼くまたは年老いた弱い人びとである。健康人にとってはなんでもないことが、これらの人びとには重大な結果を招く。(中略)危険の存在を知り、安全に技術を行使しなければならない。いわば生命を守る上での大前提である。
また安楽性の看護技術とは、看護を受ける人が身体的に苦しむことをできるだけ少なくし、精神的にも安定した状態に保つようつとめるとともに、闘病意欲をひき出し、人間らしく生きることを可能にする援助技術である。
(出典:『看護の自立 現代医療と看護婦』118ページ、勁草書房)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第81回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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研究というのは
やらなければならないから
やるという義務感からではなく、
知識欲からスタートするものです
研究というのは、やらなければならないからやるという義務感からではなく、知識欲からスタートするものです。大学が全国に新設されて、看護職も就職や業績のために研究しなければならない場合も増えてきています。
でも、これは本来の研究の目的からいってあまり好ましいこととは言えません。臨床看護研究は、患 者のよりよいケアのためにあることを今一度再確認しましょう。
(出典:『いきいき実践 たのしく看護研究』92ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第80回

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医療従事者は
毎日の業務の流れの中で
入院という患者にとっては重要な出来事を
ごく軽く受けとめがちである
入院ということは患者にとって、少なからぬ動揺や不安、緊張をもたらすのである。ところが医療従事者は毎日の業務の流れの中で、入院という患者にとっては重要な出来事を、ごく軽く受けとめがちである。(中略)
病棟の看護師は、入院患者を新しく受け入れるとき、病名や年齢からその患者への看護ケアの軽重予測はしても、その患者が入院を決意するまでに至った経過については、あまり関心が払われないのではないか。
(出典:『病院看護ハンドブック 入院から退院まで』2ページ、医歯薬出版)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第79回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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看護実践は、患者の
よりよい変化をめざして
働きかける過程である
看護実践は、患者のよりよい変化をめざして働きかける過程である。どのような変化をめざすかについては、看護師が患者の状態をアセスメントして情報を提供し、患者の要望や思いを汲んで十分に納得していただいた上で決定する。
目標達成に向かって選択した方法(技術)により、相互に共有した期待通りの変化がもたらされれば、最も喜ぶのは患者その人である。これは欲求が充足された際に誰でも感じる肯定的情動と言える喜びであり、欲求の強さや種類(苦痛や不快など)によって、その大きさは一様ではない。
(出典:『チーム医療と看護 専門性と主体性への問い』71~72ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第78回

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「看護師が生き生き働く
そのことが患者にとって最高のケア」
という言葉を
今一度噛みしめたい
看護という営みは、その行為を通して対象となる患者の苦痛の緩和をはじめ、種々の健康上の問題解決を行うが、その過程が困難であればあるほど、生き甲斐を体験できるという特質がある。
目標を達成した喜びは、他の労働とも共通であるが、人間を対象とする看護の場合、患者との相互作用を通じて、人間的な感性を豊かにし高めることができる。
「看護師が生き生き働くそのことが、患者にとって最高のケア」という言葉を今 一度噛みしめたい。つまり、仕事そのものが人間としての喜びをもたらし、個性を発揮して楽しく生き生き働ける環境を整えることが、看護師の根本的な定着に通じるという信念の具体化である。
(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』102~103ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第77回

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看護労働は、看護師自身の
身体的・精神的能力を使って
対象である患者の身体・精神・
生活行動面に働きかけ
これを変化させます
看護労働は、看護師自身の身体的・精神的能力を使って、対象である患者の身体・精神・生活行動面に働きかけ、これを変化させます。たとえば、疾病→健康、苦痛→安楽、無気力→闘病意欲、社会的孤立→社会参加・社会資源活用などの変化です。
それと同時に、その対象(患者)との相互作用を通じて、看護師自らが、人間的能力を発達させ、看護技術を高めることができるのです。
(出典:『新訂 キラリ看護』149ページ、医学書院)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第76回

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“何でもやりこなせる”
ということが専門職なのではなく
“責任をもって安全に実施できることとできないことを表明する”
ことが真の専門職
これだけ複雑かつ高度化した技術を、医師と看護師間での合意のないままに、なしくずしに看護師サイドの業務にしていることを、安全性の立場からきちんと問題提起していく必要がありはしないか。
“何でもやりこなせる”ということが専門職なのではなく、“責任をもって安全に実施できることとできないことを表明する”ことが真の専門職ではないだろうか。事故が起きてからでは遅いのである。そして事故の当事者は看護師であっても、被害を蒙(こうむ)るのは患者なのである。
(出典:『看護技術の現在 看護の時代 2』54ページ、勁草書房)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第75回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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看護治療的アプローチは
介入ではなく
「働きかけ」という用語を
使用したいと思います
私の考える看護治療的アプローチは、介入ではなく、「働きかけ」という用語を使用したいと思います。対象の変化を目指す看護師の働きかけにより変化するのは対象であります。
(出典:『看護の癒し そのアートとサイエンス 看護治療学への道』34ページ、看護の科学社)
〈働きかけの内容〉
1.現存する苦痛を最少にする働きかけ。
2.病気にうちかつ個体の、自然治癒力を高める働きかけ。
3.病気そのものの治癒に向かう働きかけ。
4.(治癒不能であっても)その状況におけるできるだけ高い健康レベルの維持を目指す働きかけ。
5.病気や苦難に対処するためにその体験に意味を見いだす援助。
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第74回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
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事例というのは
大変複雑な構造をもち
リアルでダイナミックです
視点や切り口によっては
多面的にしかも深い検討ができます
事例というのは、大変複雑な構造をもち、リアルでダイナミックです。視点や切り口によっては、大変多面的にしかも深い検討ができます。
「うまくいった」 という場合もあれば、「悔いを残した」事例もあるでしょう。このうまくいったというのは、ある目標達成に有効な法則性に添った実践によってうまくいったと言えます。
したがって、悔いを残した事例の場合には、その(目標達成に有効な)法則性に合わなかった実践の結果であると言えます。
(出典:『いきいき実践 たのしく看護研究』63ページ、看護の科学社)
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お役立ち疾患ノート

大事なところだけを知りたいときにササッと確認できる「お役立ち疾患ノート」。よく出合う疾患の全体像(症状・検査・診断・治療)と、あわせて確認しておきたい基礎知識を、パッと読みやすく・見やすくまとめています。
PART1 呼吸器
慢性閉塞性肺疾患/気管支喘息/肺炎
PART2 循環器
虚血性心疾患/急性冠症候群/心不全/大動脈瘤/大動脈解離/深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症
PART3 消化器
食道がん/胃がん/大腸がん/肝硬変/胆石症/急性膵炎
PART4 内分泌・代謝
糖尿病
PART5 腎臓
慢性腎臓病/ネフローゼ症候群
PART6 脳神経
脳梗塞/くも膜下出血/脳内出血/パーキンソン病/認知症
PART7 運動器
大腿骨頸部/転子部骨折/関節リウマチ
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第73回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら
医師との関係が水平である職場では
患者の表情もおだやかで
安定している様子がうかがえる
医師との関係が水平である職場では、患者の表情もおだやかで安定している様子がうかがえる。それは、常に患者の意思を尊重したケアを行い、ベッドサイドに長くいて、患者がケアに何を期待し求めているかを知る努力をしているからである。
そして、患者のケア計画の実践を看護チームが一丸となって積み重ねていくことが日常化しているからであろう。つまり、医師の手足にならず患者の手足になる看護師集団であるからと考える。
(出典:『CHECK it UP③ 日常ケアを見直そう あなたの職場の看護チェック』114ページ、医学書院)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第72回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら
看護の物語は
看護の受け手である
患者とともに創られていく
現代病のがんは、決して寿命とは言えない年齢での死を彼女にも与えてしまいましたが、8カ月間の入院中の最後に近い1日の、ともに過ごしたひとときの間の彼女の語りは、その後、折に触れて看護を考える上で多くの示唆を与えてくれました。
看護の物語は、看護の受け手である患者とともに創られていくのだとしみじみ思いました。客観的に助かる見込みのない場合でも、彼女のように最後まで生きる望みを失わず、“生き続けよう”と願い続ける患者は決して少なくないのではないでしょうか。
(出典:『看護を語ることの意味“ナラティブ”に生きて』35ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第70回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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時間の推移は
悲しみの質を変えても
決して軽くするものでは
ありません
2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故では、二万数千名のいのちが奪われました。(中略) その刻々の人々の悲しみの変化を肌で感じてきました。一貫して、専門職としてどのように向き合うべきかを問われ続けてきた感じがしています。もとより悲しみの大きさを比べることなどはできず、そのもととなった事実もそれを受け入れる段階やプロセスも人それぞれです。時間の推 移は悲しみの質を変
えても、決して軽くするものではありません。(中略)
取り巻く人間関係の中で自ら回復してゆく方もあれば、年月を経るごとに喪失感が増して苦しむ方たちも多くいました。いずれにしても、その過程を見守り、必要に応じてサポートしなければと言い聞かせながら、心の奥底の見えない手でその方の肩を支える思いで想像力を研ぎ澄ますのでした。
(出典:『いのちをつなぐ 移りし刻を生きた人とともに』40~41ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第71回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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企業の論理を貫く上での
ノウハウが、
看護の職場を侵食し始めた
「目標管理――MBO」は、「自ら目標を設定することで、その達成意欲をもった存在となる」という一応筋の通った管理方式である。上司から与えられた課題ではなく、自分で設定した目標に向かって自主的に行動するのだから、目標達成時の喜びは自分のものであるという意義は認めても、異議を挟むことは控えるべきだろうか。(中略)
過去の経験をあげるまでもないが、それが生まれた時代背景と歴史的な推移を正しく見た上で導入することの大切さを、これまでにいやというほど 味わった。気になるのは企業の論理を貫く上でのノウハウが、看護の職 場を侵食し始めたことである。もちろん合理的な方法を学ぶことを排除すべきではないが、看護には他にない特殊な条件があることを、再確認すべきではないだろうか。
(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』108~109ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第69回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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看護の対象となる人々から見れば
少数のスペシャリストの存在よりも
日常最も多く接する
看護ジェネラリストへの期待のほうが強い
看護の対象となる人々から見れば、少数のスペシャリストの存在よりも、日常最も多く接する看護ジェネラリストへの期待のほうが強いと思う。それは、どの領域であれ、看護のスペシャリストの働きに接した経験のなさからも言えようが、入院しても「家庭で家族が提供しえたようなケア」がきちんと実施されることを、何よりも望んでいることによろう。
生活行動の援助は、人間が人間らしく生きていくことを保障する、より優れて専門的な領域である。ジェネラリストとして、幅広く実践を積み上げ、この面での独自な研究を発展させていきたいものである。
(出典:『いま、病院看護を問う 看護の時代1』197ページ、勁草書房)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第68回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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生活行動援助技術は
医療技術や薬品の力で健康状態を保つよりは
自己のもっている能力を発揮して
健康を保持し
療養生活を営むことがのぞましい
生活行動援助技術は、人間にとって、医療技術や薬品の力で健康状態を保つよりは、自己のもっている能力を発揮して健康を保持し、または療養生活を営むことがのぞましいと言えるのではないかということである。
しかし、安楽性にかかわる評価はきわめてむつかしい。対象の人の主観的な評価が優先しがちで、客観的には判定しにくい。ただ、先の食事の例にしてみても、最近いちじるしい進歩をとげた中心静脈栄養や、高カロリー輸液で生命を維持するよりも、経口的な摂取のほうがより人間的であることは誰しも異議のあることではあるまい。
(出典:『看護学のすすめ』132ページ、筑摩書房)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第67回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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いつでも心がけたことは
常に現場に目を向け
現場からの発想を
忘れないようにしたことです
輸血の安全性の研究は、あとを絶たない輸血事故を看護師の目から分析し、安全な輸液プロセスの図式化を図りました。また、事故事例を看護過程のそれぞれの構成要素から分析し、予期しない急変を予期し得る変化にしていくことを提言しました。
いつでも心がけたことは、常に現場に目を向け、現場からの発想を忘れないようにしたことです。そして、共同研究のルールを忘れないようにしたことです。
(出典:『いきいき実践 たのしく看護研究』18ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第66回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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対象の変化に応じた
ケアの創造性を抜きに
在宅看護の質の向上は
あり得ない
決まりきった方法を時間内に行使する責任は果たしているらしいが、患者の変化に応じたケアのバリエーションはほとんどないと言ってもよさそうである。医療保険であっても介護保険であっても、現 行の制度のもとでの在宅 看護は、マニュアル通りのプランを実施することで費用換算されるため、それ以上もそれ以下もないということか。
しかし、対象の変化に応じたケアの創造性を抜きに、在宅看護の質の向上はあり得ないのではないだろうか。これでは、在宅における看護の専門性が危ういばかりではなく、在宅療養中の患者の QOL の向上も望めない。
(出典:『看護時鐘 のどもと過ぎた熱さをいま一度』55~56ページ、看護の科学社)
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川嶋みどり 看護の羅針盤 第65回

20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
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“気づき”と言われる
感性レベルが
観察の入口である
“気づき”と言われる感性レベルが観察の入口である。気づきは、観察行動にのみ強調されるのではなく、看護実践においても相手の気持ちにできるだけ近づくという意味で、また適切な看護実践の提供という上からも、その大切さが説かれる。
だが、現実の教育では、科学的な観察ということで、この感性レベルの観察よりも、理性的で分析的な観察がより重視されている。
(出典:『新訂 看護観察と判断 看護実践の基礎となる患者のみかたとアセスメント』117ページ、看護の科学社)
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